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竜の女王  作者: M.D
2171年冬
174/688

08

「調査団が来るという話は、私も初めて聞きましたの。」


 後部座席から華恋が話に割り込んできた。


「お嬢様は儀式に立ち会われないため、調査団のことについてはお伝えしておりませんでした。申し訳ありません。」

「今回は許しますの。次回からは全て話して頂戴。」

「承知致しました。」


「調査団に魔法使いはいますの?」

「はい。調査を行う筆頭研究者と護衛の方が魔法使いだと聞いております。」

「魔法使いが2人もいるんだったら封印が解けたとしても安心ですの。私たちも調査団に入れてもらえば、儀式の見学ができるかもしれないですの。」

「お嬢様、儀式の見学はしない、という約束ではございませんでしたか?」

「危険はないのでしょう?だったらいいじゃないの。それとも、セバスチャンは私に儀式を見せたくない理由でもありますの?」

「いえ、そのようなことは。ただ、儀式は祠を閉じて行われますので、外からは何も分かりませんが。」

「調査団は祠の中に入れるのでしょう?だったら、私たちも入れてもらえばいいだけのことですの。」

「いえ、祠の中に入れるのは、選ばれた巫だけです。調査団の方々は観測装置などを祠の中に設置されて、外からそれを観測されるそうです。」

「そう。それでも良いですの。儀式を見学することは決定事項ですの。」

「承知致しました。予定の変更を行います。」


 鍔須さんは困った顔をしながらも頷いた。



(もう、華恋ちゃんは強引すぎですよ。)

(しかし、そのおかげでワレらも封印の儀式を見られるのじゃから、結果としては良かったのではないかのう。)

(ワシも興味がありますが、何も起きなければよいのですがな。)

(それが心配なんです。)

(ワレらがついておるのじゃから何が起きても大丈夫なのじゃ。)


(それはそうと、エレナ様とグレンさんは先程の話についてどう思いますか?)


 鍔須さんの話についてエレナ様とグレンさんについて質問する。


(鬼が封印されるに至った経緯のことじゃな。グレンは鬼を見たことがあるのかのう?)

(はい。しかし、ワシが出会った鬼はまだ生成でしたので、負かすのは容易でしたな。)

(見ただけでなく、退治もしておったのじゃな。)

(はい。)


(グレンさん、生成、って何ですか?)

(鬼は人の魂、つまり精神エネルギーを取り込むことによって力を増していくのですな。鬼になりたての状態は生成と呼ばれており、強さは初級魔法使いとさほど変わりませんな。ワシが鬼と相対したのは第一次悪魔大戦直後でしたので、鬼になったばかりで魂をあまり集められていなかったのでしょうな。それほど強くはありませんでしたな。)

(鬼は得た魂の量によって進化する、ということですか?)

(そのように言われていますな。今回は封印されており、その封印方法の研究をしている、とのことなので例外扱いされているのかもしれませんが、見つけ次第討伐する、というのが基本ですな。)

(強くなる前に、ですね。)


(そのとおりですな。封印が可能であったことから、今回の鬼は生成の段階であると思われますな。しかし、話を聞く限りではそれなりの魂を集めておったようですので、中成になりかけていたの可能性がありますな。)

(中成、ということはその先があるんでしょうか?)

(中成の鬼が更に魂を得ると、最終段階として真成となり、下級悪魔と同等の強さを持つ、と言われていますな。)

(急激に強くなるんですね。)

(そうなのですが、真成になるためには相当量の魂を集める必要がありますので、ほとんど存在は確認されていないのですな。)


(下級悪魔と同等の強さを持つのなら、真成の鬼は上級魔法使いでも単独で倒すのは難しい、ということになりますか?)

(そのとおりですな。日本ではありませんが、旧ブルガリアで上級魔法使いの候補者たちによって真祖の吸血鬼の討伐が行われたときには死者がでた、と記録されていますな。世界各地の人型の魔物は、最終的にはどれも下級悪魔と同等の強さを持つようになるのでしょうな。)


 グレンさんの話を聞いて、頭の片隅にあったぼんやりとした疑問が明確になった。


(前にエレナ様から魔獣の発生原因について説明してもらったときから疑問に思っていたのですが、日本では精神エネルギーを増加させる呪いを受けた人間は鬼になるのに対して、欧米では吸血鬼になるのは何故なのでしょうか?)

(それはワシにも分かりません。エレナ様はご存知でしょうか?)

(ワレらの研究によると、心のありようによるところが大きいようじゃ。)

(どういうことでしょうか?)

(魔族によって呪いを受けた際に、その者が心の奥底に持っている悪の対象に変化する、ということじゃ。日本ではそれが鬼であったのじゃろうのう。)

(なるほど。日本では子供のころに悪者として鬼がでてくる話が多いから、それが意識の深層に刻まれているのかもしれませんね。)

(そうですな。それであれば地域によって異なる人型の魔物になる理由に説明が付きますな。)


(さらに、グレンは『鬼の最終段階は真成』と言ったが、魔族によって呪いを受けた人間は皆、最終的には蛇になるのじゃ。)

(確かに、真成は耳もなくなり、蛇に近い見た目となりますな。それに、聖書にもイブをそそのかす蛇が出てきますし、蛇への恐怖は全人類共通なのでしょうな。恐らく、まだ哺乳類が弱者であった太古の昔から刻まれた恐怖なのかもしれませんな。)

(グレンさんは博識ですね。)

(だてに長いこと生きてはおりませんですからな。今は精神エネルギー体ですが。)

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