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竜の女王  作者: M.D
2171年冬
181/688

15

 黒鍔村についてから5分程待って、鍔須さんが合流した。


「お待たせしました。参りましょう。」


 鍔須さんについて、長閑な風景の中、道を歩く。


「樹の地元とも違って、黒鍔村はのんびりした雰囲気でいいところね。」

「同感。喧騒を忘れて偶にはこういうところで過ごすのもいいかもしれないけど、ずっとここで生活するのは不便そう。」

「そうね。ここまで遠操機が荷物を運んできてくれたりしないだろうし。」


「ここの風景は、歴史の教科書に出てくるくらいの田舎っぷりですの。」

「華恋様、この辺りがド田舎みたいなことを言うのは黒鍔村の方々に対して失礼ではないでしょうか?」

「珠莉、あなたの言い方の方が失礼ですの。」


「いえ、御二人の言われることも分かります。私が黒鍔村を出てからもほとんど変わっていませんし、暮らしぶりは東京シールド内と比べるべくもありませんが、働き続けなければ生活できない東京シールド内よりも黒鍔村の方が良いという者もいます。」

「オラは今の暮らしのままがえぇです。」

「権太のように変化を求めない者はここに残り、私のように変化を求める者は村を出ていく。それでうまくいくのであれば良いのではないか、と思います。」

「でも、研二様は違うんでねぇですか?」

「いや、私も変化を望んでいたのだよ。」


「それと、私のことを研二と呼ぶのはもう権太だけだろうし、そろそろやめにしないか?」

「いえ、封印の儀式から生還された研二様はオラにとっては英雄です。皆の前では”一也様”と呼ばざるをえねぇですが、そうでないときは”研二様”と呼ばせてくだせぇ。」

「・・・昔から両親以外で私たちを見分けられるのは権太だけだったしな。皆の前で呼び方を間違わなければ、まぁ、いいだろう。」

「ありがとうごぜぇます。ただ、御二方を見分けるのは、二子様もおできになられました。」

「あぁ、そうだったな。」


(今、権太さんが『封印の儀式から生還された』って言わなかった?)

(僕も聞いた。封印の儀式って本当は危険なものなのかもしれない。今回の巫をする珠莉のことが心配になってきた。)

(そうね。エレナ様、ギョウソウさんに聞いてもらえませんか?)

(良いじゃろう。)


(封印の儀式で巫が死ぬこともあるのかのう?)

(テキセイ・・・ヒクイト・・・シヌコト・・・アル。)

(珠莉はどうなのじゃ?)

(オソラク・・・ダイジョウブ。)

(恐らくでは困るのじゃ。)

(ジコ・・・マレニ・・・アル。ゼッタイ・・・ダイジョウブ・・・イエナイ。)



 そんな話をしていると、大きな門の前まで来た。


「ここが村長の家です。」

「ふーん。なかなかの大きさですけれど、古臭いですの。」

「東京シールド内と違って土地は有り余っていますから、この程度の大きさであればどこでも見られます。それに、建てられたのはずいぶん昔ですから古いのも仕方ありません。」


 門をくぐって中に入ると、玄関から人が出てくるところだった。


「村長、我々は祠に向かいますから、鍵を持っている者が帰ってきたら祠まで来るよう伝えて下さい。」

「分かり、、、あぁ、ちょうど今、権太が帰って来たようです。」


 村長と思われる人物が、権太さんに声を掛ける。


「権太、調査団の御二方を祠にお連れして、祠の鍵を開けてくれ。」

「へぃ。」


 権太さんの方を見た2人は、美姫と華恋の存在に気が付いて会釈した。


「華恋様、美姫様、お初にお目にかかります。東大の魔法呪術学研究室で准教授をしています滝川穂香と申します。隣にいるのは研究室の学生で惣流志乃です。」

「初めまして、博士課程2年生の惣流志乃です。」

「丁寧にありがとう。あなた達が封印の儀式の調査団なのですの?」

「はい。」

「2人だけですの?」

「いえ、他に2名おりまして、今は車で待機しております。」

「そう。護衛の魔法使いはどこにいますの?」

「彼女です。」

「でも学生ですの。」

「はい。魔法軍に派遣の申請をしたのですが、危険性が低いから、と却下されてしまいました。魔法の腕輪の持ち出し許可は取れましたので、研究室にいる”楯系”魔法使いである志乃に助手兼護衛として同行してもらった、というわけなのです。」


「今まで封印の儀式は成功してきたのだから、魔法軍が危険性が低いと判断したこともあながち間違っていないと思いますけれど、学生の志乃が護衛だと少し心配ですの。」

「そうなのです。先生達を守り切れるか正直不安ではあります。」

「分かりましたの。心配なのであれば、あなた達が持っている魔法の腕輪を私たちに貸しますの。私と御姉様であなた達を守ってあげますの。」


 華恋が突然とんでもないことを言い出した。


「いえ、華恋様や美姫様に我々の護衛などをさせるわけにはいきません。」

「そうよ。華恋ちゃんも魔闘会を見たから分かると思うけど、まだ身体強化ができない華恋ちゃんと身体強化ができる志乃さんとでは実戦での動きに雲泥の差が出るのよ。」

「御姉様、私は全身の身体強化くらいもうできますの。」

「えっ!?そうなの?身体強化は高1の魔闘会前に習うのではなかったっけ?」

「魔法使い御三家本家筋の者のたしなみ、というものですの。」


「その副作用でちんまいのか。」

「樹、聞こえていますの。」

「そうです。華恋様が小さいのは昔からで、身体強化の副作用ではありません。」

「珠莉は樹から悪影響を受けましたの?最近失礼なことを言うことが増えましたの。」

「いえ、そんなことは。申し訳ありませんでした。」

「今後気を付けますの。」

「はい。」


 珠莉が華恋に対して平謝りしている。


(珠莉も樹みたいに、ぽろっと余計なことを言うよね。)

(僕はそんなに余計なことを言ってる?)

(言ってるよ。主にエレナ様に。)

(そうじゃ。樹はいつもワレに余計なことを言っておるぞ。もしかしてワレに気があるのでは―――)

(否定。)

(ちと早すぎやせぬかのう?もう少し悩んでもよかろう?)

(悩む必要性を認めませんが。)

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