06
翌日、当分の食料を買い込んだ僕たちは、穴倉の隠れ家に向かった。
(エレナ様、美姫、お帰りなのー。)
(出迎えご苦労なのじゃ。)
(ミーちゃん、ただいま。)
妖精のミーちゃんが近づいてきて、
「ぐはぁっ!」
何もない空間から突然発生した雷にうたれた。
・・・・
「う、うっ。」
「樹君、大丈夫。」
「何とか。」
(ミーちゃん、樹は敵じゃないよ。もしかして樹のこと忘れてしまったわけじゃないよね?)
(その人間のことはちゃんと憶えてるのー。)
(じゃぁ、どうしていきなり雷撃を浴びせたりしたの?)
(あたしも美姫たちの特訓に参加するのー。不意打ちしたのも特訓の一環なのー。このくらい避けられないなんて、樹はまだダメダメなのー。)
(そうじゃのう。樹は鍛錬が足らんのじゃ。)
(ミーちゃんもエレナ様も、樹のことをもっと労わって下さい。それに、ミーちゃん。特訓はまだ始まってないの。不意打ちしたこと樹に謝って。)
(そうなのー?ごめんなさいなのー。)
妖精だからか反省の色が全くない謝罪を受けた。
「とりあえず、中に入りましょう。」
「賛成。」
中に入って荷物を置く。
(これからすぐに特訓を始めるのー?)
(特訓はお昼ご飯を食べてからかな。それにしても、ミーちゃん、張り切ってるね。)
(樹にバシバシ雷撃を当てるのー。)
(いや、もう勘弁して下さい。)
(そうじゃのう。美姫と樹はやらねばならぬ訓練があるから、ミーとの訓練はまだ先じゃ。)
(残念なのー。)
(そうだ!お昼まで時間があるし、父の隠し部屋を調べてみない?父が巻き込まれた事件について何か分かるかもしれない。)
(了解。この前来た時には美姫のお父さんが見つかる前だったから、そのことについては調べてなかったし。)
(じゃぁ、早速行きましょう。)
美姫さんのお父さんの部屋に入り、魔力を流して本棚を移動させる。
(やっぱり壁の中に埋め込まれたサーバの基板がいい目くらましになってる。そう言えば、美姫さんのお父さんは、ディスクの中に手がかりは残してなかったのかな?)
(あの時はそこまで気が回っていなかったから、今度貴文さんの研究室に行って調べさせてもらうことにするよ。)
(樹も偶にはいいこと言うのー。)
(ミー、違うのじゃ。稀に、じゃ。)
2人の言葉は無視して、穴に備え付けてある梯子を下りる。
(しかし、この穴の存在をミーが知らなんだとは、不思議じゃのう。)
(そうなのー。あたしに見つからないようにするなんて、人間には不可能なはずなのー。)
(この先の部屋にいた悪魔が手助けしてたんでしょうか?)
(そう考えるのが自然じゃが、捕らえられていた悪魔が人間に手を貸す理由が分からんのう。)
(確かに、そうですね。父が悪魔を隠していた理由も不明ですし。)
穴を降りきった後、扉を開けて中に入る。
(改めて見ても何もなさそうな部屋だ。)
(この部屋にも隠し棚とかあるかもしれないから、徹底的に探しましょう。)
(了解。)
(美姫よ、気を付けるのじゃ。また発火装置のような仕掛けがあるかもしれんしのう。)
(分かりました。)
美姫と手分けして部屋の中を調査する。
(何も見つからないですね。グレンさんは何か分かりませんでしたか?)
(ワシも今のところはこれといって不自然なところは見当たりませんでしたな。)
(上の部屋と違って、魔力によって動作する仕掛けはないんでしょうか?)
(壁に描かれている精神エネルギーが漏れ出さないように結界を張るための模様が影響して、魔力によって動作するようなものは使えないのかもしれませんな。)
(成程。上の部屋では魔力によって動作する仕掛けばかりだったので、ここでもそうだろうと思い込まされてしまってたのかもしれません。)
(そう仕向けていたとすれば、念の入ったことですな。)
しばらく調査したが何も見つからなかった。
(樹、何か見つかった?)
(全然。美姫は?)
(私も。)
(ここには何もないのかも。)
(そうなると、父のノートを全部燃やしてしまったのが悔やまれるよ。あそこに手がかりがあったかもしれないのに。)
(過ぎてしまったことを悔やんでも仕方ないじゃろう。)
(そうですけど、、、)
(念のため、上の部屋ももう一度調べてみる?)
(そうしましょう。本に偽装した資料があるかもしれないし、本の中に紙が挟んであるかもしれないしね。)
上の部屋に戻って、本棚の本を隈なく調べてみたが、結局何も見つからなかった。




