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竜の女王  作者: M.D
2171年夏
254/688

16

 第1試合は2年生2班が順当勝ちし、第2試合が始まろうとしていた。


「樹はどちらが勝つと思う?」

「華恋たちの方。」

「私もそう思う。聡君たちには悪いけど、聡君たちでは華恋ちゃんの魔導盾による守りを突破できないよ。」

「同意。合同鍛錬で美姫の魔導弾をしこたま受けて、魔導盾の扱い方が上手くなってきてるし。」

「樹も何だかんだ言って的確な助言をしてあげてたものね。」

「『人の振り見て我が振り直せ』じゃないけど、華恋が美姫の魔導弾を様子を見て自分の欠点にも気づけたから、そのお返しとしての助言くらいはしてあげようと思って。」


 生徒が所定の位置に着いた後、審判が入ってきた。


「第2試合を開始する。準備は出来ているか?」

「「はい。」」

「では、始め!」


 審判の号令と同時に華恋は魔導盾を発現して聡たち2年生4班に突っ込み、


 ドンッ!


 2年生の1人が外に押し出された。


「身体強化が一番不得手な萌ちゃんを狙うなんて、華恋ちゃんも良く見てるね。」

「同意。残りの2人も1年生から総攻撃を受けて苦戦してるっぽい。去年、僕たちにしたことのしっぺ返しを食らってるんだろう。」

「そうよね。同級生から狙われるなんてあり得ないよ。でも、聡君は可愛そうね。去年は私たちに協力してくれたのに。」

「同感。」


 ドンッ!


 華恋の楯突撃によってまた1人外に押し出され、残るは聡だけになった。


「聡も頑張ってるけど時間の問題かな。」

「多勢に無勢だもんね。聡君もこれまでに1年生を2人無効化できているけど、華恋ちゃんが守りに入ってからは苦戦してるし。魔導盾による守りを突破できないなら別の方法を取ればいいんだけなんだけれど。」

「聡もそれを分かっているから、魔導盾と正面からぶつかるんじゃなくて側面から回り込んで華恋の隙を狙ってるけど、華恋は身体強化を使いこなせるから上手く避けられてるし、聡にはきつい状況だ。」

「そうね。逆に魔導盾で殴り返されているあたり、聡君も身体強化が完全にできてないところを突かれて困っている様子ね。」

「しかし、一気に試合を決めずに聡が消耗するまで待っているなんて、華恋の性格の悪さが滲み出てる展開だ。」

「ふふふ。後で、『あまり上級生を虚仮にしちゃダメだよ』って言っておくよ。」


 結局、魔力が尽きて足が止まった聡が華恋に外に押し出されて、1年生1班の勝利となった。


「やっぱり負けちゃったね。」

「仕方ない。華恋は桐生家本家筋の人間で才能がある上に、最近は美姫に厳しく指導されてたし。聡も夏休みに猛特訓してたみたいだけど、差は開くばかりに見えたから。」

「華恋ちゃんはきつめに撃った魔導弾の直撃を受けても、へこたれずに続けられてるんだから、ああ見えて結構根性があるのかもしれないね。」

「あれは快感を覚えてるからっぽい。美姫の魔導弾を食らうたびに恍惚とした笑顔を浮かべてたし。ん?そう言えば、同じようなやつがいたような、、、」

「やめて。嫌な事を思い出させないで。」



「さて、次は珠莉の番か。」

「樹は珠莉のことが気になるのね。」

「合同鍛錬では珠莉の指導をしてたし、どこまで2年生に通用するか興味はある。」

「それだけ?」

「それだけ。」

「ふーん。合同鍛錬で珠莉に抱き着かれて鼻の下を伸ばしていた誰かさんの台詞とは思えないよ。」

「美姫、どうしてそれを、、、」

「私が知らないとでも思った?樹のことはいつでも見てるんだからね。あーあ、私もどこかの国の王子様みたいな人に告白されたりしないかな。」

「それは困る。」

「ふふふ。冗談よ。それに、樹以外の人に告白されてもちゃんと断るから。」


 そんな話をしているうちに第3試合が始まった。


 ゴーー!


 2年生が放った魔導砲を珠莉はギリギリ受け流せている。


「今のところは何とか耐えられてる。でも、1年生に本気の魔導砲を放つなんて、大人気ない。」

「もう、樹は珠莉のことを贔屓目に見すぎよ。合同鍛錬でも手取り足取り楽しそうに教えてたし。」

「自分が教えてもらったことをほとんどそのまま伝えただけなんだけど、教えたことをちゃんと理解して実行できるようになる珠莉を見て嬉しく思っただけだって。美姫も僕が魔法を使えるようになった時に喜んでくれたじゃない。それと一緒。」

「むぅ、そうなんだろうけど、、、」

「美姫は珠莉のことを良く思ってなかったりする?」

「そんなことはないけど、樹と一緒に楽しそうにしているのを見ると、たまにイラっとする。」

「これからは善処する。それと、僕にとっては美姫が一番だってことは忘れないでいてほしいな。」

「樹、こんなところで何言ってるの。恥ずかしい。」


「あなたたちのバカップルぶりを見せられている私の方が恥ずかしいわ。」


 後ろから美沙の毒舌が聞こえてきたが気にしないことにした。


 バコッ!


 また1年生が1人魔導弾を受けて気を失った結果、闘技場には2年生は3人全員が残っており、1年生は珠莉を含めて2人まで減らされていた。


「珠莉も頑張ったけど、もう駄目そうね。」

「”楯系”魔法使いだけが頑張っても、攻撃陣が敵の数を減らせないとジリ貧になってしまうから。その点、僕達5班は美姫が圧倒的な攻撃力を見せるから僕の出番はほとんどないし、やっぱり攻撃は最大の防御なんだろう。」

「麗華さんたちとの決勝戦はそうもいかないだろうから、樹には期待してるよ。」

「了解。」


 バコッ!


 珠莉は最後の1人になったところで降参して、1回戦敗退が決まった。

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