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竜の女王  作者: M.D
2171年夏
265/688

27

「恭介少尉は本当に狼魔獣のことは知らなかったのですか?」

「本当だ。狼魔獣が現れた時に俺は薬で眠らされていて、第四小隊の隊員に連れ去られた後にそのことを聞いたんだ。」

「あくまで自分は被害者だと言い張るのですね?」

「そうだ。」


「潔白ならば、その旨訴えればよかろう。」

「あの状況を鑑みれば、俺を陥れた人物が魔法軍上層部にいて、軍法会議で身の潔白を訴えても無駄なことくらい、俺も馬鹿じゃないから少し考えれば分かる。」

「そうかもしれんが、では、何故貴様は魔導壁発生装置を奪おうとしたこいつらとここにいる?話がつながらんと思わないか?」

「それは、連れ去られた先で、俺はもう死んだことにされていて魔法軍には戻れないからこの仕事を受けないか、と誘われたからだ。」

「何故断らない?」

「中佐も分かっているでしょう。闇に葬られた者は犯罪者として生きていくしかないことを!」


(完全に思考誘導されておりますな。連れ去られた先には仲間もおらず、画一的な情報だけを与えられたのでしょうな。)

(でも、ちょっと考えれば間違いだと気づくと思うんですけど。)

(何度もその考えを否定するとともに暴力や暴言を使って恐怖を与え、”自分の考えの方が間違っている”と思い込ませるのですな。そして、”都合の良い情報”を受け入れた時には褒めて認めることによって、それが良いことだと学習させるのですな。)

(成程。ありがちな手法に聞こえますが、自分がその状況に置かれたら恭介少尉と同じようにならない自信はありません。)

(使い古された手法であるからこそ、効果があるとも言えますな。)


「・・・そうか、それが貴様が選んだ道か。」

「そうだ。俺はこの仕事を成し遂げて、黒りゅ――――」


 !?


 突如、エレナ様によって思考加速を強制発動され、時間の流れが緩やかなる。


 バンッ!


 銃声が聞こえた後に、引き伸ばされた感覚の中で高速で向かってくる銃弾が見えた。


(樹君!)

(了解!)


 キンッ!


 魔導盾を発動し、銃弾から恭介少尉を守る。


(美姫、ワレらは銃弾の射線軸を追うのじゃ!)

(はい!)


 バシュッーーーー!

 ドガンッ!


 美姫が徹甲魔導弾を撃ち、高層ビルの残骸に当った音がした。


(樹君、まだ敵がいるかもしれないですな。)

(了解!)

(美姫もまだ気を抜くでないのじゃ。)

(はい!)


 美姫と手分けして索敵をするが、新たな狙撃手は見当たらなかった。



(他に狙撃手は・・・いないみたい。)

(もう大丈夫かも。)


(ふぅ、危機一髪だった。)

(そうね。エレナ様が思考加速を強制発動して下さらなければ、恭介少尉を死なせていたかもしれないね。)

(いきなり時間の流れがゆっくりになった時には何事かと思ったけど、全員無事で良かった。)

(樹が突然の思考加速の中でも魔導盾を正確に発動できたことも大きかったと思う。)

(あれだけ夏休みに特訓したし、グレンさんの補助もあったから。美姫だって同じ状況だったのに、魔導盾よりも複雑な工程を必要とする徹甲魔導弾を撃てたことの方が凄い。もう僕より断然上手に使えるんじゃない?)

(私もエレナ様の補助があったからよ。)


(で、どうだった?当たった?)

(多分当たったと思うけど、私が確認した時にはもう狙撃手は逃げだすところで、建物の影に隠れていたから本当に当たったかどうかは分からないの。エレナ様はどうお考えでしょうか?)

(掠りはしたが仕留めるまでには至らんかったようじゃ。)

(そうですか、残念です。)

(今回は相手が一枚上手だった、ということじゃ。次回に雪辱を果たせばよいのじゃ。)

(はい。)


(撃った後にすぐその場を離れるとは、あの狙撃手はなかなかの手練れのようですな。)

(いくら手練れだと言っても、美姫の徹甲魔導弾をかわせるほど素早く動けるものでしょうか?)

(身体強化した魔法使いなら可能でしょうな。)

(成程、魔法使いならあり得ますね。だとしても、狙撃に魔法を使わないのは、、、狙撃手は”楯系”魔法使いだったとか?)

(そう思わせるのが狙いかもしれませんな。ただ、エレナ様が『掠りはした』と仰られていたので、狙撃手に掠り傷という目印をつけられたのですな。)

(これで狙撃手が見つけられたら、今回は珍しくエレナ様の大手柄ですね。)


(珍しくとは余計ではないかのう。)

(そうだぞ!危機管理をしっかりされているエレナ様ならこのくらい当然のことだ!流石は俺たちのエレナ様。先の第9次聖魔大戦においても――――)


 空気を読まずにエレナ様を褒め称えるために出てくるザグレドの方が流石だ。


(エレナ様ありがとうございました。改めて感謝申し上げます。)

(美姫を狙ったのかもしれんかったからのう。念のためじゃ。)

(実際に狙われたのは恭介少尉でした。仲間割れでしょうか?)

(ワレには分からんが、不都合な話をされては困るのじゃろう。)

(不都合な話、、、恭介少尉は何を話そうと、、、黒龍会!)


(ここに来て黒龍会か。一気に怪しくなってきた気がする。)

(そうね。黒龍会が仕組んだのだとすると、恭介少尉を実習での事件の犯人に仕立て上げたのを利用したのか、そもそも今回のために実習で事件を起こしたのか、、、)

(後者だとすると用意周到すぎる。)

(どちらにせよ、恭介少尉の話を聞けば何か分かるかもしれないね。)

(同意。)

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