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竜の女王  作者: M.D
2171年夏
268/688

30

「それで、私はこの後どうなるのですか?」


 真夏中尉が平然とした顔で問いかけた。


「上にいるお前の仲間とともに国防軍の施設に移送され、そこで今回のことについて尋問されることになるだろう。」

「そうですか。では、早く連れて行って下さい。」

「・・・分かった。その前に、俺たちに何か言うことはないか?」

「『裏切ってごめんなさい』とでも言ってほしいのですか?それで許してくれるのなら、何度でも言いますが。」

「いや、もう何も言わなくていい。」


(ここで快斗中佐を煽る意図は何なんだろう?平然としてるから、やけっぱちになってるわけでもなさそうだし。)

(私には真夏中尉は快斗中佐の性格を考えて会話を打ち切るために言ったように思えるよ。)

(どういうこと?)

(快斗中佐が恭介少尉の名前を出したときに、真夏中尉がピクッと反応したような気がするから、恭介少尉と接触したいんじゃないかと思って。)

(成程。早く戻らないと恭介少尉が先に連行されてしまうからか。)


「では、芽論めろんは俺と同行し、それ以外の者は応援が来るまで引き続きこの場の警備と保全を行うように。」

「「はっ。」」

「寧々、ここの指揮を任せる。」

「承知しました。」

「美姫さんと樹君は俺と同行してくれ。」

「「はい。」」

「では、行こうか。」


 快斗中佐を先頭に、無言で元来た道を戻る。


(美姫の言うとおりならここで真夏中尉が仕掛けてくることはないだろうけど、不安だ。)

(人数が少なくなったから樹がそう思うのも分からなくはないし、警戒だけはしておきましょう。)

(了解。)


 真夏中尉は素直に快斗中佐の後ろについて歩いており、美姫が思ったとおり地上に出るまで何も起きなかった。

 


「豊中佐、こいつも一緒に連行してくれないか?」


 地上に戻ってすぐに快斗中佐が豊中佐に真夏中尉の連行を依頼した。


「構いませんが、その者は快斗中佐の部下では?」

「あぁ、俺の部下”だった”。こいつが裏切って魔導壁発生装置が設置されている部屋に黒ずくめの集団を招ききれたんだ。」

「快斗中佐を騙したのは、その者だったのですね。承知しました。我々の部隊が責任をもって恭介少尉と一緒に連行します。」

「よろしく頼む。」


 恭介少尉の側に座らされた真夏中尉の口角が上がったような気がした。


(やっぱり真夏中尉は何か企んでるよね?)

(同感。悪魔の力を使って逃げるのは、このままいくと移送中だろう。)

(旬果お姉ちゃんにそのことを伝えておいた方がいいよね?)

(でも、さすがに『悪魔の力を使って逃げようとしている』とは言えないし、、、)

(もどかしいけど、できるとしたら注意を促すくらいね。)

(同意。)


「旬果お姉ちゃん、ちょっといい?」

「何?」

「真夏中尉は何か企んでいるようだから気を付けて。」


 美姫は旬果さんの耳元で囁いた。


「そうなの?拘束具もつけているし大丈夫だとは思うけど、注意しておくわ。」

「旬果お姉ちゃんも何かあっても怪我しないようにしてね。」

「美姫ちゃんにそこまで言わせる何かが真夏中尉にあるのかしら?」

「うん。何かは私にも分からないけれど、そう思うの。」

「分かった。護衛の数を増やすよう豊中佐に進言しておくわ。ありがとう。」


 旬果さんは真夏中尉の方をチラッと見た後、美姫の言葉にうなずいた。


「美姫ちゃんと樹君は、これからのことは私たちに任せて、もう帰った方がいいわね。」

「うん、でも、、、」


「俺たちに後を任せることに不安を憶える気持ちも分かるが、君達を待っている者がいることにも気づいてやってほしい。」


 快斗中佐の視線の先には華恋と珠莉が不安そうに待っている姿があった。


(華恋と珠莉には心配させてしまったかな。)

(魔闘会を棄権して、何も言わずに出てきてしまったものね。)

(ここは国防軍に任せて帰ろうか?)

(そうね。)


「分かりました。」

「2人には大変世話になった。こうやって事態を収拾できたのも君達のお陰だ。改めて感謝したい。ありがとう。」

「まだ何か起こりそうな気もするので、注意して下さい。」

「分かっている。君達も気をつけて帰ってくれ。」

「はい。」


 華恋と珠莉の方に歩き始めると、2人が駆け寄ってきた。


「御姉様、私、すごく心配しましたの。」

「美姫様、樹様、ご無事でよかったです。」

「爆発音が起きた後に突然闘技場から出ていかれて、何が起きているのか分からず、気が気ではありませんでしたの。」

「御二人のことですから大丈夫だろうとは思いましたが、不安でたまりませんでした。」


 華恋と珠莉が思いのたけをぶつけてくる。


「華恋ちゃんと珠莉には心配をかけてゴメンね。」

「2人がここにいるということは鍔須さんを待たしているんだろうから、詳しいことは帰りの車内で話すことにしない?」

「そうね。2人ともそれでいい?」

「「はい。」」


 僕たちは鍔須さんが運転する車内で事件についてかいつまんで説明をしながら、寮まで戻ったのだった。

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