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竜の女王  作者: M.D
2171年冬
187/688

21

 封印の結晶が僅かに光り出すと、画面上に魔力の流れが映し出される。


「やはり、封印の儀式には魔力が関係していたようです。珠莉さんに身に着けてもらった測定器が魔力を観測しました。左手側から右手側に魔力の流れが存在します。」

「でも、これだと魔力が封印の結晶に含まれる魔石に流れ込んでいるとは言えないのですの?単に珠莉が魔力循環をしていても同じ結果になると思いますの。」

「確かにそうですね、、、」

「きっとそうですの。」

「結論を出すのはデータを詳しく分析してからに致します。」


 魔力の流れを検出して興奮していた穂香さんは華恋に反論されて少し凹んでいたが、


(封印の結晶とやらは鬼から吸い取った精神エネルギーを蓄えて封印を保っておるのが分からんとは、あ奴らもたいしたことないのう。)

(この状況を見ても、まだ封印の儀式が何のためにあるのか分かっていない、とは情けない限りですな。)


 エレナ様とグレンさんは封印の儀式について理解できているようだった。


(しかし、封印の儀式が鬼から精神エネルギーを吸い取って、封印の結晶に蓄えるためのものであったとは、なかなか考えられておるのじゃ。)

(はい。それができなければ最初に注入した魔力が無くなってしまえば封印が解けてしまいますが、この方法であれば、封印を維持し続けることができますからな。)

(じゃが、人を介する必要があるところが不完全なところじゃ。効率もワレらが作成した魔力貯蔵具には劣るしのう。)


 あれ以来ずっと、魔力を貯めるために美姫と僕は魔力貯蔵具を身に着けている。


(エレナ様でないと魔力貯蔵具はつくれないでしょうな。しかし、大昔に封印の結晶を作れたことは素晴らしいと思いますが、巫を選んで封印の儀式をしなければならない、というのは面倒ですな。)

(さらに、ギョウソウがおらんと封印の儀式ができん、というところも問題じゃ。)

(もしかすると、ギョウソウは鬼を退治することができる者が現れるまで鬼を封印できておければよい、と考えたのかもしれませんな。)

(なるほど、グレンの言うとおりかもしれんのう。今はギョウソウに話しかけられんから、封印の儀式が終わったら聞いてみるとしようかのう。)



 エレナ様とグレンさんの話を聞きながら、封印の儀式を見ていると、


 ピシッ!


 亀裂音がした。


「今、何か音が聞こえなかった?」

「私も聞こえた。何の音かな?」


 ピシッ!


 再度、亀裂音がする。


「まただ。」

「見て!封印の結晶に罅が入ったよ!」


 その様子は画面にも映し出されており、


「どうなっていますの?」

「分かりません。」

「これって鬼の封印が解けたりするんじゃないか?」

「なんまいだ。なんまいだ。」


 周りの様子も騒がしくなる。


「穂香、封印の結晶があのような状態で珠莉は大丈夫ですの?」

「魔力の流れには変化はありませんので、珠莉さんには異常は出ていないと思われます。」

「良かったですの。」

「しかし、前回の映像ではこのようなことはなかったので、念のため華恋様は逃げる準備をお願いします。」

「私は珠莉をおいて逃げるなどしませんの。」

「華恋様、今はそのようなことを言っている場合ではありません。」


「志乃は治安維持軍に連絡をお願い。」

「はい。」


「おい!逃げる準備を進めたり治安維持軍に連絡を入れたり、ヤバいことになっているのか?滝川さんは偉い学者さんなんだから、儀式がどうなっているのか説明してくれんか?」

「私にも分かりません。長い間この封印の儀式を伝承してきた村の村長の方が私よりも詳しいのでないですか?」

「お、俺は何も知らん!」


(このまま儀式を続けて問題ないんでしょうか?)

(途中で介入して封印の儀式を途切れさせるわけにはいかんから、ギョウソウには聞けんしのう。)

(何か嫌な予感がしますな。)

(美姫、樹。珠莉を助けに行く準備だけはしておくのじゃ。)

((はい。))


 その後すぐ、


 パリンッ!


 封印の結晶が砕け散り、


「間一髪だったな。もう少しで封印し続けられるところだったぞ。」


 鬼が動き出した。


「キャァァァァ!!」


 珠莉が悲鳴を上げ、


「貴様が今代の巫か。もう少しだったのに、残念だったな。ハッハッハー!」

「はぅ。」


 鬼の左腕で拘束された珠莉は気を失った。

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