07
「痛ててて、、、」
「樹、大丈夫?」
美姫が僕の方に駆けよって、起きるのを手助けしてくれる。
「このくらいなら平気。」
「良かった。」
「殿下、お怪我などございませんか?」
「あぁ。何ともない。」
「安心しました。」
ジョージ王子には陽菜さんが駆け寄っていた。
「よもや俺が魔導弾を当てられるとは、この展開は予想できなかったぞ。」
「私もです。樹君の方の心配をしてたくらいですから。」
「樹に俺が得意とする魔法の特徴を教えていたくらいだしな。」
「申し訳ありません。」
「いや、樹をなめてかかった俺が悪いのであって、陽菜は悪くない。」
「ありがとうございます。」
「魔法の腕輪を1つしか付けていなかったとはいえ、引き分けに持ち込まれるは思わなかったぞ。」
立ち上がったジョージ王子は僕の方に歩み寄ってくる。
「僕に運があったからだと思います。」
「いや、樹は俺の魔導剣を明確に避けようとしていたように感じたが?それに、あの一瞬だけ動きが変わったのはどういう訳だ?」
「それは殿下の思い過ごしです。現にその後、殿下の魔導剣の直撃を食らいましたし。」
「そうだな、、、まぁ、樹がそう言うのなら、そういうことにしておこう。」
「私も樹君がここまで殿下と対等に渡り合えるとは思いませんでした。」
「陽菜さんが助言をくれたおかげです。」
「美姫さんはそう思ってなさそうですけど。」
「もちろんです。樹ならこのくらいできて当然だと思います。」
「俺と引き分けるのが当然とは、言ってくれるな。こうなると、俄然美姫の実力がどの程度なのか知りたくなった。美姫は樹よりも強いのだろう?」
「そうですね。」
「ならば、どうだ?俺と模擬戦をしないか?」
「今からですか?」
「そうだ。」
「殿下は樹と一戦していますし、お疲れではないですか?」
「問題ない。それに、今なら純一先生もいることだし好都合だろう。」
「先生、どうでしょうか?」
「そうですね、、、本来であれば校長先生の許可を取らないといけないのですが、殿下がどうしてもと言われるのであれば。」
「感謝する。」
「先生の許可は得た。美姫はどうだ?」
「分かりました。お受けします。」
「ありがとう。美姫とは全力で戦いたいから俺も魔法の腕輪を2つ付けるが、いいか?」
「はい。私は樹が使っていたものを使います。」
美姫に魔法の腕輪を渡す。
(ジョージ王子も全力を出す、って言ってるから、気を付けて。)
(うん。全力を出される前に一撃で決めるね。もうすぐお昼だし、長引かせたくないし。)
(美姫が気にするのはそっちか、、、)
準備を終えた美姫とジョージ王子が向かい合い、
「美姫、俺が勝てたら結婚してくれ。」
不意打ち気味にジョージ王子が条件を出してきた。
「それが模擬戦の本当の目的ですか?」
「半分正解だ。最初は美姫と純粋に模擬戦をしてみたい思ったのだが、接待試合になるのも嫌だから、この条件ならば美姫も全力を出してくれると考えたんだ。」
(ジョージ王子も意外と策士だ。)
(そうね。でも、そんなこと言われるとますます一撃で決めたくなるよ。)
(美姫の実力を見かったのに逆効果になってしまったとは、策士策に溺れる、ってやつか。)
(それに、全力を出したら手の内をさらけ出すことになるから、模擬戦でそんなことしないよね。)
(同意。美姫なら普通にやっても勝てるだろうし。)
「分かりました。その条件をお受けします。」
「ちょっと待って。美姫さん、殿下の戯言は拒否してもいいのよ。」
「陽菜さん、大丈夫です。負けませんから。」
「しかし――――」
「陽菜、余計な口を出すな。美姫、いいんだな?」
「はい。」
「よしっ!それと、後出しジャンケンのようで悪いが、俺には許嫁がいるから美姫は第二夫人にしかしてあげられないことを承知しておいてくれ。」
「はい。負けないので意味はないと思いますが。」
「そういう強気なところもいい。いや、待てよ。リリーナも勝気だから、2人と結婚したら俺を癒してくれる人が必要になるのでは、、、」
(ジョージ王子の許嫁はリリーナさんというのね。)
(ペンドラゴン家のお嬢様なんだったら唯我独尊のような気もするし、結婚したらジョージ王子も苦労しそうだ。)
「私からも条件をつけさせて頂いても良ろしいでしょうか?」
「その方が対等になるから、いいだろう。」
「では、私が勝ったら私に二度と結婚の申し込みをしないで下さい。」
「ぬっ、、、分かった。俺が負けたら美姫に二度と結婚の申し込みをしないことを誓おう。」
「ありがとうございます。」
(これで少しは静かに暮らせるようになるね。ジョージ王子の言質もとったし、情報端末にも録音したから、後で証拠がないとは言わせないよ。)
(美姫も策士だった、、、)




