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竜の女王  作者: M.D
2171年冬
176/688

10

 次の日は朝早くにホテルを出た。


「本日はまず祠に向かい、封印されている鬼を見て頂きます。」

「村長への挨拶が先ではないですの?」

「連絡したところ、挨拶はいらない、とのことでしたので、直接祠に向かいます。ただ、儀式を見るとなると挨拶はしておいた方がよいと思いますので、後で向かうことに致します。」

「分かりましたの。」


 出発してすぐに山道に入る。


「祠の鍵は開いていますの?」

「いえ、いつもは鍵が閉まってますので、特別に開けてもらうことにしました。権太という者が鍵をもってきてくれる手筈になっています。」


「余所者のために特別に鍵を開けてくれるものでしょうか?」

「本日は午後から調査団の方々が観測装置を祠の中に設置されるため、もともと祠の鍵を開けることになっておりましたので、我々にも特別に開けて中を見せてもらえることになったのです。」

「そういうことですか。」

「それに、心付けははずんでおりますので、相応の対応はしてくれなければ困ります。」



 山道の途中で車が止まった。


「ここからは徒歩でしか行けません。車をおいてきますので、しばしお待ち下さい。」

「どのくらい歩きますの?」

「3、40分といったところでしょうか。」

「うぇ。」


 僕たちを降ろし、車が発車した。


「本当にここであっていますの?」

「鍔須さんが嘘を言うわけはないと思いますが。」

「でも、珠莉。どう見ても道なんてないですの。」

「そうですね、、、」


「ここだけ木が生えている間隔が少し広くなっているから、元々道があったんじゃないか?」

「樹の言うとおり、道はあるけれどちゃんと整備されてないだけだと私も思う。」

「そう言われると、そうですの。」



 戻ってきた鍔須さんを先頭に森に入る。


「道なき道を行くのはどういうわけですの?」

「こちらの道の方が近いからです。」

「でも、草が生え放題になっているようですの。」

「黒鍔村から祠に行こうとすると逆側の道の方が近いため、この道はほとんど使われていないので手入れされていないのでしょう。」

「そう。」


 森の中を登ること20分。


「まだ着きませんの?」

「後半分、というところでしょうか。」

「まだそんなにあるんですの?本当にこの道であっていますの?」

「はい。15年ぶりですが、来る前に地図で調べてありますので、間違いございません。」

「15年前には何をしに来たのですの?」

「母が亡くなりまして、葬儀に出席するために里帰りを致しました。その際に守り神様にもご挨拶に来たのです。」

「それはご愁傷さまでしたの。」


 更に登ること20分。ようやく目の前が開け、祠が見えた。


「ようやく着きましたの。」

「お疲れ様でした。」

「あの祠の奥に鬼が封印されているのですの?」

「はい、そのとおりです。しかし、祠の鍵を持った権太がまだ来ていないようです。権太が来るまで一服しましょう。」

「分かりましたの。」


 15分くらい休憩していると、反対側から誰かが登って来た。


「研二様、お久しぶりです。もう来ておいででしたか。遅れて申し訳ありません。」

「久しぶりだな、権太。お嬢様のことを考えて少し早めに来たから、気にすることはない。」

「ありがとうごぜぇます。」

「早速だが、祠の鍵を開けてくれないか?お嬢様が待ちくたびれたご様子なんだ。」

「へぃ。」


「セバスチャンのくせに、偉そうな口をきいていますの。」

「鍔須さんは、実はいいところのお坊ちゃんなのかもしれませんよ。」

「こんなクソ田舎にはいいところなんてないですの。」

「黒鍔村の他の家に比べて、という意味ですが。」

「そんなこと、分かってますの。」


 華恋と珠莉がひそひそと話している。


「ん?鍔須さんは、一也、って言う名前じゃなかったっけ?」

「そう言えば、鍔須さんはさっき”研二様”って呼ばれていたわね。鍔須さんの本当の名前は”研二”なのかな?」

「どうだろう?鍔須さんが名前を変えないといけない理由か、、、もしかして鍔須さんのことを”セバスチャン”と呼びたいがために、華恋が改名させた、とか?」


「そんなことありませんの。」

「そうです。華恋様がいくら酷いといっても、”セバスチャン”と呼びたいがために、名前を変えさせるようなことまではしないと思います。」

「珠莉、さらっと私のことを貶すのはやめてほしいですの。」

「申し訳ありません。言葉のあやで、そんなつもりはありませんでした。」


「だとすると、鍔須さんが名前を変えないといけない理由は何なんだろう?」

「そんなこと、後でセバスチャンに直接聞けばいいだけのことですの。」

「確かにそのとおりなんだけど、、、」


 そんな話をしていると、


 ガチャッ


 鍵の開く音がした。


「お嬢様、鍵が開きましたので、祠の中をご覧下さい。」

「分かりましたの。」

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