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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
26/688

11

 手芸部の部室を出て文科系の部室を見回っていると、


「美姫さん、どうして麗華様のところに挨拶に来ないの。麗華様がお怒りよ。」


 見知らぬ先輩が声をかけてきた。


(制服に青い線が入っているから、2年生よね。誰だろう?)

(ん?美姫さんの知らない先輩?向こう美姫さんのことを知っているみたいだけど。)

(私はあの人のことを知らないよ。人違いかも。)

(それと、麗華様って誰?)

(うーん、、、心当たりはないかな。)


 声を掛けられた意図が分からず、美姫さんと顔を見合わせ困惑した。


「えーっと、人違いではないですか?私は麗華様という方のことを知らないのですが。」

「麗華様のことを知らないなんて信じられない!麗華様は六条家本家筋のお嬢様ですよ!」


 先輩は心底びっくりしているようだ。


(六条家って、魔法使い御三家の1つか。しかも本家筋とか。)

(と言うことは、2年生の先輩はその取り巻きの1人、ってことね。)

(肯定。面倒ごとに巻き込まれそうで、関わりたくない。)

(もう巻き込まれてるよ。)


「今この高校には魔法使い御三家本家筋の生徒は麗華様しかいらっしゃらないのよ!」

「そうなんですか?」

「『そうなんですか?』じゃありません!魔法使い御三家本家筋の方がおられる時には入学した生徒は挨拶に行くのが当然だと知らないんですか!しかも麗華様は2年生であなた達の先輩ですよ!」

「知りませんでした。魔法使いの事情には疎いもので。」

「『魔法使いの事情には疎い』って、龍野家分家筋のあなたが何を言っているの!あなたは知っていなければならないでしょう。さあ、麗華様がお待ちだから、早く私と一緒に来なさい!」


 先輩が美姫さんの腕を掴もうとするが、美姫さんはそれを躱す。


「すみません。今日はこの後まだ部活紹介を見て回りたいので、改めて後日伺います、とお伝え下さい。」

「何を言っているの?部活紹介よりも麗華様への挨拶のほうが大事でしょ!」

「いえ、部活紹介は今日しかありませんので。失礼します。」


 そう言って美姫さんが先輩の横を通り抜けようとしたとき、先輩が手を伸ばして行かせまいとした。


「部活紹介よりも麗華様への挨拶のほうが大事です!」

「私にとっては部活紹介の方が大事です。」

「なんですって!?」


 先輩が美姫さんを睨みつける。


「本当に聞き分けの悪い子ね。さぁ、行くわよ。」

「嫌です。」


 再び先輩が美姫さんの腕を掴もうとするが、再度美姫さんはそれを躱す。


「美姫さん、あなたって子は、、、英雄の娘だからって、いい気にならない事よ!」

「いい気になんてなってません。」

「そう?でも、これならどうかしら?」


 そう言った瞬間、先輩は美姫さんの腕を掴んでいた。


「いくら優秀でも1年生ではまだ身体強化は教えてもらっていないんだから、私には勝てないわよ。」


 先輩がニヤリと笑う。


(先輩が一瞬消えたように見えたけど、何が起きた?)

(身体強化と言っていたから、魔法に関連する技術を使ったんじゃないかな?)

(そうじゃ。奴が急加速して美姫の腕を掴んだのじゃ。)

(それで一瞬消えたように見えたのですか。)


「放して下さい!」

「それはできない相談ね。」

「どうしてこんなことをするんですか?」

「あなたが素直に来ないからでしょ!」

「手を放して下さい。痛いです。」

「無理。さぁ行くわよ。」


 先輩は美姫さんの腕を引いて連れて行こうとする。


「やめて下さい。」

「早く来なさい!」


(腕を握る力が強く痛い。)

(やれやれ、美姫に傷をつけたらただではすまんのじゃ。)


 エレナ様が先輩の強引さにイライラしだしたとき、


 コツッ、コツッ、コツッ


 階段を誰かが降りてくる音がした。


「助けて下さい!」


 美姫さんが声をあげと、


「もうどうなっても知らないからね!」


 先輩は美姫さんの腕を放し、そう言い残して去っていった。


(助かった。。。)

(助かったのは奴の方じゃ。これ以上美姫を放さんかったら、ワレが制裁を加えておったところじゃったからのう。)

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