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「そういう事は私のいないところで言ってもらえないかな?それに、私もありのままの自分を見せる相手はちゃんと選んでいるから。」
「どうして樹君なんですか?」
「だって、未来の旦那様だもの。」
はぁ!?
「未来の旦那様って。。。」
美姫さんも絶句している。
「美姫さん、大丈夫よ。私は2番目でも問題ないから。」
「・・・百合子さんの言っている意味が分かりません。」
「あれ?授業で習わなかった?能力があると認められた男性の魔法使いは最大3人の女性と結婚することが許されているのよ。」
「補講で習いましたけど。」
「知っているなら私の言っていることがおかしくないって分かるわよね。美姫さんが1番目で私が2番目でいいわよ。」
「よくありません。」
「そうですよ。それに僕が優秀な魔法使いになれるとは思えませんし。」
「そんなことないわ。樹君は美姫さんと私をお嫁さんにできるくらい優秀な魔法使いになれるわよ。私、見る目はあるほうなの。」
「何を言っているんですか。百合子さんは別の人を探して下さい。」
「美姫さんって独占欲が強いの?でも美姫さんの期待には沿えないわ。だって私、普通の人には興味がわかないから。宇宙人、未来人、異世界人とかが居たら別だけど。」
「超能力者とかはダメなんですか?」
(美姫さん、突っ込むところはそこじゃない。)
(しまった!つい百合子さんの話に乗せられちゃった。。。)
「魔法使いって、ある意味超能力者と同じだと思わない?」
「確かにそうかもしれません。」
「だからありふれた感じがしてダメね。」
「そうですか。僕もありふれた存在だと思いますけど。」
「何言ってるの。樹君みたいに突然魔法使いの能力を獲得した人は私の知る限りではほとんどいないのよ。レアなのよ。それに、歴史上のそういう人たちは小さな頃に魔法使いの能力が発現していたのに、樹君に魔法使いの能力が発現したのは高校に入る前。つまり激レアよ!」
百合子さんが興奮気味に僕の方へ身を乗り出した。
「百合子さん、近いです。」
「そうです。座って下さい。」
「分かったわ。」
「どうして百合子さんは樹君に近づこうとするんですか?」
「その方が樹君のデータを詳細に取れるじゃない。」
「つまり、樹君と結婚したい、というのも研究のためなのですね?」
「違うわよ。」
「じゃぁ、どうしてですか?」
「最初は研究対象として興味を持ち始めたことは認めるわ。でも、樹君のことを深く知れば知るほど熱い思いがあふれてきて、それが愛だと最近気づいたのよ。」
「だからと言って、樹君のことを未来の旦那様とか言うのは、樹君の気持ちを考えていないので、どうかと思います。」
「私は樹君を振り向かせる自信があるわよ。」
そう言って立ち上がった百合子さんは僕の膝の上に座り、蠱惑的な仕草で僕の方にしなだれかかった。
「ねぇ、樹君、いいでしょ。」
「いや、その、、、」
僕が戸惑っていると、百合子さんの情報端末が着信を伝えた。
「もしもし。」
「・・・・」
「そう。それで?いま取り込み中なんだけど。」
「・・・・」
「えっ!?私が必要?」
「・・・・」
(た、助かった。。。)
(あのままだと樹君は百合子さんにからめとられそうだったものね。)
(樹は押しに弱いのかのう。)
(そうかもしれません。)
(美姫も、もう少し強引に行かんと樹を取られてしまうやもしれんのじゃ。)
(そ、そうでしょうか?)
(否定。エレナ様が美姫さんを煽っているだけだって。)
(樹、いらんことを言うでないのじゃ。折角、美姫が危機感を持ち始めてこれから面白い展開になりそうじゃったのに。)
(エ・レ・ナ・様。どういうことですか?)
(美姫、冗談じゃ。あれは美姫を応援しようとして言ったのじゃ。)
(エレナ様が言われることも正しいと思いますので、それでこの場はおさめることにします。)
(常にワレは美姫の味方なのじゃ。)
「・・・・」
「はぁ、魔法科の生徒も関わっているから私も行かないといけないのね。」
「・・・・」
「分かったわ。今から行くから。」
百合子さんは通話を切って情報端末をしまった。
「どうしたんですか?」
「部活紹介で騒ぎを起こした生徒がいて、その中に魔法科の生徒もいたから、私も行かないといけなくなってしまったのよ。これからだったのにね。」
「そうですか。私たちも部活紹介の続きを見て回ろうと思います。」
「もう時間もあまりないけれど、いろいろ見て回ってね。」
「失礼します。」
いろいろあって全ての部活紹介を見ることはできなかったが、美姫さんは結局どこの部活にも入らなかった。




