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竜の女王  作者: M.D
2171年夏
247/688

09

【特訓5日目】


 パリンッ! パリンッ! パリンッ! パリンッ! パリンッ! パリンッ!


 今日は模擬戦形式の特訓で、美姫が撃った魔導弾を魔導盾で防いでいる最中である。


(2人とも思考加速は使いこなせているようですが、思考並列はまだまだですな。)

(そうじゃのう。思考並列によって両手にはめた魔法の腕輪を同時に使おうとするが、上手くいかないようじゃからのう。)

(しかし、この短期間で思考並列ができそうな雰囲気を見せるとは、美姫さんは素晴らしいですな。)

(樹は全然じゃからのう。美姫は樹とは違うのじゃよ、樹とは。)


(ぐぬぬぬ。でも、やっぱり美姫は凄い。)

(樹もグレンさんが使っている演算領域の境界線を認識できるようになったんでしょ?だったら、自分のことを客観視できるようになるのも、そう遠くないよ。)

(そうだといいんだけど。)


(グレンさん、思考加速さえあれば良い気もしますが、思考並列が必要な理由が分かりません。)

(それは、今は1対1の模擬戦をしており美姫さんだけが樹君を狙っているからそう思うだけで、1対多になった時に思考並列の優位性が出てくるのですな。)


 美姫の質問に対してグレンさんが答える。


(だとしても、思考加速で高速に魔導弾を撃てばよいだけのようにも思えます。)

(ならば、樹が作り出した複数の魔導盾を撃ち砕く訓練をしてみると、美姫も思考並列の必要性が実感できるのではないかのう?)

(エレナ様の言うとおりですな。美姫さん、やってみますかな?)

(はい。お願いします。)


 パリンッ! パリンッ! パリンッ! パリンッ! パリンッ! パリンッ!


 様々な場所に発動させた魔導盾を、美姫が魔導弾で砕いていく。


(確かに、思考加速だけだと離れた魔導盾を狙って一方の手から他方の手へ魔導弾を撃つ手を変える際に、少し時間がかかりますね。)

(実戦ではその一瞬が命取りになる可能性もあるのじゃ。)

(そのことがよく理解できました。)

(でしたら、魔導盾を撃ち砕く訓練をしばらく続けるとしましょうかな。)

(お願いします。)


 ・・・・


 パリンッ! パリンッ! パリンッ! パリンッ!パリンッ! パリンッ!


 何度目かの挑戦で、一瞬だけ魔導盾が砕かれる間隔が短くなった。


(はぁ、はぁ。今、1度だけできたような気がするのですが、どうでしょうか?)

(思考並列に成功したようじゃのう。良くやったのじゃ。)

(おめでとうございます。これ程早く成果を手にされるとは思いもよりませんでしたな。お疲れのようですから、少し休みますかな?)

(いえ、この感覚を忘れないよう、このまま訓練を続けたいと思います。樹、申し訳ないけどお願いできる?)

(了解。)


 ・・・・


 パリンッ! パリンッ! パリンッ!パリンッ! パリンッ!パリンッ!


 美姫が魔導盾を砕き続ける音が響く。


(はぁ、はぁ、はぁ。ちょっとずつですが、成功する回数も増えてきました。)

(いやはや、美姫さんの成長速度には驚かされるばかりですな。)

(当り前じゃ。美姫は樹とは違うのじゃよ、樹とは。)

(エレナ様、1日に2回も同じ台詞を言わなくてもいいのではなかろうかと。)

(そうですよ。樹だって成長してるんですから。)

(それは否定せんが、美姫に比べると樹など止まっているように見えるからのう。)


(私ばかり訓練してゴメンね。今日はもう十分だから、残りは樹の訓練時間にして。)

(了解。僕も美姫に早く追いつけるように頑張るよ。)

(では、少し休憩したら攻守交替ですな。)



 休憩後に魔法の腕輪を交換して訓練再開。


 パシッ! パシッ! パシッ! パシッ! パシッ! パシッ!


(美姫の魔導盾を一つも砕けんとは、樹の魔導弾は威力が弱いのう。)

(僕はあまり”銃剣系”魔法の鍛錬をしてこなかったんですから当然です。)

(そうです。私も”楯系”魔法の発動がこんなに面倒だったことを改めて思い知っているくらいですから。)

(魔導盾の発動に必要な命令数は魔導弾よりも多いですからな。)

(それに、向かってくる魔導弾を逃げずに防ごうとすると結構勇気がいりますよ。)

(何じゃ、3人してワレを悪者にしおって。)

(それはエレナ様が樹の悪口ばかり言うからです。もっと褒めてあげて下さい。)

(余儀ないのう。)


 気を取り直して訓練を続ける。


 パシッ! パシッ! パシッ! パシッ! パシッ! パシッ!

 

(美姫の魔導盾が堅い。)

(樹君がそう思うのは狙いを着けずに魔導弾を撃っているからなのですな。ワシが見るに、美姫さんは”楯系”魔法の発動に慣れていないため、魔導盾には濃淡があるのですな。)

(つまり、魔導盾の薄い部分を狙え、ということですか。)

(そのとおりですな。この訓練では美姫さんからの攻撃はないのですから、限定思考で魔導盾に集中すればそこが見えてくるはずなのですな。)

(了解です。やってみます。)


 限定思考を使うと周りの景色が消え、魔導盾の詳細が見えてきた。


 パシッ! パシッ! パシッ! パシッ! パシッ! ピシッ!


(よしっ、美姫の魔導盾にヒビを入れられた。)

(樹君、その意気ですな。)


 パシッ! ピシッ! パシッ! パシッ! パシッ! パリンッ!


(やった!)

(ついに樹に魔導盾を砕かれてしまったのじゃ。美姫、手加減したのではあるまいのう?)

(いえ、私も徐々に魔導盾の発動に慣れてきていたので強度も増していたはずですから、純粋に樹の技量が私を上回ったためだと思います。)

(樹君も狙いが段々正確になっていきましたからな。)

(グレンさんのおかげです。ありがとうございます。)


(・・・浮かれているようじゃが、樹、これが思考並列の訓練だということを忘れておらんかのう?)

(しまった、そうだった。。。)

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