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竜の女王  作者: M.D
2171年秋
296/688

21

 しばらく進むと、通路の先に光が見えた。


(美姫、もうすぐ着く。)

(漸く来たようじゃが、少し遅かったのう。)

(どういうことですか?)

(ジョージ王子と誘拐犯は逃げ出す寸前なの。)


 通路の先にある部屋に入るとジョージ王子の姿はなく、別の出入り口に立つ白衣を着た医者と看護婦が見え、部屋の中央には女性の兵士が立っていた。


「君がそこのお嬢さんが言っていた彼氏か?急いできたのに話も出来ず残念だが、私たちはお先に失礼するよ。」


 白衣を着た医者が僕に向かって言う。


(あの医者はここの施設の研究者だそうよ。)

(それじゃ、ここで人工的に魔法使いを作る実験を行っていたのは、あの医者?)

(そうみたい。)

(ということは、ジョージ王子は実験体として連れ去れらたのか。)

(そうでもないみたい。)

(どういうこと?)

(ジョージ王子の護衛とあの医者が話している様子からすると、護衛の人はジョージ王子のことを心配しているみたいで、ジョージ王子を実験体として差し出そうとしているようには見えなかったのよ。)

(護衛の人がジョージ王子を誘拐したんじゃなかったっけ?)

(そうなんだけど、話をしているうちに私もよく分からなくなってきたの。)


「後は、そこにいる亜門がお相手差し上げる。では、ごきげんよう。」


 手を振りながら、医者の姿が通路の奥に消えると、


 ドスンッ!!


 出入り口に分厚い壁が落ちてきた音がした。


(逃げられた。)

(あの兵士を倒して早く追いかけましょう。)



「さて、そこの彼氏は初めましてになるわね。あたしは亜門。あなたが倒した羅門の姉よ。」


 亜門と呼ばれた女性兵士が僕たちに話しかけてきた。


「いくら魔法使いが相手とはいえ、こんな高校生に倒されてしまうなんて、羅門も存外不甲斐ないわね。羅門をどうやって倒したのか教えてくれない?」

「あなたの話に付き合うつもりはありません。」


 僕の代わりに美姫が答える。


「あら、そう?つれないわね。あたしはあなた達にしばらくの間ここで遊んでもらつもりよ。」

「そんなに時間はかけません。」


 美姫が高速で動き、


 バコッ!


 亜門を殴って壁まで吹き飛ばした。


「いきなり殴るなんてひどいじゃない!」


 ペッと血を吐き出しながら、女性兵士は立ち上がった。


「えっ!?どうして立ち上がれるの?骨が数本は折れているはずなのに。」

「あたしは羅門より打たれ強いからよ、と言いたいところだけど、痛覚を切っているからどれだけ痛めつけられても何も感じないし、このくらいどうってこととないわ。」

「なんてことを、、、」

「だから、ここを出ていきたかったら、あたしを殺すしかないの。」

「それでも――――」

「脳震盪を起こせば、とか考えてない?」

「!?」

「もちろんそれも対策済みよ。残念だったわね。」


 亜門は小太刀を取り出しながら言う。


「今の状態でも初級魔法使い程度だったら互角以上に戦えるはずなんだけど、あなたは高校生でその域を超えているようだから、解制剤を使っておいて正解だったわ。」


 そう言うなり、今度は亜門が美姫に仕掛けた。


(速い!)


 亜門が振るう小太刀を美姫がギリギリで避ける。


「へぇ、今のを避けられるんだ。それじゃ、これならどう?」


 小太刀を振るう速度が上がり、今度は美姫の回避が間に合わない。


(危ない!)


 キンッ!


 エレナ様が美姫の体を動かし、左手に集めた魔導力で小太刀を防いだ。


(エレナ様、ありがとうございます。)

(今の美姫では全てを回避することは無理じゃから、避けられぬ剣戟はいなすのじゃ。)

(はい。)


「この速度だと避けられないのね。解制剤まで使ったのに太刀打ちできなかったらどうしようかと思ったわ。」


 キンッ!スッ!キンッ!キンッ!


 美姫は回避できない剣戟を左手に集めた魔導力でいなしていく。


(あれだけ密着されていると、援護も出来ませんね。)

(樹君の実力では、下手に魔導盾を出そうものなら小太刀の軌道が変わって美姫さんに怪我をさせることになりかねませんからな。それに、今のところ美姫さんも対処できているようですから、ワシの助力が必要なほどでもないでしょうしな。)

(僕に何かできることはありませんか?)

(そうですな、、、壁に魔導弾を撃って亜門の気をこちらに向けさせますかな。)

(了解。)

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