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竜の女王  作者: M.D
幕間8
275/688

02

「それでは、御姉様、判決をお願いします。」

「えっ、私が?」

「これは御姉様のための裁判なのですから、御姉様が裁判長なのですの。」

「判決を下すのは早すぎないか?」

「諒太は黙ってますの。御姉様が諒太にどんな罰を下されても、私が忠実に実行しますの。」

「有罪前提かよ。」

「さぁ、御姉様、判決を。」


(無罪でいいよね。)

(肯定。諒太さんはもう美姫の魔導弾を4発も直撃されて罰を受けているわけだし。)


「それじゃ、無罪で。」

「えーー!?」

「順当な判決だと思うが、華恋は残念そうだな。」

「だってそうですの。判決を拡大解釈して、諒太にあんなことやこんなことをしようと思っていましたのに、無罪とか。」

「華恋様、思ったことが口に出ています。」

「はっ!」

「それが目的だったのか。。。」


 諒太さんはヤレヤレといった感じだ。


「無事に無罪も勝ち取れたことだし、樹、俺からも質問していいいか?」

「はい。」

「樹たちは魔闘会を棄権して何をしていたんだ?2人が突然闘技場を出て行った時には驚いたんだぞ。」

「国防軍のお手伝い、ですかね。」

「それって高校生の樹たちがやることか?それとも、既に2人は国防軍所属だったりするのか?」

「いえ、まだ僕たちは国防軍に入ってはいませんが、いろいろ事情がありまして、、、」

「国防軍がらみの秘守義務、というやつか。言えないんだったら仕方ないな。」

「謝罪。」


(諒太さんには何も言えないのが申し訳ない。)

(いつも私たちのことを気にかけてくれているのにね。)



「『御姉様たちのことは当日に聞きました』と言いましたの。だから、もうこの話は終わりにして、これから諒太の祝賀会をしますの。」

「さっきの言葉を気にして、別に無理矢理しなくてもいいんだぞ。」

「そ、そんなことありませんの。右京、あれを持ってきますの。」

「承知しました。」


 右京君が厨房から大きめのケーキを運んできた。


「何だこれは?」

「私が作ったケーキですの。」

「そうじゃなくて、『諒太君 魔闘会優勝おめでとう』ってチョコに書いてあって、ケーキに蝋燭がたてられていることだよ!」


(見た目はお誕生日会のケーキそのものね。)

(諒太さんがああ言いたくなる気持ちも分かる。)


「諒太の優勝を心から祝う気持ちの現われですの。」

「そんなわけあるかい!」

「右京がその様子を動画でとってくれていますから、蝋燭の火を吹き消しますの。」

「やるわけないだろ!」


 押し問答の末、華恋に押し切られて諒太さんが蝋燭の火を吹き消し、右京君がケーキを切り分けて皆に配った。


「このケーキは華恋の手作りなんだよな?」

「先程そう言いましたの。職人さんに手伝ってもらいましたが、半分以上は私が作りましたの。」

「食えるのか?」

「諒太でなくてもその言葉は失礼ですの。たぶん食べられますの。」

「『たぶん』って何だ?」


(珠莉、あのケーキは本当に大丈夫なのか?)

(作られてから1週間以上たっていますが、冷凍してあったので大丈夫だと思います。)

(1週間前に作ったということは、魔闘会の祝賀会のために作ったやつ?)

(はい。華恋様が美姫様のために作られたケーキを手直ししたものです。作られた時に毒味はしてありますし、残り物を頂きましたが、美味しかったですよ。)

(なら安心。)


「さぁ、今は諒太が主役なのですから、1番先に食べてほしいですの。」

「分かったよ。」


 諒太さんは恐る恐るケーキを口に運ぶ。


「・・・どうですの?」

「普通にうまい。華恋もお菓子作りをするようになるとは。」

「食べられるようで良かったですの。御姉様、私たちも頂きますの。」

「俺に毒味させたのかよ!ちょっと感動した気持ちを返せ。」


「こうなるだろうと思った。」

「樹様、私たちも頂きましょう。あーんして下さい。」


 珠莉がフォークで切り取ったケーキを僕の方に向ける。


「珠莉、あなたは何をしているのかな?」

「樹様にケーキを食べてもらおうとしています。」

「そんなことは見れば分かるよ。私が聞きたかったのは、どうして珠莉が樹に食べさせてあげようとしているのか、ってこと。」

「私がしたいからです。それに、樹様も喜んでくれています。」

「ふーん、樹はケーキを食べさせてもらいたいんだ。それなら、どうぞ。」


 美姫もフォークで切り取ったケーキを僕の方に向けてきた。


 パクッ


「ふふふ。樹は私の方のケーキを食べたいみたいよ。」

「樹様、私のケーキは食べて下さらないのですか?」


 勝ち誇った様子の美姫を見て、珠莉が涙目で僕の方に訴えかける。


 パクッ


「ふふふ。樹様は私のケーキも食べて下さいましたよ。」

「そのようね。ここは交互に食べさせる、ということでどうかな?」

「分かりました。」


 その後、僕は美姫と珠莉の分のケーキを交互に食べ、僕の分のケーキを交互に食べさせることになった。


「華恋、珠莉ってあんな性格だったか?」

「そんなことありませんの。樹と関わるようになってから変わってしまいましたの。樹のせいですの。」


 諒太さんと華恋のひそひそ話を聞きながら美姫と珠莉にケーキを食べされ続けたのだった。

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