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エレナ様がギョウソウに語りかけた。
(ギョウソウ、ワレは封印の儀式の手助けをすることはできぬが、失敗したときの鬼退治くらいはしてやるのじゃ。)
(アリガトウ・・・ゴザイマス。)
(今回の巫とやらは当日にしか来んから、適正が分からず準備ができんのじゃったな?)
(ハイ。エレナサマガ・・・タスケテ・・・クダサル・・・ノナラバ・・・シッパイ・・・シテモ・・・ダイジョウブ。)
(できれば成功させたいのじゃが、封印の準備とやらが事前にできれば成功率は上がるのじゃな?)
(ハイ。)
(そうなのであれば、この中から先に選んでおいた方が良いかもしれんのう。)
(エレナサマノ・・・アンニ・・・ドウイ・・・シマス。)
(最も適性のある者は誰じゃ?)
(テキセイ・・・ミキワメ・・・マス。スコシ・・・オマチ・・・クダサイ。)
・・・・
(アソコノ・・・ショウジョ・・・テキセイ・・・タカイ。)
(珠莉じゃな。死なぬ確率はどのくらいじゃ?)
(5ワリ・・・アレバ・・・ヨイホウ。)
(確率は半々か。それを高める方法はないのかのう?鍔須に分け与えた分体を取り戻すことはできたりするのかのう?)
(ゼンブハ・・・ムリ。デモ・・・デキル・・・ブンダケ・・・カエシテ・・・モラエバ・・・6ワリマデ・・・イケマス。)
(やはり分け与えた分体を全て取り戻すことはできないのじゃな。しかし、まだ分が悪いのう。)
(サラニ・・・オデノ・・・チカラ・・・ゼンブ・・・ワタセバ・・・9ワリマデ・・・イケマス。)
(お主の力をすべて珠莉に渡しても、封印は実行可能なのじゃな?)
(ハイ。)
(ならばそうするが良いのじゃ。)
(ワカリ・・・マシタ。)
(ちょっと待って下さい。)
美姫が慌てて口を挟む。
(珠莉の意思は聞かなくても良いのでしょうか?)
(本来ならそうすべきなのじゃろうが、如何せん時間がないからのう。)
(そうなのですが、他に方法はないのでしょうか?)
(そうじゃのう、、、珠莉の代わりに樹に巫をやってもらうとするかのう?)
(僕ですか?珠莉よりは人外なる者を体内に入れるのは慣れているかもしれませんが、適正はあるのでしょうか?)
(ギョウソウ、他の者を巫にするとどうなる?例えば、そこの樹とかどうじゃ?)
(ダメ。エランダ・・・ショウジョ・・・イガイ・・・ダト・・・オソラク・・・カクジツニ・・・シッパイ・・・スル。)
(だそうじゃ。)
(なのであれば、いっそ、封印の儀式をせずに、私たちで鬼退治をしませんか?)
(それだと封印の儀式が見られんではないかのう。)
(エレナ様の目的はそれですか。)
(そうじゃ。封印の儀式とやらが面白そうなのじゃ。)
(鍔須が普通に生活できていることを思えば、ワシも珠莉がギョウソウの力を受け入れても問題はないと思いますな。)
(そうじゃろう!グレンもいいことを言うのう。)
(グレンさんまで、、、)
エレナ様にグレンさんが助け舟を出した。
(ワシはギョウソウの力がこのまま失われてしまう方が問題だと考えますな。)
(珠莉よりもギョウソウさんの力の方が大事と言われるのですか?)
(封印の術は”楯系”魔法に応用ができそうなのですな。珠莉もギョウソウの力を受け入れて魔法使いとして成長するのであれば、巫になった方が得であると思うのですな。)
(そうかもしれませんが、、、)
(美姫が珠莉のことを心配するのも分かるが、ワレらに任せておくのじゃ。悪いようにはせんのじゃ。)
(・・・分かりました。エレナ様とグレンさんがそこまで仰るのであれば、お任せします。)
(樹も、よいかのう?)
(こんなことに巻き込まれて珠莉も可哀そうだとは思うけれど、僕たちと関わってしまった結果としての運命だと諦めてもらうしかないか。)
(ケンジモ・・・イイカ?)
(珠莉さんには気の毒ですが、仕方ありません。私も力をお返しすることには異論はありません。)
(スマン。チカラ・・・カエシテ・・・モラウ。)
(どうぞ。)
(ケンジニ・・・ナジンデ・・・イル・・・チカラヲ・・・イチドニ・・・ゼンブハ・・・ムリ。ジョジョニ・・・カエシテ・・・モラウ。)
(分かりました。)
祠の隅の霞がほんの少し濃くなった気がした。
(次は珠莉にお主の力を全て渡すのじゃな?)
(ハイ。)
(その後、お主はどうなるのじゃ?)
(オデノ・・・チカラ・・・ナジムノニ・・・ジカン・・・カカル。ソレ・・・リヨウシテ・・・フウインノ・・・ギシキ・・・スル。)
(つまり、珠莉に力が馴染んでしまえばお主は消えてしまうが、それまでには時間があることを利用して封印の儀式を行うのじゃな?)
(ソウ・・・デス。)
(ならば、珠莉にお主の力を全て渡すがよいのじゃ。)
(ハイ。)
(珠莉には封印の儀式について説明しておくのじゃぞ。)
(ワカッテ・・・オリマス。)
霞が珠莉の方に飛んでいき、体に入り込む。
「キャッ!」
「珠莉、どうしましたの?」
「なんだか、急に寒気がしました。」
「こんなところに長いこといると体調が悪くなってもおかしくありませんの。」
「申し訳ありません。」
「謝らなくてもいいですの。私も鬼が生で見れて満足しましたから、今日のところはもう出ますの。」
「はい。」
「御姉様、私たちはもうここから出ようと思いますが、まだ見ていかれますの?」
「いえ、私たちも外に出るよ。」
「分かりましたの。では行きますの。」
華恋たちに続いて祠を出る際に鬼の方を振り返ると、ニヤッ、と笑ったように見えた。