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竜の女王  作者: M.D
2171年夏
251/688

13

 今日は初めての合同鍛錬の日である。


「昨日はワクワクしすぎて眠れませんでしたの。でも、全然眠くありませんの。」


 薄っすら目の下にくまを作った華恋が美姫に抱き着こうとして、かわされていた。


「遠足前日の小学生みたいだな。」

「そうですね。」

「そこの男子2人、聞こえてますの。今日の私は気力十分ですから、ギッタギタにしてやりますから覚悟しておきますの。」

「それならちょうどいいな。樹、華恋の模擬戦の相手をしてやってくれ。美姫さんと樹は華恋の実力を知らないだろうから、鍛錬を始める前に知っておいた方がいいだろう。」

「了解です。」

「私の実力を見せてやりますの。後で泣き言を言っても聞いてあげませんの。」


(手加減してあげてね。)

(了解。華恋の実力ってどのくらいなんだろう?知ってる?)

(分からない。でも、樹だったら楽にさばける程度だと思うよ。)


 華恋と相対して、諒太さんからの開始の合図を待つ。


「最初から全力で行きますの。」

「いや、華恋は楯防御の鍛錬をするんだから、樹の魔導弾を受けて実力を見てもらうんだぞ。まぁ、全力を出さないと受けきれない、というのなら分からんでもないが。」

「諒太はいちいちうるさいですの。まずは樹との上下関係をはっきりさせますの。」

「普通に樹の方が上だと思うが。」

「そんなことありませんの。」


「樹、華恋が怪我をしないように注意してやってくれ。」

「了解です。」

「2人とも私を見くびりすぎですの。早く始めますの。そうしたら、どちらが上かはっきりしますの。」

「分かったよ。じゃぁ、始め。」


 開始と同時に魔導盾を発現し、身体強化をした華恋が突っ込んできた。


(これが桐生家の楯突撃か。)

(魔導盾の形状をカウル状にして空気抵抗を下げているのね。)


 ドンッ!


 僕の魔導盾と華恋の魔導盾が接触する音がする。


(ちょっと強めに魔導盾を発現しておいて良かった。)

(そう言う割に余裕ね。)

(美姫の魔導弾に比べたら、そよ風みたいなものだし。)

(それは華恋ちゃんには言わないであげてね。)

(了解。)


「樹が私の全力を受け止められるなんて、偶然ですの!」


 華恋は少し身を引いてから、再度魔導盾を叩きつけてくる。


 ドンッ!


「嘘ですの!樹に私の攻撃が通用しないなんて有り得ませんの。」


 ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 何度も魔導盾を叩きつけてくるが、この程度なら余裕をもって対処できる。


「終了だ。」

「まだですの。」

「終了だ。これ以上やっても無駄なことは、華恋も分かっているだろう。」

「そんなことは、、、」


 華恋はフラフラと後ずさり、ペタンッと尻もちをついた。


「私は桐生家本家筋の人間ですの。高校生になってから魔法使いになったような樹に負けていいはずはありませんの。」

「これが今の華恋と樹の実力差だ。それが身に染みて分かっただけでも、良かったじゃないか。」

「ですけど、、、」

「諒太さんの言うとおりよ。それに、実力差があるのなら、それを埋める努力をすればいいだけよ。たまにはこうやって鍛錬につき合ってあげるから、一緒に頑張りましょう。」

「御姉様、ありがとうございます!」


 慰めるために近寄った美姫に、華恋が抱き着いた。


「あぁ、御姉様のお胸、柔らかくて気持ちいいですの。」



「あの、樹様。私の実力も見てもらえませんか?」

「珠莉も僕と模擬戦をしたいの?」

「はい。ダメですか?」

「否定。それじゃ、やろうか。諒太さん、引き続き審判をお願いしてもいいですか?」

「いいだろう。珠莉の準備は終わっているようだし、早速始めるか。」

「はい。お願いします。」

「それじゃ、始め。」


 パリンッ!パリンッ!パリンッ!パリンッ!


 魔導弾を放って、珠莉の魔導盾を次々に砕いていく。


「威力の高い魔導弾は、受け止めるのではなく受け流さなければ、魔導楯を砕かれるばかりだぞ。」

「後の先をとるなんて、樹様の魔導弾が速すぎて無理です。」

「僕も最初はそうだったから、これから鍛錬してできるようになればいい。」


 パリンッ!パリンッ!パリンッ!パリンッ!


「終了だ。」


 珠莉の魔導盾を全て砕き、諒太さんの合図により模擬戦は終了となった。


「樹様、”銃剣系”の魔法も使いこなせるなんて凄いです!」

「美姫と比べたら、僕なんてまだまだだよ。」

「そんなこと当り前ですの。御姉様に敵う者など、この高校にはいませんの。」

「それでも、樹様が実力者であることには変わりありません。これからご指導よろしくお願いします。」

「了解。」

「ふん。私は御姉様に教えてもらうからいいですの。」

「全く、華恋は。すまんな、樹。」

「いえ、いいですよ。」


 それから、僕は珠莉に、美姫は華恋に手ほどきをして、合同鍛錬の初日はお開きとなった。


「あれ?俺いなくてよくね?」

「諒太さんは保護者として華恋が暴走しないか見ていてくれないと困ります。」

「俺は華恋の親でも兄でもないんだがな。」

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