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竜の女王  作者: M.D
2169年秋
2/688

02

 毎年11月1日と2日に行われる統一試験が終わり、今日は11月4日。伝統行事である高尾山登山の日である。


「おはよう。」

「おはよう。ちゃんと来たな。」

「あたりまえだろ。」


 学校に行くと、森崎はさぼらずに来ていた。


「ん?森林はちょっとしんどそうだな。熱あるのか?」

「少し。」

「休んだ方が良くないか?」

「朝起きたら体がだるかったんだけど、休むほどじゃない感じだったから、長距離走をしなくてもいいように来てみたんだ。」

「そうか。まぁ、ダメそうになったら言ってくれ。先生を呼んでくるから。」

「了解。」



 高尾山までバスで移動する。


「統一試験の結果はどうだった?」

「予想通り、ってとこかな。やっぱり川崎高校の試験を受けることにする。森林は?」

「思ったよりも良かったかな。」

「羨ましい。受けるのは国分寺高校か?」

「肯定。・・・別々だな。」

「何?もしかして俺と離れんのが嫌なの?」

「否定。」

「冗談だって。でも、そんなに遠くないし、家も近いから会えなくなるわけじゃない。」


 この時は僕の方が遠くに行くことになるとは夢にも思わなかった。


「それで、森林が来る前に教室で広瀬にも聞いたんだが、東大附属高校を目指すってさ。」

「試験の結果が良かった、ってこと?」

「元々手ごたえはあったらしい。あいつは東大附属高校に入るために頑張ってたからな。受かってほしいよ。」

「同感。」

「まぁ、皆志望校に受かればいいな。」



 高尾山の麓に到着し、登山を開始した。


「森林、体調はどうだ?」

「朝の状態から変わらず、あまりよくない。」

「無理するなよ。」

「了解。」


 森崎と話をしながらダラダラ登る。


「東大附属高校に入れたら、魔法使いとお近づきになれたりするのかな?」

「どうだろう?一緒の校舎で勉強するんだろうから、普通の高校と変わらないと思うけど。」

「いいなぁ。俺も、広瀬みたいに勉強しておくべきだったかな。」


「急にどうしたんだ?」

「いや、昨日、魔法使いの特集をやってったから見たんだけど、魔法使いって美人ばっかりなんだよ。」

「そこか。しかも、女性しか目に入ってないところが森崎らしい。」

「重要なことだぞ。特に魔法使い御三家の桐生家なんて日本人じゃないみたいな外見だし、最高だった。」

「森崎は外人が好きだからな。ハーフの従姉よりも良かったのか?」

「檸檬のことはいいんだよ。隣の芝生は青く見えるもんだ。」


「そこまで言うんだったら、魔法使いの下で働かせてもらったらどうだ?」

「そのためには、まず東京シールドの中に入らないといけないだろう?その許可を得るのが難しいんだよ。」

「まぁ、東京シールドの中でくらせる人間の数にも限りがあるから、優秀で技術があるか、中の人間のお眼鏡にかなわないと無理だし。」

「そういうことだ。」



 朝方から思わしくなかった体調はよくならず、下山途中に急にフラフラな状態になった。


「森林、大丈夫か?」

「否定。ゆっくり歩いたほうが楽だから、少し速度を落として下山することにする。」

「先生を呼んでこようか?」

「不要。」

「俺も一緒の方がよくないか?」

「ダメそうだったら、この後にくるクラスの先生に言うから、森崎は先に行っておいてくれ。」

「そうか。それじゃ先に行ってるぞ。」

「了解。」


 体調がおもわしくないため下山速度が遅くなり、別のクラスの先頭に追い付かれたと気が付いた時だった。


「キャハハ。それはありえなくね?」

「そんなことないよー。」


 ドンッ!


「うざっ!何ぶつかってきてんの?」

「自分からぶつかっといて逆切れとか、うける。」

「ちげーし。あたしの進路上にいるあいつが悪いんだし。」

「ハハハ。」


 おしゃべりに夢中になっていた別のクラスの生徒にぶつかられ、


「あっ!」


 よろめいて崖から転落してしまった。


 ドサドサドサーーッ


「キャーーーーー!!」


 悲鳴が頭上から聞こえる声が、意識が朦朧としてやけに他人事のように感じたのを最後に気を失ってしまったらしい。

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