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竜の女王  作者: M.D
2170年冬
18/688

03

 入学式を終え、魔法科の教室へ向かう。美姫さんが入学式の時と同じく生徒に囲まれているため、先生が来るまでぼーっとしていようと思っていると、


「よう。」


 後ろから声をかけられた。


「ん?」

「渡辺聡だ。よろしくな。」


 振り向くと、入学式が始まる直前に僕の席の隣に座った生徒だった。


「僕は――――」

「森林樹。お前も有名人だぞ。木がいっぱいだ、って。」

「いつも言われる。」

「そうだろうな。お約束みたいなもんだろう。でも、有名人ってのは木がいっぱいだからというわけではなくて、魔法使いの家系出身じゃないからだ。単純に珍しいからな。」

「珍しがられるの避けて通れないと思っているけど、生徒会長も魔法使いの家系出身ではないんじゃなかったっけ?」

「そうだ。でも、あの人は実力も規格外だから、魔法使いの家系出身じゃなくても有名人になったはずだ。樹は逆の意味で有名人だけど。」

「それは言わないでほしい。不安で憂鬱で心配でしかたないから。」


「すまん。でも、あまり気にする必要はないって。学年15位の俺が言うんだから間違いない。」

「わなたな、、、聡って成績はあまりよくないのか?この学年のことは何も知らないから分からないんだけど。」

「まだ魔法使いの呼び方に慣れてないのか。俺としては普通の人が名字で呼び合うってのに違和感を感じるが。」

「魔法使いの呼び方は慣れようと努力してるんだけどなかなか慣れない。」

「なら、まずは俺のことを聡って呼べるようにならないとな。」


 気さくにそう言う聡とは仲良くできそうな感じがした。


「俺の成績の話だが、渡辺家は一応”銃剣系”の家系だけど、剣の方に適性が偏っていて魔力量はそんなに多いほうじゃない。中学までは魔力の量と操作が評価の対象だったから成績が低かったんだが、高校からは系統別授業も始まるから巻き返しに期待しているところだ。」

「魔法について詳しいことは分からないけれど、自信がありそうだな。僕なんて魔力検査では電気を消しても光っているのかどうか分からなくて、タブレットに表示された数値がギリギリ合格点だったらしいから、これからどうしようかと思っているところなんだけど。」

「魔力の使い方を訓練していなくても合格できるんだから、樹の方が俺よりも才能があると思っているんだ。だから、訓練すればすぐに俺たちなんて追い越されるんじゃないかって、入学式前に他のやつらと話をしてたところだ。」

「すぐに追い越すなんて無理だって。」

「そんなことはないし、追い越されないように嘘を教えてやろう、なんて言うやつもいるから気をつけろよ。でも、樹は美姫さんと一緒に純一先生の補講を受けているんだから、嘘を教えてもすぐにばれると思うが。」


「もしかして、僕のことはあまりよく思われていない?」

「やっかみだ。美姫さんと仲が良さそうだから僻んでいる男子が多いんだ。それに成績が低いってバカにしてたのに追い抜かれたらみじめに感じるだろう?」

「美姫さんはやっぱり有名なのか。でも、どうして僕と美姫さんが仲良さそうって分かったんだ?」

「今日も寮から2人で話しながら高校まで一緒に来ていたし、樹の両親とも話をしていたらしいじゃないか。誰が見ても仲がいいように見えると思うぞ。」


 そんな取り留めもない話をしていると、先生が教室に入ってきた。


「すまん。遅くなった。みんな席に着いてくれ。」


 僕も前を向いて座りなおす。


「担任の小野純一です。これから3年間よろしく。時間がないので早速だけど各自自己紹介をしてもらいます。ほとんどの人は中学からの持ち上がりだからお互いのことをよく知っていると思うけれど、美姫さんと樹君は高校から東大附属に編入してきて他の生徒のことを知らないから、各自名前と魔法系統について簡単に紹介して下さい。では、出席番号1番から。」

「はい。青山元繁です。魔法系統は”銃剣系”で――――」


 自己紹介が始まり、皆魔法系統の紹介だけでなく家系の紹介も行っている。たとえ学生であっても魔法使いにとって家系は重要なことなんだと感じられる。


(青山君か。すごくイケメンだ。)

(そうじゃのう。樹が豆に見えるのう。)

(エレナ様、勝手に人の考えに割り込んでこないで下さい。)

(そうです。エレナ様はひどいです。それに、樹君はそんなに悪くありません。)

(美姫さん、それはもういいから。。。)


(美姫にとっては樹は命の恩人じゃからよく見えるのかもしれんが、事実は認めんといかんのう。)

(そんなことないです。)

(まぁ、青山というやつも見た目はよいが、精神エネルギーがちょっと歪んでいるようじゃからのう。ワレも内面は樹のほうが良い、というのには賛成じゃ。)

(精神エネルギーが歪んでるって、性格に問題があるということですか?)

(そうとも限らんが、それに近い感じじゃろう。)


 そんな話をしているうちに美姫さんの番になった。


「龍野美姫です。魔法系統は”銃剣系”です。龍野家の分家筋にあたります。高校からの編入で分からないことも多いので迷惑をかけることがあるかもしれませんが、よろしくお願いします。」


 簡潔に自己紹介をし、父親のことも言わなかったため、英雄の娘って呼ばれるのはあまり好きじゃない、と言っていたことを思い出した。


(緊張した。)

(お疲れ様。簡潔でいい自己紹介だった。)

(ありがと。でも、急に皆から注目されて品定めをされているような感じだったよ。)

(美姫さんは期待の新入生だから。)

(樹君も一緒じゃない。)

(美姫さんと違って僕は期待されていないと思う。)


 そして僕の番が来た。美姫さんと同じように簡潔に自己紹介をする。


「森林樹です。魔法系統は、、、不明です。美姫さんと同じく高校からの編入です。魔法使いについて知らなことばかりなので、おかしなところがあれば訂正してもらえると助かります。よろしくお願いします。」


「魔法系統が不明ってなんだよ。」

「そんなことがありえんるんだ。笑える。」


 野次ともに笑いがおき、いたたまれない感じでいると、


「静かに。樹君の魔法系統が不明なのは3つの魔法系統すべてが同じ程度の数値でだったからで、今後の伸びしろを考えると、君たちもウカウカしてられないぞ。」


 と、純一先生が僕のことを説明したことで、教室は静かになった。


「よし。次で最後だな。」

「はい。渡辺聡です。魔法系統は”銃剣系”で――――」

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