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竜の女王  作者: M.D
2171年春
223/688

19

「美姫、どういうこと?」


 諒太さんたちにも分かるように質問を口に出した。


「たぶん、私の魔導弾に恐怖を懐いたことによって、黒い狼魔獣の狼としての本能が私を上位者として認めたのよ。」

「そんなことは――――」

「伏せ!」(伏せ!)


 反論のために立ち上がろうとした黒い狼魔獣に、美姫が再度命令する。


「ガゥ。」(何故だ!?)


(貴様、エレナ様が美姫さんの言葉に支配格をのせていたのに気づかなかったのか?)

(エレナ様、支配格、だと?)


(そう言えば、美姫の言葉はいつもより力強かった気がする。)

(それはエレナ様が美姫さんの言葉に精神エネルギーを含ませ、その上に支配格をのせていたからだ。)

(支配格?)

(上下関係が確立した後、下位者に対して上位者が命令するときに使用される令格のことだ。バイロ―の中の狼としての本能が美姫さんを上位者と認めたため、エレナ様の支配格をのせた美姫さんの命令に従うようになったんだ。)


(黒い狼魔獣相手に頑張ったご褒美として、エレナ様が手助けして下さったのよ。)

(ワレらの補助があったといえ、美姫も樹もよく耐えたからのう。それに、もう限界じゃろう?)

(確かに、もう魔力切れ寸前ですね。)


(その者の中からエレナ様の精神エネルギーの波動を感じる、、、ということは、まさか、本当に、、、)

 

 黒い狼魔獣は僕たちの方を見つめながら言った。


(だから、エレナ様もいらっしゃる、と言っているだろうが。)

(信じられんかもしれんが、現実じゃ。)

(ははー、申し訳ございませんでした!)


 伏せの状態なので、黒い狼魔獣が平伏して頭を下げても見た目はあまり変わらなかった。


(ようやく分かったか。)

(エレナ様も精神エネルギーを隠していたのだから、分からなくても仕方なくないか?)

(しかし、それは最初だけで、戦闘中は隠していなかったぞ。)

(ザグレド、お主も同じようは状況でワレの精神エネルギーの波動に気付かんかったのじゃから、威張れんじゃろう。)

(あの時は気付くことができず申し訳ありませんでした。)


(バイロ―だったか?俺たちの方の紹介をしておくと、エレナ様、美姫さん、樹、グレンだ。エレナ様は美姫さんに、俺とグレンは樹に居候している。)

(皆様、よろしくお願いします。)


(それで、お主は何故狼魔獣などと融合しているのじゃ?)

(お恥ずかしい話ですが、壁の中に入った後に人間から集中砲火を受けて、弱っているところを人間の研究者に捕らえられてしまったのです。)

(お主もピアリスと同じようじゃのう。)

(ザグレド以外にも魔族を従えておられたのですか?)

(そうだ、エレナ様であるからこそ、地球上においても魔族を従えられるのだ。流石は俺たちのエレナ様。先の第9次聖魔大戦においても――――)


 突然エレナ様を褒め称えだしたザグレドに、黒い狼魔獣と融合した魔族は驚いたようだった。


(奴のことは無視して続けるのじゃ。)

(はっ。捕らえられた後、最初は実験として王健民ワンケンミンという他国の人間と融合させられました。王はそれなりに精神エネルギーが多く、体が丈夫だったこともあり、95歳まで生きましたが、その間、ずっと施設の中でデータを取られてばかりでした。)

(貴様が最初に融合した人間は王健民というのか?)


 珍しくエレナ様の称賛を短く終えたザグレドが聞いた。


(そうだ。知っているのか?)

(いや、知らない。そうか、王健民か。それじゃ、これから貴様のあだ名はワンちゃんだな。)

(お前、何を言い出すんだ!我輩のことを侮辱しているのか!?)

(ぷっ、良いではないか。これからバイロ―のことはワンちゃんと呼ぶことにしようかのう。)

(エレナ様、今、笑いましたよね。酷いです。。。)


(ワンちゃん (笑)の呼び方については後から決めるとして、続きを話すのじゃ。)

(ぐっ、分かりました。王が死にそうになると、次は魔獣と融合させられたのです。我輩も抵抗したのですが、その頃には人間が魔族を拘束する技術も発達しており、消滅しないためには従わざるを得ませんでした。)


(魔族を獣と融合させるなんて、人間にも酷いことをする奴がいるもんだ。)

(ザグレドの言うとおりだが、そういう狂人のような人間がいなければ魔法技術が発達することもなく、悪魔に蹂躙されて人類はもっと数を減らしていただろうな。)

(グレンのように人間側から見るとそうかもしれんが、魔族側からは受け入れらない考え方だ。)

(敵対する者同士の利益が一致することなどまずないのだから、受け入れられないのも当然だな。)


 利益は限られているのだから、全員が利益を得られるなどそうそうない。


(それから、この狼魔獣と融合したままずっと研究施設の中でデータを取られつづけ、今日ようやく施設を出られた、という訳です。)

(魔獣の寿命ってそんなに長いんですか?)

(いえ、こいつは特別です。研究施設で産み出された魔獣で、10年おきに特別な薬を注射することで、半永久的に生きてられるらしいです。テロメアがどうとか言っていました。)


(それで、研究施設では何と呼ばれていたんだ、ワンちゃん?)

(ザグレド、お前、殺すぞ!)

(何と呼ばれていたのじゃ?)

(127番目の実験体なので、127号と呼ばれていました。)

(おぉ、オール1だから、ワンちゃん、ということですな。)

(127がオール1ってどういうことですか?)

(”127”は2進数だと”1111111”なのですな。だから、オール1なのですな。)

(ちなみに2進数は”0”と”1”だけで数を数える方法よ。)

(美姫、そのくらい知ってる。僕は、ワンハンドレッドトゥエニィフセブンで、ワンちゃん、ということだと思いましたが、どちらにしてもワンちゃんで確定ですね。)

(樹とやらも殺す!)

(珍しく樹もいいことを言ったのじゃから、それは止めておいてやるのじゃ。)

(ぐっ、エレナ様がそう言われるのであれば、今は殺さないでおきますが、次はありません。そのかわり、樹とやらには我輩のことをバイロ―と呼ぶことを許す。)

(了解。)

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