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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
20/688

05

「迎撃訓練は天井に設置された砲台から発射される弾を撃ち落とす訓練だ。」

「へぇ。あの黒い弾を悪魔に見立てた訓練か。」

「そういう事だ。」


 今は青山元繁という生徒が迎撃訓練を行っている。


「迎撃訓練は中学の時もやっていたのか?」

「あぁ。最初はゆっくりした1つの弾を撃ち落とすところから始めて、中学の最後では今やってるのと同じ難易度だった。」

「結構厳しそうだ。」

「厳しくないと訓練にならんからな。」


 砲台から発射される弾の速度が上がっており、元繁はすでにいくつか撃ち落とすのに失敗していた。


「あれって、当たったら痛いのか?」

「速度が出ている時は当たるとかなり痛いぞ。」

「うわっ、やりたくなくなってきた。」

「樹は初心者だから最初はそんなに難易度も高くなくて弾の速度も遅いだろうし、大丈夫だろう。」

「そうだといいんだけど。」



 その後、3人の生徒が迎撃訓練を終え、美姫さんの番になった。


「次は美姫さん。」

「はい。」


 美姫さんが所定の場所に立つと、迎撃訓練が始まった。


 バンッ!バンッ!


 砲台から発射される弾を美姫さんは正確に撃ち落としていく。


「美姫さん、すごいな。」

「今までは補講で美姫さんの訓練しか見たことがなかったから分からなかったけれど、他の生徒の動きを見た後だと、美姫さんの動きや魔導力の発動が早くて正確なのがよく分かる。」

「まだ体の動きは少しぎこちない気がするけど、それでも中学時代に一番上手かった美沙よりも弾を正確に捉えられてるから。」

「小野美沙さん?」

「そう。俺らのクラスだと”銃剣系”では美沙が今まで1番だったんだよ。やっぱり、外家筋よりも分家筋の方が優秀なのかもな。美姫さんは特別なのかもしれんが。」

「聡は?」

「”銃剣系”では最下位だよ。でも、高校になって訓練の難易度は上がるだろうから順位の変動は起きやすいし、補助具の使用が許可されるから中学時の成績なんて関係なくなるはずだ。」

「高校では僕が断トツで最下位だろうし。」

「最初のうちは樹が最下位でも仕方がないだろう。俺たちは中学から訓練を受けてきたんだから、経験が違うし。気にするな、って言っても無理かもしれないが。」


 バンッ!バンッ!バンッ!


 射出速度が徐々に上がっていくが、美姫さんは何事もないかのように対処していく。


「どうやったらあんな風に正確に魔導弾を飛ばせるんだろう?」

「美姫さんに直接聞いてみたらどうだ?俺はうまく魔導弾を飛ばせないから、俺に聞かれても分からん。」

「そうなのか?」

「前にも言ったが、俺は”銃剣系”剣型だから、銃型の生徒と違って魔導力を飛ばすのが苦手なんだよ。」

「そうだった。それで、中学の成績が悪かったんだったっけ。」


 バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!


 もう目で追うのがやっとなほどな射出速度になっているが、美姫さんは順調に迎撃訓練をこなしていく。


「美姫さんかっこいいな。」

「同感。飛び散る汗まで輝いて見える。」

「いやらしい目で美姫さんのことを見ていた過去の自分に謝らせたいくらいだ。」

「とりあえず今謝っといたら?」

「ごめんなさい。」


 バンッ!


 美姫さんは、最後の弾も撃ち落とし、全ての弾を迎撃して訓練を終えた。


「訓練終了。」

「ふぅ。」

「美姫さんには優しすぎたかな。次からは難易度を1段階上げて、回避運動をさせたりしよう。」

「はい。」


(お疲れ様。完璧だった。)

(そうでもないよ。時旬タイミングがうまく取れなくて、いくつか際どく当てられたのもあったから、あまり余裕はなかったし。まだまだよ。)

(そうじゃ。それに、美姫は魔導弾とやらを撃つときに反動で少し腕がぶれてしまっているからのう。)

(そうなんですか?)

(もう少し反動を抑え込めるようにするか、無反動で撃てるようにせんといかんかもしれんのう。)

(そうですね。精進します。)


(レベルが高すぎてついていけない。。。)

(才能のある美姫と自分を比べても意味はないのじゃ。樹は自分ができることをこなしていけばよいと思うがのう。)

(そうよ。樹君もそのうちこのくらい簡単にできるようになるよ。)

(そうかなぁ?)

(大丈夫。私も鍛錬に付き合うから。)

(美姫さんに頼ってばかりで申し訳ない気がする。)

(ううん。私は樹君のおかげでこうやって高校生活を楽しめているんだから、気にしないで。)


(美姫との高校生活を楽しんでおるのは樹の方じゃと思うがのう。美姫の訓練着姿を見て鼻の下を長くしておったし。)

(そんなことありません!)

(先程、美姫のことをいやらしい目で見ていたのは何処の誰じゃったかのう。)

(それは聡ですよ。まぁ、美姫さんのことを見ていたのは否定しませんが。)

(そうじゃろう。)


(で、私の訓練着姿はどう?)

(いいと思います。)

(樹君だったら見たい時にじっくり見てくれていいから。)

(いや、そんなことをしたら変態だと思われるから、しないし。)

(そう。)


 何故か美姫さんは少し残念そうだった。

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