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竜の女王  作者: M.D
2171年春
218/688

14

 麗華さんのところへ到着すると、当然の如く全員そろっていた。


「樹、遅かったな。迷ったのか?」

「いえ、魔獣に襲われてました。」

「はぁ?・・・無事なところを見ると、撃退できたのか?」

「何とか。」

「そうか。よく撃退できたな?」

「襲ってきたのは通常の狼の魔獣ようだったので、待機小屋で襲われた黒い狼魔獣とは違うのかもしれません。」

「別の魔獣もいるのか。厄介だな。」


「他の皆さんは大丈夫だったんですか?」

「樹のように魔獣に襲われた者はいなかったが、麗華さんが足を挫いてしまったらしい。征爾が背負って逃げてきたそうだ。」

「それで、結構手前まで戻らないといけなかったんですね。」

「あぁ、かなり時間を無駄にしたな。」

「うるさいわね。いちいち言わなくてもそんなこと分かってるわよ。」


「これからどうしますか?」

「そうだな、、、 東京シールド外縁を目指して元来た道を身体強化をして駆け抜ける、という方針には変わりない。征爾は俺が、麗華さんは好美が背負って行くことにする。」

「分かったわ。麗華様、しばらくご辛抱下さい。」

「諒太、東京シールド外縁を目指すというけれど、方角は分かるの?」

「・・・。」

「高架道路の薄明かりを右手に見ながら走れば東京シールド外縁に辿り着けるはずです。」

「そうだ、元来た道を戻るんだから、美姫さんの言うとおりにすればいい。」

「ふんっ。美姫の言うとおりにするのは癪だけど――――」


 グゴーーー!


(樹君!)

(了解!)


 ピシッ!


 グレンさんの言葉を受けて発動した魔導盾にヒビが入りはしたが、飛んできた魔導力を防ぎきった。


「今のを受けきるとは、遊びがいがあるな。わざわざ待っていて良かったというものだ。」


 魔導力が放たれた方向から黒い狼魔獣が現れた。


「ま、魔獣がしゃべった!?」

「声帯模写は悪魔の基本技能の一つだから、我輩が人間の言葉を発することができてもおかしくないだろう?」

「!?」

「まさか、、、悪魔入りの魔獣だったのか、、、」


 黒い狼魔獣の言葉を聞いて、皆、唖然としている。


(僕の魔力を追ってきた?そのせいで皆を巻き込んでしまった?)

(魔獣の話を聞いた後からザグレドが結界を張っていましたので、樹君の魔力を追ってきたのではないでしょうな。)

(それじゃ、どうしてここが分かったんでしょうか?)

(待機小屋の前で魔導刃と魔導砲を放った学生のどちらかの魔力を追ってきたと考えるのが妥当でしょうな。)

(そのときに慎太郎さんと好美さんの魔力を憶えたのですね。)

(そうでしょうな。)


「私たち、もう終わりね。」

「そんなこと言ってないで、今は生き延びることを最優先に考えましょう。」

「生き延びるといってもなぁ、、、俺たちが束になってかかっても、悪魔入りの魔獣に対して勝ち目があるとは思えん。」

「諦めたらそこで終わりです。方法を考えましょう。」

「・・・。」

「諒太さん!」

「分かった。死ぬ前にやれるだけのことはやろう。」



「話し合いは終わったのか?では、もう少し遊ぶとしよう。」


 今度は暗闇から4匹の狼魔獣がスッと姿を現した。


 グアアァァ!!


「樹!」

「了解。」


 諒太さんと2人で魔導盾を発動し、襲い掛かる4匹の狼魔獣から皆を守る。


 バンッ!

 キャンッ!


 美姫が魔導弾で狙い撃つが、撃たれた狼魔獣は消え、新しい狼魔獣が現れる。


(あの魔獣は仮初の魂の器でできているから、倒しても無駄みたいね。)

(やっぱり本体を叩かないと何ともならないか。でも、戦力的には厳しい。)


 麗華さん、慎太郎さん、好美さんの3人も奮闘はしているが、狼魔獣を倒すまでには至っていない。



「人間が必死に戦う姿を見るのは楽しいものだ。だが、もっと楽しませてくれ。」


 狼魔獣が7匹に増える。


「マジか、、、」

「くっ、7匹はさすがに防ぎきれない!」


 数が増えたため、僕と諒太さんの魔導盾による防御網をすり抜けてくる狼魔獣が出始め、美姫もその対処に翻弄されている。


「どうして当たらないのよ!」

「麗華さん、魔導砲は小さい的を狙うのには不向きです。黒い狼魔獣に向けて撃って下さい。」

「分かったわ。好美やるわよ。」

「はい。」


 美姫の言葉に素直に従い、麗華さんと好美さんは隙を見て黒い狼魔獣に向けて魔導砲を放つが、


 グゴーー!グゴーー!

 パシーッ!パシーッ!


 黒い狼魔獣の魔法防壁を破るまでには至らなかった。

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