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魔導弾を撃つ姿勢をとる美姫を見て、咄嗟に諒太さんは魔導楯を発動しようとする。
(諒太さんは凄いね。この状況でもしっかり魔導盾の発動準備をしていたなんて。)
(同意。でも、それは想定内。)
美姫はその姿勢から好美さんに向かって突っ込む。
「何!?」
意表を突かれて、諒太さんが発動しかけた魔導盾を取り消そうとし、麗華さんと好美さんは慌てて美姫に牽制の魔導砲を放とうとしたため、3人に行動を変更するための一瞬の間が生じる。
(あからさまなフェイントに引っ掛かるとは情けないのう。)
(そうですな。)
その間を利用して、予め発動準備をしていた僕が魔導弾を撃つ。
「樹の魔導弾程度なら。」
ドンッ!ドンッ!
魔導弾は諒太さんが取り消しを止めた魔導盾に受け止められるが、
(甘いよ。)
美姫がいい時旬で再度魔導弾を撃つ。
パリンッ!パリンッ!
パリンッ!バコッ!バコッ!バコッ!
「ぶへらっ!」
諒太さんは追加の魔導盾を重ねて砕かれながらも魔導弾を受け止め、好美さんは3発叩き込まれて場外まで吹き飛ばされた。
(美姫、3発はやりすぎじゃない?)
(ちょっとした追加のお仕置きよ。)
(諒太さんも自分用に追加の魔導盾を発動するために、好美さんの魔導盾に込める魔導力を少なくしていたし。)
(麗華さんと好美さんの話を聞いて思うところがあったのよ。)
「諒太、あれやるわよ。」
「いや・・・分かった。」
諒太さんが形成した妙な形の魔導盾に向かって麗華さんが魔導砲を放つと、
!?
魔導盾に当たった魔導砲が分裂してこちらに向かってきた。
(この数だと魔導盾が足らない!)
(私はいいから、樹は自分の守りに徹して。)
(了解。)
自分の前面にのみ魔導盾を形成する。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
(これが、あやつが言っておった『秘策』かのう。)
(数は多いが威力はそれほどでもないですな。)
(この程度であれば、ワレが手助けせずとも美姫は避けられるし、たいしたことないのう。)
(でも、規定違反の魔導砲を放てる魔法の腕輪だと分かっていて使うなんてひどいです!)
分裂した魔導砲を避けきった美姫が麗華さんを睨むと、麗華さんも自分のしでかしたことに気付いたようだった。
(今更気が付いても遅いよ。)
(分かってて止めなかった諒太さんも大概ひどい。)
(美姫さんと樹君なら大事には至らない、と判断したのかもしれませんな。)
(それでも、です。)
バコッ!バコッ!バコッ!バコッ!
「ぶへらっ!」
諒太さんは4発の魔導弾を叩き込まれて場外まで吹き飛ばされた。
(何気に好美さんより1発多いけど、今回は同情できないな。)
(諒太さんにも反省してもらわなきゃ。)
(麗華さんに魔導弾を撃たなかった理由は?)
(このまま終わらせたら麗華さんがつけいている魔法の腕輪を証拠として確保できないから。)
(そうかな?)
(待機している魔法使いは六条軍務尚書の息のかかった人だろうから、麗華さんが場外に出たり気絶したりしたらすぐに医務室に連れていかれるよ。そうしたら、私たちは手出しができなくなるもの。)
(成程。六条軍務尚書が黒幕なら、証拠隠滅の手はずを整えていてもおかしくないか。)
(だから、こうするの。)
美姫は麗華さんに突っ込んで押し倒した。
「くっ!」
その体勢のまま美姫は麗華さんに問いかけた。
「麗華さんに聞きたいことがあります。」
「魔法の腕輪のことね。」
「そうです。あれは麗華さんが用意した物ではない、というのは正しいですか?」
「えぇ、私は規定違反の威力が出るなんて知らなかったわ。2回目は試合に集中していてそのことが頭から抜けていただけなの。」
「・・・。」
「本当よ。何でもするから許して。」
美姫の気迫に麗華さんは青ざめた顔で懇願した。
「それなら、魔法の腕輪を外して私に渡して下くれませんか?」
「・・・分かったわ。」
麗華さんは素直に魔法の腕輪を外した。




