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純一先生による補講がなくなった放課後、寮でエレナ様から竜族と魔族に関する話を聞くことになった。
(それでは、この世界の成り立ちから話を始めようかのう。)
(お願いします。)
(まず最初に、創造神様はこの世界を構築するための助手として、自らの力の1/256を使って第一神ウラナス様をお創りになられたのじゃ。第一神ウラナス様は、世界の構築が完了した暁には創造神様の名代となる役割も担うことができるよう、創造神様と同じような能力を保有されているのじゃ。
次に、創造神様は第一神ウラナス様と共同で第二神エノス様をお創りになられたのじゃ。第二神エノス様は第一神ウラナス様の補佐となる役割を担うため、第一神ウラナス様の力の一部を使って創られたのじゃ。)
(ちょっと待って下さい。)
(なんじゃ?)
(いきなり、『創造神様が第一神ウラナス様をお創りになられた』と言われても信じられないのですが。そもそも、創造神様なんているのでしょうか?)
(貴様、エレナ様の言うことが信じられないのか!)
ザグレドがいきなり割り込んできた。
(樹のちっぽけな脳みそで理解できないというのも分からなくもないがのう。)
(そうですね。www)
(樹がエレナ様の存在を認めたように、エレナ様の言う創造神様も一先ずは信じるしかないんじゃない?)
(エレナ様の場合は、こうやって美姫と心の中で会話できたりすることで、存在を認めざるを得なくなったけど、創造神様と言われてもピンとこないんだ。)
(だったら、エレナ様の話を聞いてから、判断してもいいんじゃないかな?)
(それもそうか。)
(エレナ様、そもそも創造神様はどのようにしてお生まれになられたのでしょうか?)
(ワレも疑問に思ったから創造神様にお会いした時に聞いてみたことがあるのじゃが、前の創造神様が創られた世界でお生まれになられたそうじゃ。そして、横暴であった前の創造神様を倒して世界を再構築する力を手に入れた、と仰られていたのじゃ。)
(それでは、前の創造神様はどうなのでしょうか?)
(そこまではご存じないそうじゃった。創造神様も全知全能というわけではないようじゃからのう。しかし、前の創造神様も、前の前の創造神様が創られた世界でお生まれになられた、というのは想像に難くないじゃろう。)
(結局、起源は分からない、ということですか?)
(そうじゃ。)
(それと、創造神様は自らを世界のバグのようなもの、と仰られていたのう。)
(創造神様が世界のバグのようなもの、と聞いたら卒倒する人が出るでしょうね。)
(そうじゃのう。ワレもそれを聞いた時には驚いて意味が分からんかったのじゃが、後で理由を聞いて納得したのじゃ。以前、固有設定値の話をしたことがあったじゃろう。)
(はい。)
(この世界の全ての存在は固有設定値を持っておって、固有設定値の数と値には階級によって上限があるのじゃが、まれにその上限が外れて生まれる存在がおるらしいのじゃ。今の創造神様はそういった存在で、全ての固有設定値の上限が外れて最大値に張り付いていたから、自らを世界のバグのようなもの、と仰られたそうじゃ。)
(そんな存在は、確かにバグですね。)
(だとすると、今の創造神様を倒す存在は永遠に現れませんよね。全ての固有設定値が最大値に張り付いている最強の存在には誰も勝てないでしょうから。)
(そんなことはないのじゃ。)
(一撃でやられてしまう急所があるとか?)
(いや、創造神様を倒す、などという不敬な言葉は聞かなかったことにするとして、創造神様の固有設定値が最大値に張り付いておっても現有能力値はそうではないのじゃ。)
(そうなんですか?)
(創造神様が下位者を創られる際には自らの力の一部を使って産み出されるから、現有能力値も減少するそうなのじゃ。つまり、ワレらは全員が創造神様の分体といっても過言ではなく、創造神様が他の存在を創れば創るほど、自らは弱っていくということじゃ。)
(どうして創造神は自らの力を削ってまで、他者を創ろうとしたのでしょうか?)
(そこまではワレにも分からんのじゃ。ただ、創造神様から創られたワレらが生き生きとしているのを見るのは楽しいと仰られていたのじゃ。)
(ちなみに、創造神様の名前は何と言うのでしょうか?)
(ワレらはただ創造神様としか呼んでおらんから、知らんのじゃ。四竜神様なら知っておるかもしれんがのう。)
(四竜神様ということは、第一神ウラナス様、第二神エノス様以外にも竜神様がいるということですか?)
(そうじゃ。創造神様は第一神ウラナス様、第二神エノス様と共同で第三神チタン様、第四神ゼノス様をお創りになられたのじゃ。第三神チタン様は、世界が画一的にならないよう、第一神ウラナス様、第二神エノス様とは全く違う思想のもとに創られ、第四神ゼノス様は両者の中間的な存在として創られたそうじゃ。)
(四竜神様のことを、単に”神”ではなく”竜神”と呼ぶことに意味があるのですか?)
(ワレら竜族をお創りになられた神様なので、竜神様なのじゃ。)
(どうして――――)
(『どうしてワレらのことを竜族と呼ぶのか?』じゃろう。それは創造神様のお姿が竜、お主たちの知っておる存在ではドラゴンに近いお姿だからじゃ。とは言っても、ワレらは精神エネルギー生命体じゃから概念上の姿が、という意味じゃがのう。)
(創造神様はドラゴンだったんですか?)
(創造神様の本当のお姿がどのようなものかは知らんが、ワレらの前に現れるときには竜の姿じゃった。)




