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(そう考えると、麗華さんも魔法使いという檻の中に囚われた可哀そうな人なのかもしれないね。)
(同感。)
(何とかしてあげられないかな?)
(うーん、麗華さんが魔法使いをやめられないとすると、征爾さんを魔法使いにするしか方法はないんだけど、、、)
(それよ!エレナ様、樹を魔法使いにしたように、征爾さんの魔法能力を回復させることはできないでしょうか?)
(ちょっと待つのじゃ・・・・そうじゃのう、、、固有設定値の一部を修正すれば可能なようじゃ。いじる箇所は少しじゃから、1日程度は昏睡するじゃろうが危険もなさそうじゃ。)
(良かった。征爾さんが望むのであれば、修正をお願いしても良いでしょうか?)
(美姫がどうしてもというのであれば、やってやらんこともないのじゃ。)
(ありがとうございます。)
(じゃが、樹に貸し1つじゃぞ。)
(どうして僕になんですか?)
(樹の発言が発端だからじゃ。)
(はぁ、、、分かりました。僕の扱いはいつになったら改善されるんだろうか。。。)
(ごめんね。)
(でも、征爾さんを魔法使いにするとしても、突然だと怪しまれるから理由を考えておかないといけないな。)
(私も考えておくから、樹もお願い。)
(了解。)
グゴーーー!
パシッ!
追いかけてきた黒い狼魔獣から放たれた魔導力を、立ち止まって魔導楯で受け流した。
「東京シールド外縁まで、まだ1/3もあるというのにもう追いつかれたのか。全員戦闘配置!」
「「はい。」」
諒太さんの指示で黒い狼魔獣を待ち構える。
「ここまで逃げられたら、もう遊んでいる暇はなさそうだ。我輩が直接相手をしよう。」
黒い狼魔獣が姿を現した。
(ザグレド!奴が直接手を出してくるとなると、美姫と樹では勝ち目はないから、ワレらも補助を行うのじゃ。)
(イエッサー!)
グルアァァ!
襲い掛かってくる黒い狼魔獣を魔導楯で受け止める。
バシュッ!
僕が反応できなかった場合、美姫が魔導弾を撃って牽制する。
(速い!)
(エレナ様とザグレドさんが知覚の補助をしてくれるのは助かるけど、体が上手く反応できないね。)
(同感。ついていけるように、もっと鍛錬しないと。)
グゴーーー!
グルアァァ!
黒い狼魔獣の速度がさらに上がり、姿が消えた。
バシッ!
(フェイントか!)
(魔導力を放った後で左に行く姿を見せてから魔導力の光の中に隠れたね。引っ掛からなくて良かった。)
(グレンさんが予想してくれていなかったら、今頃あの爪の餌食になってるところだった。)
(樹君、また来ますぞ。)
グルアァァ!
グゴーーー!
黒い狼魔獣は突撃と魔導力による砲撃を巧みに織り交ぜてくる。
(エレナ様、このままではジリ貧です。)
(美姫、今は奴が優勢じゃが、いつまでも続かん。勢いが緩むときは必ず来るのじゃから、耐えて待つのじゃ。)
(分かりました。)
(しかし、奴も魔族じゃ。勢いが緩むと言ってもそれは一瞬じゃろう。ワレが指示するから逃すでないのじゃ。奴の魔法防壁はワレが無効化するから、美姫は思いっきり魔導弾を放てばよいのじゃ。)
(はい。)
・・・・
グゴーーー!
グルアァァ!
「はぁはぁはぁ。」
何十回もの攻撃をエレナ様、グレンさん、ザグレドの補助を受けて切り抜けてきたが、遂にその時はきた。
グルアァァ!
バシッ!
グレンさんの予想が的中し、一瞬早く発動させた魔導盾に当たって黒い狼魔獣の体勢が僅かに崩れる。
(今じゃ!)
(はい。)
バシュッーー!
キャンッ!
円錐状の魔導弾が、黒い狼魔獣の魔法防壁を突き抜けて、左前足を吹き飛ばした。
グルルルルゥ
しかし、左前足を失ってなお、黒い狼魔獣は飛びかかろうという姿勢を見せている。
「待て!」(待て!)
えっ!?
全員が美姫の声を聴いて、何を言っているのか分からない、という顔をした。その中にはもちろん黒い狼魔獣も含まれている。
「待て!」(待て!)
ビクッ!
美姫の声に黒い狼魔獣が反応する。
「お座り!」(お座り!)
美姫の言葉どおり黒い狼魔獣がお座りをする。
「伏せ!」(伏せ!)
美姫の言葉どおり黒い狼魔獣が伏せた。
「ふぅ、もうこれで安心かな。」
えっ!?
またしても、全員が美姫の声を聴いて、何を言っているのか分からない、という顔をしたのだった。




