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竜の女王  作者: M.D
2171年秋
287/688

12

 寮に戻り、グレンさんと寮長にジョージ王子が誘拐されたことを告げた。


(そういうことであれば同行することに異存はありませんな。)

(感謝。)

(それでどうやってジョージ王子を探すのですかな?)

(バイロ―にジョージ王子の精神エネルギーの残滓を追跡してもらうことを美姫が思いつきました。)

(美姫さんも考えましたな。)


(あなた達は厄介ごとに首を突っ込むのが好きね。私としてはおとなしくしてほしいのだけれど。)

(すみません。)

(2人とも無事に帰ってくるのよ。)

(了解です。)


 グレンさんを連れて校門前に戻った後、純一先生の車で亜紀様のお屋敷に向かう。


「2人が『今日は自主欠席にします』と言った時にも驚いたけれど、『狼魔獣を使って殿下を捜査する』なんて言い出したときにはものも言えなかったよ。」

「純一先生にはご迷惑をおかけして申し訳ありません。」

「他の魔法使い御三家の生徒に比べたら美姫さんの我儘なんて可愛いものだから気にしなくていい、と言いたいところだけど、ちょっとだけ気にしてくれると助かる。」

「分かりました。」


(麗華さんの暴虐ぷりを見ていると、純一先生が『美姫さんの我儘なんて可愛いもの』と言いたくなる気持ちも分からなくない。)

(ほんと、他の魔法使い御三家の人たちはどれだけ先生達に迷惑をかけているんだろうね。)

(そのおかげですんなり許可がでたんだから、僕たちにとっては良かったんじゃないかと。)


「しかし、よく亜紀様からあの狼魔獣を連れ出すことの許可をもらえましたね。」

「亜紀様も最初はダメだと言われていたのですが、ジョージ王子の命がかかっていることもあって条件付きで許可を頂けることになったんです。」

「その条件とは?」

「魔物警邏隊に見つからない事です。」

「・・・それは厳しい条件だ。」

「はい。でも、自分の魔力を抑えることができるほど賢い子ですから、大丈夫だと思っています。」



 亜紀様のお屋敷の検問所をとおるとバイロ―が待っていた。


「ワンちゃん、今日はお願いがあってきたの。」

「ガゥ、ガゥ?」(美姫さん、何でしょうか?)

「・・・ということなんだけど、協力してくれないかな?」


 美姫がバイローに経緯を説明する。


「ガゥガゥ。ガゥガゥ」(我輩を頼ってくれるとは嬉しいです。喜んで協力させてもらいます。)

「ありがとう。」

「ガゥガゥ?」(どの精神エネルギーを追跡すればよいのですか?)

「これよ。」


 美姫は陽菜さんから借りてきたハリセンをバイロ―に近づける。


 クンクン


(嗅ぐんかい!)

(演技だ演技。何もしないと怪しまれるだろう。)

(成程。バイロ―も考えてくれていたのか。)

(当り前田のクラッカー。)

(いつの時代のギャグだよ。)


「ガゥガゥ。」(2人分の精神エネルギーが感じられます。)

「多分強い方はずっとハリセンを持っていた陽菜さんのだから、弱い方をお願い。」

「ガゥ。」(承知しました。)



「美姫様は狼魔獣の言うことが分かっておられるようですね。」

「そのようです。亜紀様も狼魔獣と意思の疎通ができているようですから、やはり龍野家の方々は魔獣と会話する能力をお持ちなのかもしれません。」


 お屋敷から出ていた左衛門さんと純一先生が話をしているのが聞こえてくる。


(亜紀様にはバイロ―が悪魔だということがバレてしまったのか?)

(いや、あの女の圧力に負けて我輩と思考伝達で話ができるところまでだ。)

(それであれば魔獣の特殊能力と言うことにできるので、ギリ許される範囲だと思われますが、エレナ様としては如何でしょうかな?)

(まぁ、良いじゃろう。しかし、それ以上は悟られるでないのじゃ。)

(承知しました。)



「ワンちゃん、魔物警邏隊に見つからないように追跡できる?」

「ガゥ。」(可能です。)

「じゃぁ、お願い。」


(少し待ってほしいのですな。)

(グレンさん、何か懸念されることでもあるのでしょうか?)

(誘拐犯が魔力探知で居場所を探られるのを避けるために、遮魔布でジョージ王子の魔力が漏れないようにしていると、バイロ―はジョージ王子の精神エネルギーの残滓を追跡することが難しくなるのではないかと思うのですな。)

(そうですね。ワンちゃん、どう?)

(遮魔布でも精神エネルギーを完璧に遮断できないので指向性をもたせれば追跡は可能でしょうが、探知感度を上げるために力を使わないといけないので魔物警邏隊に見つかる可能性は高くなります。)

(つまり、最短経路でジョージ王子を見つけないといけないのね?)

(そうです。)

(だとすると、ある程度ジョージ王子が連れていかれた場所の目星をつけておかないといけないか。)

(そうね。でもそれが分からないから困ってるんだけど、、、)


(美姫さん、ジョージ王子を誘拐した犯人はロンドンからの護衛の中にいる可能性が高いのでしたな?)

(はい、そうです。)

(それなら、ロンドンからの護衛は東京の地理に詳しくないはずですから、必ず協力者がいるはずなのですな。)

(そうだと思います。)

(であれば、東京で王子を誘拐して匿う場所を用意することは小さな組織では無理でしょうから、大きな組織、つまり反魔連(反魔法使い連盟)か魔法連合国の工作機関のどちらかの可能性が高いと愚考しますな。)

(グレンさんの言われる通りだとは思いますが、協力者が分かったとしても肝心のジョージ王子が連れていかれた場所が分かりません、、、)

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