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竜の女王  作者: M.D
2171年冬
175/688

09

 そんな話をしているうちに、宿泊するホテルに到着したようだった。


「皆様、お疲れ様でした。」

「それ程大きくはないですが、綺麗なホテルですね。」

「このホテルは近くにある国防軍の演習場を見学される高官の方々も利用されますので、管理が行き届いておりますから。」

「そうだったのですか。」


「セバスチャン、お腹が空いたからすぐに食事にしますの。チェックインを済ませて、荷物は部屋に運んでおきますの。」

「畏まりました。」

「御姉様、食堂に行きましょう。樹は珠莉、セバスチャンと一緒に荷物運びですの。」


「どうして皆で食べないの?」


 ホテルに入ってすぐに食堂に行こうとする華恋に美姫が問いかける。


「はぁ、、、御姉様も少しは立場というものを認識された方が良いですの。私と御姉様は魔法使い御三家の本家筋と分家筋ですの。しかし、彼の者たちはそうではありませんの。ここは明確な区別があってしかるべきところなのですの。」

「そんなことは――――」

「僕のことは気にしないで、美姫は華恋と夕食に行ってきて。僕は珠莉や鍔須さんと一緒に食べるから。」

「でも――――」

「樹もあのように立場をわきまえているようですし、さぁ、行きましょう。」


 美姫は華恋に手を引かれてホテルに入っていった。


「華恋様が我儘を言って申し訳ありません。」

「珠莉が謝ることではないと思うよ。」

「しかし、樹様に不快な思いをさせたのは事実ですし。」

「そう思っているのなら、華恋に言動を正すよう言うべきじゃないかな?」

「すみません。私の立場からそのようなことは言えません。」

「珠莉を責めているわけじゃないから、誤らなくてもいいよ。」


「私からも謝罪を。樹様はお客様であって従者ではないにも関わらず荷物運びをさせることになってしまい、申し訳ありません。」

「気にしていないので、鍔須さんも謝罪は不要です。そんなことより、早く荷物を運んでしまいましょう。」

「承知しました。ありがとうございます。」


 3人で美姫と華恋の荷物を運んだ後、自分の荷物を持って部屋に移動した。


「やっぱり僕たちの部屋は狭いですね。」

「お嬢様と美姫様のお部屋と違って従者用の部屋ですから、最低限の設備しかありません。樹様にはご不便をおかけして申し訳ありません。」

「僕は寝れればいいので、これでいいです。」

「そう言って頂けると助かります。珠莉さんを待たせるのも悪いですから、我々も食事に行きましょう。」

「了解です。」


 従者用の食堂があるらしく、そちらに向かうと、珠莉はもう来ていた。


「珠莉、早いね。」

「私の部屋の方が食堂の近くにありますから。3人分の定食を注文しておきましたが、それで良かったですよね?」

「肯定。ありがとう。」


 しばらくして出てきた料理は、定食と呼ぶには豪華なものだった。


「結構量があっておいしいですね。」

「はい。いわゆる賄飯で、余り物を使った料理ですが、素材はお嬢様と美姫様が召し上がられている物と同じ高級なものですから、樹様のお口に合って何よりです。」

「僕は最近魔法使いになったばかりなので、これでも十分高級な料理だと感じます。」

「そうでした。樹様も環境が激変して、さぞかし大変だったでしょう。」

「最初はかなり戸惑いましたが、最近はだいぶ慣れました。魔法の方はまだまだですけど。」


「そんなことはありません。魔闘会で樹様が見せた魔導楯はすごいものでした。」


 僕の何気ない言葉を珠莉が興奮気味に否定する。


「あれは偶々。無我夢中だったから、どうやったのかも覚えてないし。」

「それでも私には真似できません。あれで樹様がまだまだなんて言われるのでしたら、私は全然です。。。」

「珠莉、そんなに落ち込まなくても。」

「いえ、私は”楯系”の魔法使いとしてもそれなりにできる方だと思っていたのですが、魔法使いになりたての樹様にも負けているのですから、落ち込むな、と言われても無理です。」


「僕の場合は良い師匠に巡り会えた、という幸運があったからかもしれない。」

「樹様には学校以外で”楯系”魔法を教えてくれる方がいたんですね。私にもその方を紹介して頂くことはできないでしょうか?」

「何も明かさないことを条件に教えてもらったから、申し訳ないけど紹介はできないんだ。」

「そうですか。残念です。」


「でも、珠莉が分からないことについて、助言くらいはしてあげられるよ。」

「本当ですか!?是非、お願いします。」


 しょげていた珠莉だったが、助言してもらえることが嬉しかったのか、パッと表情が明るくなった。


「それでしたら、この後は予定がもうありませんから、珠莉さんは食事が終わった後に樹様から魔法を教えて頂いたらどうでしょうか?」

「そうですね。華恋様も『夜は御姉様と2人っきりで過ごしますの』と仰られていたので、私も自由時間はありますから、お願いできますでしょうか?」

「了解。」

「ありがとうございます!」


 食事後に僕と珠莉は1時間程魔法談議をしたのだが、どうして鍔須さんがそれを促したのか聞いたところ、


「珠莉さんはいつもお嬢様の側で苦労されているので、偶にはご褒美があっても良いかと思った次第です。それに、珠莉さんはあの容姿ですから、樹様も珠莉さんと2人きりでさぞかし良い思いをされたことでしょうし。」


 と言っていた。


(勿論、そのことをワレが美姫に報告したのじゃがのう。)

(エレナ様が余計なことをするから、僕が美姫から睨まれることになるんですよ。。。)

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