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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
29/688

14

 次の日、昨日の出来事について聡に話をして、何か知っていないか聞いてみた。


「聡は2年生の六条麗華先輩、って知ってる?」

「あぁ、もちろん。麗華さんは傲慢で有名だからな。六条家本家筋ってことで、厳しくできない先生達もいるから、やりたい放題してもお咎めはほとんどないし。3年生の先輩も顎で使ってるって噂だ。」

「魔法使いの世界は狭いから、魔法使い御三家の本家筋に睨まれたら生きていきにくいってことか。」

「そういうことだ。」


「東京シールド内は都会だから、人間関係は田舎ほど濃密じゃないと思っていたけど、違うのか?」

「そうなのは魔法使いだけだな。魔法の腕輪への適性もあって血縁を重視するから、同じ魔法系統の本家筋には逆らえないんだ。渡辺家のように本流からかなり外れていたり、血がつながっているだけとかいう関係なら、相手にされてないからそうでもないんだけど。」

「だから僕には何も言ってこなかったのか。」

「今は美姫さんのほうが重要だからじゃないか。樹も魔法使いの家系出身じゃないから有名だし、そのうち何かあると思うぞ。」

「それは嫌だな。」


 自分が魔法使いの家系出身ではないことで嫌がらせを受けるとは思っていたが、予想よりも悪いことが起こりそうな気がした。


「あと、麗華さんは魔法使い御三家本家筋だから入学したら挨拶に行かないといけない、って聞いたんだけど、聡は挨拶に行ったのか?」

「いや、そんな話は聞いたことないな。俺も挨拶には行ってないし、他の誰も挨拶なんて行っていないと思うぞ。誰に聞いたんだ?」

「やっぱりそうか。昨日知らない先輩が僕らに話しかけてきて、麗華さんのところに挨拶に来ない理由を美姫さんに聞いてきたんだ。どうしてあの先輩はそんなことを美姫さんに言ったんだろう?」

「その先輩は好美さんだな。」

「好美さん?そう言えば、百合子さんもそんな名前を口にしてた。」

「一条好美先輩は小さい頃から麗華さんに手下みたいに扱われている可哀そうな先輩なんだよ。一条家は六条家分家筋だから、好美さんも麗華さんの言うことを聞かざるをえないし。」


「魔法使いの世界も生きにくいな。」

「この世界で生きていこうと思ったら、そうする他ない。それが嫌で魔法使いをやめる人達もいるらしいし。」

「魔法使いってやめれるのか?」

「俺の周りで魔法使いをやめた人はいないし、普通にはやめられないと思うから、どうやってやめるのかは知らん。」


「そうか。話を戻して、どうして好美さんだっけ?が美姫さんを呼びに来たんだろうな?」

「だぶん、美姫さんは英雄の娘さんだし綺麗だから、麗華さんは美姫さんが自分よりも人気があるのが気に食わないんだろうな。麗華さんが美姫さんよりも優れているのは家柄だけだから。昨日は適当な理由をつけて呼び出して焼き入れてやろう、って思ったのかもしれないな。麗華さんならやりかねないし、ひどいことをするかもしれないから注意しておいたほうがいいぞ。」

「了解。僕には何も言ってこなかったから大丈夫だと思うけど、百合子さんにも同じようなことを言われたから、美姫さんには気を付けてもらうよ。」


「樹も、だぞ。」

「どうして?」

「樹は美姫さんと仲がいいから、麗華さんなら樹を使って美姫さんを何とかしようと考えてもおかしくない。」

「僕を使って、って。美姫さんに迷惑が掛からないように気を付けることにするよ。」



 午後の授業中に、美姫さんと昨日の出来事について聞いたことを話しあった。


(昨日話しかけてきた先輩は、一条好美さんっていうみたいね。)

(僕も聡から聞いた。それに、聡が言うには、麗華さんは美姫さんが自分よりも人気があるのが気に食わなくて、適当な理由をつけて呼び出そうと思ったんじゃないか、ということらしい。)

(私も同じようなことを聞いたよ。私は人気があっても嬉しくないのに。それに、”大砲系”の魔法系統の子は『手下みたいに扱われて辛い』って言ってて、可哀そうだった。)

(好美さんも麗華さんにこき使われて可哀そう、って思われているらしいし。)

(昨日も麗華さんの怒りが自分に向かないように私を連れて行こうとしていたように感じたよね。)

(同意。麗華さんって、典型的な性格の悪いお嬢様だ。)

(そうね。あまり関わりたくない先輩よね。)


(皆が言うように、麗華さんに何もされないよう気を付けないといけないんだけど、実際にどうすればいいのか分からない。)

(そうね。学校の中じゃ先輩達に会わないようにするというのも無理があるし。)

(美姫はワレがついておるんじゃから大丈夫じゃ。)

(憑いている、の間違いじゃないですか?)

(樹君、うまいこと言うね。)

(美姫、ひどいではないかのう。)

(冗談ですよ。)

(昨日の仕返しかのう。まぁ、美姫はよい。じゃが、樹は覚えておれよ。ワレにひどいことを言った報いは必ず受けてもらうからのう。)

(すみません。許して下さい。)

(何万倍にもしてお返しはさせてもらうからのう。期待して待っておるのじゃ。)

(勘弁して下さい。)


(それはそうと、美姫は大丈夫じゃろうが、問題は樹じゃな。)

(なんで僕なんですか?昨日は何も言われなかったし、問題ないと思いますが。)

(聡とやらも言っておったじゃろう、『麗華さんなら樹を使って美姫さんを何とかしようと考えてもおかしくない。』と。)

(確かにそう言っていました。)


(ワレが思うに、奴らは樹を拉致してそれをダシに美姫を呼び出そう、などと考えておるかもしれんから、樹も十分気を付けるのじゃ。)

(それはないんじゃないですかね。ここは学校だし、僕だってそうそう拉致なんかされないですよ。)

(そうですね。学校内で樹君を拉致するなんて無理がありすぎませんか?)

(2人とも考えが甘いのう。樹はまだ弱っちいから、ワレはサクッと拉致られると思うがのう。)

(そうでしょうか?)


「樹、次45ページの最初から読んでくれ。」

「は、はい。」


 突然先生に指名され、現実に引き戻されたため、今後どのように対処するか結論を出せなかった。

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