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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
21/688

06

「次は、聡君だな。」

「よっしゃー!」


「聡君、張り切ってるね。」

「今まで補助具が使えなくて自分の本当の力が出せなかったらしい。高校からは補助具が使えるようになったから、巻き返そうと張り切っているんだと。」

「そうなんだ。」

「でも、魔導剣でどうやって弾を迎撃するんだろう?」

「やっぱり、切るんじゃない。」


「準備はいいか?」

「はい。」

「では、始め!」


 ブゥン!ブゥン!


 予想どおり、天井に設置された砲台から発射された弾をギリギリまで引き付けて魔導剣で切っていく。


「音はラ〇トセイバーか。聡もほとんど対応できてるし、すごいな。」

「動きが機敏ね。間合いの取り方も上手だし。速い弾が来た時には少しもたついているけど。」

「確かに、さっきの速いやつはなんとか避けた、みたいな感じだったし。」

「速い弾が2つ続いて最初の弾で少し体勢を崩されてたから、次の弾は避けるしかなかったのかも。」

「成程。」


「はぁ、はぁ、はぁ。」

「どうした?もう限界か?」

「いえ、まだいけます。」

「では、続けよう。」


「聡君、きつそうだね。」

「『魔力量はそんなに多いほうじゃない』って言ってたから、持久力はないのかもしれない。」

「そうね。でも魔力量が多くないんだったら、今みたいにずっと刀身を出しておくんじゃなくて、切る瞬間だけ刀身を出すようにしないと。」

「聡にもそう言ってみる。」

「聡君の家系は剣の方に適性が偏っているみたいだから、そのくらいは知っていると思うよ。」


 バコッ!


「ぐはぁ!」


 弾が聡に当たり、倒れこむ。


「そこまで。」

「はぁ、はぁ、はぁ。」


 聡は起き上がれないほど消耗しているようだ。


「次は樹君の番だが、まだ基礎訓練中だから迎撃の訓練はもう少ししてから始めよう。」

「はい。分かりました。」

「今日は初日だから、訓練はここまで。授業が終わるまで魔法循環の鍛錬を行うこととする。では、各自始めるように。」


 生徒が座って鍛錬を始める。


(まずは魔法循環を両手両足で行えるようにするしかないか。)

(千里も道も一歩から、って言うし、私も手伝うから、がんばろう。)

(ありがとう、美姫さん。)



 鍛錬場から教室に帰る途中、美姫さんと聡とで話をした。


「聡君は、動きが速かったね。」

「そ、そう?美姫さんにそういってもられると嬉しいな。」


 聡がにやけた顔をしている。


「速い弾に対しては少しもたついていたけど。」

「それは認めるよ。あの時は2連発で早い弾が発射されたのが予想外だったから対処が遅れてしまったんだ。」

「それ以外はサクサク切ってたから、すごいことに変わりはないけど。」


「でもなぁ。」

「どうした?」

「持久力がなさすぎるんだよ。あんな短い時間だけしか動けないんだったら、足手まといになってしまう。」

「ずっと刀身を出しておくんじゃなくて、弾を切る瞬間だけ刀身を出すようにしてみたらどうだ?」

「それは分かっているんだが、まだ刀身を形成する速度が遅すぎて刀身を消してしまうと使いものにならないんだよ。」

「やっぱり聡も分かってたのか。美姫さんの言ったとおりだ。」

「一回見ただけで気が付くなんて、美姫さんはすごいな。」

「そんなことないよ。私は聡君みたいに機敏に動けないし。」

「そうそう。聡の魔導剣さばきは、がんばっても僕らには真似できない。」


「そこなんだよ。」

「?」

「俺は剣の方に適性があるから、美姫さんのように魔導弾を撃てない。刀身を短くして撃ち出すこともできるけど、それだと数と精度の面で銃には勝てない。」

「無理して、魔導弾を飛ばそうとしなくてもいいんじゃないか?」

「悪魔が襲ってきたときを考えてみろ。奴らもバカじゃないから魔導剣が届くところに来るまでに、魔法を使ってくる。だから、対悪魔戦闘を考えた時には、遠くから奴らを狙える銃に適性があるほうがいいんだよ。」


「そう言われると、悪魔と剣は相性が悪そうね。」

「”銃剣系”剣型の魔法使いでも悪魔を倒せるには倒せるんだが、対悪魔戦闘では俺は美姫さんの足元にも及ばない、使えない魔法使いなんだ。」

「そんなことないよ。」

「同意。聡が活躍する場面もきっとあるはず。」

「そう言ってくれるのは嬉しいが、俺たち渡辺家が活躍できるのは魔獣退治が限界だから、周りの大人たちもほとんどが治安維持軍に配属されているし。」


 魔獣は、第一次悪魔大戦以降に多く現れるようになった、魔法を使うことのできる動物のことだ。


「魔獣か。」

「あぁ、魔獣は悪魔に比べれば格段に弱いから、魔獣程度であれば突然魔法をぶっ放されても何とか対処する方法もあるしな。」

「治安維持も重要な仕事だと思うけど。」

「そりゃそうだろうけど、俺だって悪魔から都市を守りたいんだよ。美姫さんの訓練を見るまでは、俺でも魔導柄を持てば悪魔とも何とか渡り合えるんじゃないかと淡い期待をしていたんだが、砲台から発射されてからすぐに弾を撃ち落とせるくらいじゃないと、ダメだと気付かされたんだよ。」

「そうか。。。」


「すまん、愚痴ってしまった。」

「そういことならいつでも言ってくれ。僕は守られる側だから、愚痴を聞くぐらいお安い御用だ。」

「いや、樹は守られる側じゃないと思うぞ。そのうち俺なんかを追い越して手の届かないところまでいくような予感がする。美姫さんもそう思うでしょ?」

「私も樹君は優秀な魔法使いになれると思っているの。でも、聡君も悪魔と戦えるような魔法使いになれるよ。きっと。」

「美姫さん、ありがとう。」

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