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(竜族は死ぬことはないのだったら、創造神様が精神エネルギーを放出している限り、竜族は無限に増えてしまいませんか?)
(天界はそれを許容できる無限と言っていい程の広さがあるが、八竜王の王領は有限の広さじゃったから、竜族を無限には増やせなかったのじゃ。それで、それぞれの王領に竜族があらかた行き渡ったころに新たな竜王と王領を創る予定、と第四神ゼノス様がおっしゃっていたのじゃ。)
(無限の広さとか、天界の規模感が全然つかめない。。。)
(そうね。神様の世界なんだから、私たちが理解できないのも当然かもしれないね。)
(新たな竜王って、やっぱり、八竜王の欠点を失くして利点を伸ばして作られたのでしょうか?)
(いや、結局、新たな竜王は創られなかったのじゃ。)
(どうしてですか?)
(新たな王領を創り始めたところで、創造神様が御隠れになったからじゃ。その理由は四竜神様にも分からず、創造神様が住まわれる領域に第一神ウラナス様と第二神エノス様が籠って、創造神様の神意を伺っているところなのじゃ。)
(もしかして、今もその状態が続いているのでしょうか?)
(そうじゃ。創造神様が御隠れになったことで、天界に放出される精神エネルギーもなくなり、生命の樹から竜族が生まれることもなくなったのじゃ。)
(創造神様が御隠れになったことを知った時には俺も驚き、もう会うことも出来なくなった、と思うと悲しくもなったものだ。)
(ザグレドは創造神様に会ったことがあるのか?)
(1度だけ見たことがある、ってところだ。王都に行った時に創造神様が来ていらっしゃってな。神々しくて何て温もりのある精神エネルギーの波動なんだ、と感動した記憶がある。)
(その創造神様がいなくなって、新しい竜族が生まれてこなくなったら、それは衝撃だろうな。)
(事態は新たな竜族が生まれてこないことだけでは済まんかったのじゃ。竜族は創造神様が天界に放出される精神エネルギーを吸収して生きておるから、創造神様が御隠れになってしまうと天界に精神エネルギーが補充されず、飢える竜族が出始めたのじゃ。)
(竜族も腹が減るのですか?)
(空腹を覚える、という感覚は竜族にはないが、竜族とて生命体である以上、生きていく力を生み出すためにはエネルギーを摂取せねばならないのじゃ。天界の物質は精神エネルギーでできておるから、それを分解して凌いでおったのじゃが、創造神様が御姿を現されないうちに限界が来てしまったのじゃ。)
(人類で言うところの飢饉ですね。)
(そうじゃ。そして、飢えが限界を超えた時、魔族に変容し、理性を失って狂ったように他の者を襲い始めたのじゃ。)
(竜族が魔族に変容する理由が憎悪や嫉妬やなんかの負の感情ではなく、飢えだったなんて意外。)
(創造神様は天界を平和な楽園にしようとされておったので、憎悪や嫉妬などというものは設定されていなかったのじゃ。しかし、魔族が生まれ争いが起きると、創造神様が御隠れになった影響か、そういった負の感情も生まれきたのじゃ。)
(世界の設定が変更されたから、とかですか?)
(それをできるのは創造神様と第一神ウラナス様だけのはずなのじゃ。御二人とも創造神様が住まわれる領域から出てきておられぬから、原因は不明なのじゃ。)
(竜族は何故飢えると魔族に変容するのでしょうか?)
(それは、竜族の精神エネルギーを奪って生き延びるためじゃ。天界中に漂う微小な精神エネルギーを吸収するよりは、大きな精神エネルギーを襲った方が効率が良いからのう。
以前『魔族は整流機関が疑似乱数発生機関に変容してしまっておる』と説明したことがあるのじゃが、疑似乱数発生機関は整流機関が整えた精神エネルギーを奪うのに特化しておる、と言えるじゃろう。つまり、竜族の精神エネルギーを奪って生き延びるために整流機関を疑似乱数発生機関に変容させた結果、竜族は魔族に変容してしまったのじゃ。)
(分かったような分からないような。美姫はどう?)
(多分こういうことじゃないかな。創造神様は太陽のような存在で、放出される精神エネルギーの波動は様々。草木が太陽の光を葉緑素で糖に変えて使用するように、竜族は天界中の精神エネルギーを整流機関で整えて使用する。そして、動物が草木や他の動物を食べてエネルギーを得るように、魔族は竜族を襲って精神エネルギーを得られるように進化したんじゃないかな。)
(成程。つまり竜族はナ〇ック星人。。。)
(何それ?)
(いや、何でもない。)




