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竜の女王  作者: M.D
2171年秋
298/688

23

「そろそろ薬も効いてきたことだし、お話は止めにして再開しましょう。」


 亜門が小太刀を構え、


「まずは坊やから!」


 僕の方へ向かってきた。


(速い!)


 キンッ!


 僕の反応は間に合わないため、グレンさんが魔導盾を発動させて小太刀を防いでくれる。


(感謝。)

(何のこれしき。樹君では今の亜門の速度には対処できないでしょうからな。)


「全力を出したあたしの小太刀を受け止めるだなんて、坊やは高校生のふりをしたお嬢ちゃんの護衛だったわけね。」

「否定。本当の高校生です。」

「何ですって!」


 バンッ!


 一瞬動きの止まった亜門に美姫さんが魔導弾を撃つが、それは回避されてしまった。


「ちっ!やはりお嬢ちゃんの方を先に殺っとくべきだったのね。」


 亜門は今度は美姫の方へ向かう。


 キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!


(美姫も高速思考を使って時間感覚を引き伸ばしているのに、小太刀をさばききれてませんね。)

(美姫さんはまだ高速思考に体の動きが追いついていないようですな。それに対して亜門は今までに解制剤を限界まで使ったことがあって、使用時の動きに慣れているのでしょうな。)

(成程。それで美姫の方が押されているのですか。)

(そのとおりですな。その差を埋めるために、美姫さんが対処できなかった剣戟はエレナ様が対処しているようですな。)


 解制剤を限界まで使った亜門に対して、美姫は防戦一方だ。


(それに、美姫さんの高速思考はまだ効率が悪く、演算領域を占有してしまって余裕がないため、エレナ様は樹君の演算領域を使っているようですな。)

(それで少し気分が悪いのですか。)

(ワシも介入しようかと思ったのですが、エレナ様の邪魔をしないよう樹君の演算領域をあまり使わない方が良さそうなので、今は様子見をしているところですな。)

(僕も大人しく観戦しておきます。)


(しかし、このままだとやられっぱなしだぞ。)


 珍しくザグレドが僕たちに話しかけてきた。


(確かに防戦一方だとジリ貧だ。)

(そこで、オレに策がある。)

(『奴の精神エネルギーを奪ってしまえばいい』と言いたいのだな?)

(おいおい、グレン、答えを先に言うなよ。)

(ザグレドとは長い付き合いだし、融合中だからな。考えていることくらいすぐに分かる。)


 キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!


 僕たちが会話している間も、美姫と亜門の戦闘は続いている。


(美姫の方がかなりきつくなってきたように見えます。)

(そのようですな。エレナ様が対処する回数が増えてきていますからな。)

(奴の方も限界が近いぞ。)

(絶好調に見えるけど?)

(そう見えるときほど危険なのですな。)

(解制剤を使って脳と体の制限を解除したためにオーバーヒートしかかっているんだよ。)

(成程。)


 キンッ!キンッ!キンッッ!


 エレナ様が心持ち大きめに小太刀をさばいたため、次の剣戟までに一瞬の間ができた。


(今じゃ!)

(はい!)


 その隙を使って、美姫が亜門の鳩尾に拳を叩きこむ。


「ぐふっ!」


 亜門は防御が間に合わず、まともに打撃を受けてその場にうずくまった。


(エレナ様、ありがとうございました。)

(美姫も一つのミスも許されない状況で、完璧に対処できておったのは良かったのじゃ。)

(エレナ様が助力して下さったおかげです。)


「くそっ!押していたのはこっちだってのに、ラッキーパンチをもらってしまったようね。」


 悪態をつきながら膝に手を置いて立ち上がろうとした亜門だったが、


「ぐあぁぁあぁぁ!!」


 突然頭を抱えて苦しみだした。


(限界を超えたようですな。)

(ということは、これで終わりですかね?)

(そうだと良いのですがな。)


「ぐふうぅぅ!」


 苦しみながらも、亜門は薬を取り出して首に打ち込んだ。


(注射したのは何の薬ですかね?)

(こうなった時のためにオーバーヒートを抑え込むための薬でしょうな。)

(六波羅も亜門が解制剤を限界まで使った時の対策は考えていた、ってことですか。)

(そうでしょうな。)


「はぁはぁ!闘いを続けましょう。」


 しばらくして痛みが和らいだのか、亜門は頭を押さえながら立ち上がった。

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