23
「大口をたたいておいてこの程度か。人間にしてはなかなかだが、準備運動にもならん。」
(身体強化をした魔法使いでも歯が立たないなんて。)
(同感。封印が解けてすぐでもこれほどまでに強いとは、、、)
(見たところによると鬼は生成のようですから、初級魔法使いでも戦い方次第では勝てる相手なのですがな。)
(そうなのですか?)
(はい。志乃は”楯系”魔法使いであるため、攻撃は得意ではないのかもしれませんな。)
(僕たちに倒せるでしょうか?)
(”楯系”魔法を使える樹君もいることですし、美姫さんが実力を出し切れれば大丈夫でしょうな。)
(それを聞いて、少し安心しました。)
(しかし、慢心はいけませんぞ。)
(了解。)
「志乃、大丈夫?」
「はい。でも、身体強化をしても太刀打ちできないとは思いませんでした。」
「やっぱり魔法を使わないとダメなのようね。」
「なので、魔法の腕輪を持っていない穂香さんと志乃さんも今すぐ逃げて下さい。」
「志乃がこうなってしまった以上、鬼は美姫様と樹君に任せるのが賢明ね。」
「2人を残して逃げるのは心苦しいですが、私たちがここにいても役に立てないですし。」
「魔法の腕輪を持っているのは私と樹なのですから、ここは任せて下さい。」
「それと、鍔須さん、穂香さん、安全なところまで行ったら治安維持軍に連絡をお願いします。」
「承知致しました。」
「分かったわ。」
鍔須さんは華恋を抱え、穂香さんは志乃さんに肩を貸して逃げだした。
「行かせはせんぞ!」
鬼は4人を逃がすまいと魔導弾を放ったが、
(させない!)
パシッ!パシッ!パシッ!パシッ!
再度魔導楯を発動させて防ぐ。
(今の魔導弾は先程のものより威力がありましたが、それに合わせて魔導盾の強度を変えれるようになったとは、樹君も成長しましたな。)
(ありがとうございます。これもグレンさんの指導のおかけです。)
(しかし、この展開じゃと、次は樹の魔導盾が砕かれそうじゃのう。)
(縁起でもないことを言わないで下さい。)
(そうです。不謹慎です。)
「2度も俺の邪魔をするとは、貴様、許さんぞ!」
怒りの表情を見せた鬼が魔導弾ではなく先程とは格段に威力のある魔導砲を僕に向けて放ち、
ゴーー!
パリンッ!
「ぶへぇっ!」
全力で発動した魔導楯を砕かれ、向かってきた魔導砲に吹き飛ばされた。
(樹、大丈夫?)
(魔導楯で威力はかなり弱まっていたから、何とか。でも、鬼は魔導弾だけじゃなく魔導砲も撃てるのか。)
(そうみたいね。)
(鬼は魔獣のような存在ですからな。人間のように魔法の腕輪を使わずとも魔導力を発現させられるのですから、魔導弾も魔導砲も鬼にとっては同じなのですな。)
(よくも樹を!)
美姫が魔導弾を放つが、
パシッ!パシッ!
「えっ!?」
「効かぬな。」
鬼の手前ではじかれてしまった。
(魔導弾が何もない空間ではじかれた!?)
(美姫、奴は魔法防壁を張っておるのじゃ。)
(だったら!)
美姫が今度は魔導矢を放ち、
ビシッ!
魔法防壁を撃ち抜けはしたが威力が弱まってしまい、鬼に傷をつけるには至らなかった。
「えっ!?どうして?」
「その驚き方からして、もしかしてこれが全力だったのか?魔法防壁を撃ち抜くとは思わなかったが、傷一つつけられなくて残念だったな。ハッハッハー!」
鬼が勝ち誇ったように笑い、美姫に魔導砲を放つ。
ゴーー!
パリンッ!
「キャァ!」
僕も美姫の前に魔導楯を発動したが、魔導楯を砕いて向かってきた魔導砲に吹き飛ばされた。
(美姫、大丈夫?)
(えぇ、樹のおかげで何とか。魔導矢でもダメだなんて、、、)
(このままだとなすすべがない。)
(でも、何か打開策はあるはずよ。)
(グレンさんも大丈夫だと言っていたし、策はあるはずだ。考えよう!)
(そうしましょう。)
ゴーー!
しかし、考えがまとまる前に鬼が魔導砲を放ってきた。
パリンッ!
今度も魔導楯を砕かれたが、魔導楯の形状と角度を調整することで、うまく魔導砲の方向をそらすことに成功した。