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竜の女王  作者: M.D
2171年春
229/688

25

 魔力枯渇に陥った後のことについて今更ながら、美姫に聞いた。


(僕が意識を失った後、どうなったんだっけ?)

(あの後ちょっとしてから本当の救援部隊が来たのよ。でも、偽物に襲われた後だったから皆身構えてしまって、ひと悶着あったの。)

(それだと、征爾さんは助からなかったのか?)

(征爾さんは大丈夫よ。救援部隊が万が一に備えて一緒に治療魔法を使える外級魔法使いを連れてきていたから、征爾さんの容態を優先して応急処置を始められたの。救援部隊が本物だと確認が取れるころには応急処置も終わっていて、麗華さんの指示で征爾さんは一足早く魔法使いに病院まで運ばれて行ったのよ。)

(良かった。)


(その後は、襲ってきた3人組を拘束して連れて行かないといけないし、私たちも救援が来たことで安心したら気が抜けて動けなくなったから、増援が来るまで待ってたの。)

(結局、あの3人組は何者だったんだろう?)

(救援部隊の隊長だった久子中尉が3人の身体検査をしたんだけど、身分を現す物は何も身に着けてなかったみたいね。)

(奴らも馬鹿じゃなかった、ということか。)


(そういうこと。でも、1つ分かったのは、3人組の1人は魔人だった、ってことね。)

(ん?魔人って瞳が赤いんじゃなかったっけ?3人の中に赤い瞳を持った人なんかいたかな?)

(黒いカラーコンタクトをしていたのよ。)

(成程。それだと見分けがつかないな。というか、そんな簡単な方法があるなんて、何故気が付かなかったんだろう。。。)

(だぶん、それは樹だけだと思うよ。)


(樹君は洞察力が足りませんな。)

(すみません。)

(エレナ様、2人に魔力を測る方法を教えれば、相手の本質を見間違うことが少なくなると思うのですが、如何でしょうか?)

(よかろう。特訓の項目に付け加えておくとしようかのう。)

(ありがとうございます。)


(グレンさん、気を使って頂いてありがとうございます。)

(いずれ学ばなければならないことですが、美姫さんと樹君は今回のような困難に直面することが多くなるでしょうから、早めに身に着けておいて越したことはない、と思ったのですな。)

(樹は巻き込まれ体質じゃからのう。)

(どこの誰のせいですか!)


 いつものが始まったな、と思って、美姫は話を続けた。


(増援部隊が来る頃には亜紀様のところにも連絡が入っていたそうで、私と樹はこの病院に運ばれたの。)

(他の人たちはどこに?)

(そこまでは分からないけど、麗華さんと好美さんには六条家指定の病院があると思うし、諒太さんと慎太郎さんはたぶん国防軍病院じゃないかな?)

(適度にバラけた方が丁寧に治療してもらえるだろうから、結果として良かったかもしれないな。)

(そうかもね。私は病院に運ばれている途中で寝てしまって、起きて少ししたら亜紀様がいらしたの。)

(そういうことだったのか。)


(グレンとザグレドは樹の精神エネルギーを極力使わぬよう、樹が起きるまで停止状態で待機しておったのじゃから、感謝しておくのじゃ。)

(ありがとうございました。)

(いえ、当然のことをしたまでですな。ザグレドがバイロ―を怒らせなければ、こんなことにならなかったかもしれないので、樹君の魔力を失わせたのはワシらに原因がある、とも言えなくもないですからな。)

(ほんと、すまなかった。)


 怒った黒い狼魔獣の姿は記憶に残っている。


(バイロ―はあの後、どうしたの?)

(征爾さんに魔導力を放った後、救援部隊に見つからないよう、すぐに東京シールド外縁を離れてもらったの。だから、待たせるとお腹を空かせて可哀そうだから、明日迎えに行ってあげようと思っているの。)

(魔獣って、野生の獣と同じように1週間くらい何も食べなくても生きていけるんじゃなかったっけ?)

(生きてはいけるけど、お腹は空くと思うよ。それに、左前足を元に戻すためには、たんぱく質とか材料が必要だから、普段よりも空腹感をおぼえるんじゃないかな?)

(それなら早く迎えに行った方がいいと思うけど、美姫はバイロ―の居場所は知ってるんだっけ?)

(ううん、知らない。でも、ワンちゃんは『精神エネルギーの残滓を追跡することができる』って言ってたんでしょ。私たちが来ればすぐに気が付くと思うよ。)

(バイロ―に見つけてもらう、ということか。)

(そういうこと。)


 ふと、恭介少尉のことを思い出した。


(実習に同行した恭介少尉の小隊はどうなったんだろう?)

(それは私にも分からない。)

(生きているといいな。)

(それはないでしょうな。恭介少尉は責任を負わせるために少尉に昇格させられたようなものですから、計画が失敗したとなれば尚更生かしてはおかないでしょうな。)


(私たちにもっと力があれば恭介少尉も救えたのかもしれないね。)

(同意。僕も今回のことで力不足を感じた。)

(美姫さん、樹君。人間1人が手の届く範囲など限られているのですから、どんな超人であっても全ての人を救うことはできないのですな。)

(それでも、知っている人を救えないのは辛いです。)

(同感。)

(であれば、地道に手の届く範囲を広げていくしかないのですな。そのお手伝いはさせてもらうつもりでいますので、遠慮なく頼って下さい。)

(ワレも手を貸そうかのう。)

((ありがとうございます!))


(2人の心意気に応えるためには、準備していた特訓の項目を練り直さんといかんのう。)

(そうですな。まだ限界手前に留めてあって、余力はありますからな。)

(特訓が楽しみじゃのう。)

(そうですな。)


 エレナ様とグレンさんが悪い笑顔になっている絵が思い浮かんだ。

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