07
授業が始まって数日、放課後になって寮に帰ろうと教室を出ようとした時、
「あなたが、森林樹君ね。」
「?」
声をかけけてきた生徒に見覚えはあるが誰か分からず戸惑っていると、
「生徒会長の高科百合子さんだよ。」
聡がの名前を教えてくれた。
「百合子さん自らが樹を呼びに来た?」
「樹君が何かやらかしたのかしら?」
突然のことに周りが騒がしくなる。
「はい、そうですが。何か御用でしょうか?」
「突然で申し訳ないけど、生徒会室まで来てくれるかしら。」
「え?いや、その、、、理由を聞いてもいいですか?」
「ごめん、ごめん。驚かしてしまったわね。樹君に問題があるわけじゃないの。東大附属高校に編入してきて近況はどうかな?と思って、生徒会室でちょっとお話がしたいだけ。」
「そういう事であれば。」
「それなら、私も一緒に行ってもいいでしょうか?」
美姫さんが少し強い口調で割り込んできた。
「龍野美姫さんね。えぇ、いいわよ。美姫さんにも声をかけようと思っていたから。」
「そういう割には樹君と2人で行こうとしていませんでしたか?」
「美姫さんと樹君は同じ編入生といえど立場が違うから、美姫さんは別の日に来て頂こうと思っていたの。」
「そうですか。理由は分かりました。でも、私も一緒の方が生徒会長殿の手間を省けていいと思います。」
「美姫さんがそれでいいのあれば私は構わないわ。では、一緒に行きましょうか。」
「はい。」
「なんか変な騒ぎになったな。」
「同感。」
「でも、百合子さんと美姫さんの2人と一緒なんて両手に花でうらやましい。」
「そう言うんだったら変わってくれ。」
「それは勘弁。」
聡と言葉を交わした後、教室を出て生徒会長についていく。
(何の話をするんだろう?)
(何だろうね。でも、話をするにしても、生徒会長が自ら私達を呼びに来る必要はなかったんじゃないかな。)
(同意。日時を指定してくれれば、こちらから出向いたのに。生徒会長と歩いているから、なんか皆から見られているし。)
生徒会室に着くまで好機の目で見られて居心地が悪かった。
「ここよ。」
生徒会室と書かれた扉を開けて中に入る。
「2人はそこに座って。」
「「はい。」」
指定された席に座ると、生徒会長は僕の対面に座った。
「改めて自己紹介するわね。生徒会長の高科百合子です。魔法系統は”大砲系”で、魔法使いの家系出身ではない、というところは樹君と同じね。美姫さんと樹君については承知しているから、自己紹介はいいわよ。」
「生徒会長がしたかったお話って何でしょうか?」
美姫さんが話をせかす。
「美姫さんはこれから急ぎの用事でもあるのかしら?だったら、別の日でもいいわよ。」
「いえ、そんなことはありません。」
「そう。今日来てもらったのは、2人は高校から魔法科への編入者だから生徒会としても2人ができるだけ早く東大附属高校になじめるようにお手伝いをすることになって、その第一歩として近況を聞きたかったからなの。」
「生徒会の他の役員の方はおられないんですか?」
「樹君に来てもらうの予定だった日は都合が悪くなって、急遽日にちを変えたから今日は私だけ。生徒会の他の役員については後日紹介するわ。」
「分かりました。」
(それで生徒会長自ら呼びに来たのか。)
(でも、今日は樹君だけと話をしようとしてたし、生徒会長は何か企んでるのかもしれないよ。)
(美姫さんは疑いすぎじゃないかな。)
「生徒会長殿はどのようなことを私たちから聞きたいのでしょうか?」
「そうね、何から聞きましょうか、、、東大附属高校に編入してそんなに日がないけど、困っていることとかない?」
「ありません。」
美姫さんは即答である。
「うーん、、、僕もまだ今の環境に慣れていないから、特に困っていると感じることはないです。」
「そう。何かあったら気軽に相談にきてね。」
「授業にはついていけている?」
「純一先生に補講をして頂いたおかげで、授業についてはなんとかついていけそうですので、ご心配なく。」
「良かったわ。美姫さんは中学に通ってなかったって聞いているから、いきなり高校の授業は難しいじゃないかと思っていたんだけれど、純一先生が補講をしてくれているんだったら大丈夫ね。」
「樹君は?」
「まだ始まったばかりで何とも言えませんが、普通の科目については授業内容が特別進んでいるわけでもなさそうなので、ついていけるとは思います。」
「そう。魔法についてはどう?」
「美姫さんと一緒に純一先生の補講を受けさせてもらっているので、魔法の座学については何とかなりそうな気もするのですが、魔法実技については上手くいきません。」
「そうなのね。美姫さんは龍野家分家筋だから魔法に関しては何も心配していないけれど、樹君は魔法使いの家系出身じゃないから、魔法実技について私も心配していたのよ。高校からは系統別授業も始まるし。美姫さんと一緒に純一先生の補講を受けられているのなら、分からないところはその時に教えてもらえばいいし、私に聞いてくれてもいいわよ。」
「いえ、樹君には私が教えますので、生徒会長殿のお手を煩わせるようなことはないと思います。」
「そう?でも、美姫さんにも分からないことがあれば、遠慮なく聞いてね。」
生徒会長は美姫さんの発言に対して微笑みながら言った。