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「それでは決勝戦を開始します。準備はいいですか?」
「「「はい。」」」
「では、始め!」
審判の合図とともに3年生は美姫の魔導弾に備えるが、
(遅い!)
バコッ!バコッ!バコッ!
パリンッ!パリンッ!パリンッ!
美姫の放った魔導弾によって3年生2班は全員沈められ、諒太さんの魔導盾によって3年生1班は辛うじて全員無事のようだった。
(事前に魔導盾の発動準備をしていたとはいえ、魔導盾を砕かれながらも美姫さんの魔導弾を全て受け流すとは、実習の時と比べても判断と発動が上手くなっていますな。)
(諒太さんも鍛錬に精を出していましたから、努力が実った結果だと思います。)
(他の2人の守りを優先して自分への一発は受ける覚悟だったようじゃが、美姫には運がなかったのかもしれんのう。)
(このくらいは想定内です。次で決めます。)
パンッ!
3年生1班では麗華さんと諒太さんがハイタッチしていた。
「よしっ!でも、もう一度やれと言われても無理だからな。」
「分かってるわ。好美、行くわよ。」
「はい。」
(そんなことをしておらんとすぐに攻撃に移るべきでしょうな。ここが戦場なら死んでいますな。それに、樹君たちも相手の攻撃を待ってあげるとはお人好しすぎませんかな。)
(グレンさん、冷静な突っ込みありがとうございます。僕たちも少しやりたいことがあるので、これも予定通りということで。)
(それが仇とならなければよいのですがな。)
(来ます!)
ゴー―ッ!!ゴー―ッ!!
グゴーーー!
麗華さんは2つの魔導砲を、好美さんは魔力倍化を使って威力を2倍にした魔導砲を放ってきたが、
(樹君!これはまずい!)
(承知!)
麗華さんの魔導砲は訓練用の魔法の腕輪から放たれたのとは思えない威力だった。
(美姫はワレに任せるのじゃ!)
(了解!)
(お願いします!)
美姫を手助けしようとしたがエレナ様に任せることにして、自分の守りに集中し、
パシーッ!パシーッ!パシーッ!
なんとか魔導砲を受け流すことに成功した。
(やってくれおったのう。)
(はい。麗華さんの魔導砲の威力は訓練用の魔法の腕輪から放たれたものとは思えません。)
(あの威力では美姫が発動した魔導盾はもたんじゃろうし、3方を囲まれた故、逃げることもできんかったらのう。樹とグレンが追加で魔導盾を発動しようとしてくれておったが、間に合わん可能性もあったから、ワレが手助けしたほうが良いと思ったのじゃ。)
(ありがとうございました。エレナ様のおかげで助かりました。)
(魔法の腕輪に細工をしてくるとは卑怯にも程がある。)
(麗華さんが言っていた『秘策を用意してある』ってこのことだったのね。『正々堂々と試合をしたい』という言葉を信じた私たちがバカだったよ。)
(いや、そうでもなさそうじゃぞ。)
((えっ!?))
僕もエレナ様の指摘に驚いて麗華さんの方を見ると、麗華さんも戸惑っているようだった。
「好美、今の魔導砲の威力って規定違反よね?どうしてこんなことに、、、」
「麗華様の魔法の腕輪が壊れているのかもしれません。」
「『壊れているのかもしれない』って、決勝戦前に検査されたときには正常だったわよ?」
「検査も完璧ではありませんのですり抜けたのかもしれませんし、検査後に壊れた可能性もあります。」
「そんなことってある?・・・好美、あなた、もしかして、、、」
「・・・。」
好美さんは麗華さんの質問に対して無表情で答えた。
(好美さんは絶対にこのことを知ってたよね。)
(同意。もし好美さんが知らなかったとしたら、麗華さんと同じように動揺しているはず。でも、そうじゃない、ということは、知っていたんだろうな。)
(黒幕はおそらく六条軍務尚書ね。試合前に好美さんが頷いていたのは、麗華さんに用意した魔法の腕輪を渡したことに対してだったのよ。)
(それに、好美さんの態度からして、嫌々やっている風にも見えないから、麗華さんに対して思う所があったのかもしれないな。)
(六条軍務尚書の手先というよりは、自ら進んで実行した共犯者ってところかな。)
(しかし、決勝戦では2人とも”銃剣系”と”楯系”の魔法の腕輪を1つずつつける、というのが裏目に出ましたな。)
(こんな事態になるとは思ってもみませんでしたから。僕が2つとも”楯系”の魔法の腕輪をつけていればもっと余裕をもって対処できたのですが。)
(私が"桜吹雪"を旬果お姉ちゃんに見せたいって色気を出さなければ、こんなことにならかなったのにね。これが重要な決勝戦だと分かっていたはずなのに、、、)
(僕も”銃剣系”魔法が使えるところを示したかった、ってのもあるから、美姫だけのせいじゃないって。僕たちも気が付かないうちに慢心していたのかもしれない。)
(ここで”たられば”を語っても仕方ないのじゃ。)
(そうですね。エレナ様のいうとおりです。)
(さて、犯人たちに対するお仕置きは後でするとして、取り合えずは奴らを倒して優勝するとしようかのう。)
(はい。)




