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竜の女王  作者: M.D
2171年冬
169/688

03

「以上で、入学式の予行演習を終わります。お疲れさまでした。」


 紫さんが予行演習の終了を告げる。


「後は本番を待つばかりだな。」

「諒太、生徒会長の挨拶をとちったら、私の晴れ舞台を汚した罪で後々まで恨みますの。」

「華恋こそ、新入生代表挨拶でかんだりしたらダメだぞ。」

「そんなことしませんの。でも、去年の新入生代表挨拶は御姉様ではなかったのですのね。」

「私は編入生だったし、私よりも優秀な生徒がいたからね。」

「そんなことありませんの。在校生、いえ、ここ10年間でも御姉様に勝てる生徒なんていませんの。」


「そ、そうかなぁ?」

「俺も華恋の意見には賛成だな。去年の魔闘会でも美姫さんの班が3人そろられていれば、俺たちは確実に負けていただろうし。」

「そうですの。あんなへっぽこな”楯系”魔法使いしか御姉様の班に入れないなんて教師たちは何を考えていたのか分かりませんの。」

「いや、樹は高校に上がる直前で魔法使いの能力に目覚めたんだ。半年であれだけできるようになれば十分以上だろう。」


「華恋様、そろそろ美姫様のご予定を伺った方がよろしいのでは?」


 雑談を遮って、珠莉が華恋に声を掛けた。


「そうだったですの。御姉様、来週末はご予定などありませんか?」

「今のところ特にないと思うけど、どうして?」

「うちの執事であるセバスチャンの地元で、50年ぶりに鬼の封印儀式なるものが行われるらしいのですが、それが来週末なのですの。こんな機会は滅多にないことですので、見学させてもらおうと思っているのですが、御姉様もご一緒にどうかな、と思いましたの。」

「そうね、、、」


「華恋、突然そんなことを言ったら美姫さんも困るだろう。」

「私に意見をするなんて諒太のくせに生意気ですの。それに諒太は来れないんでしょう?」

「俺も今朝、珠莉から聞いたんだが。もう来週末は友達とスキーに行く予定が入っているから、行けないのは仕方ないじゃないか。」

「そうだったとしても、私との予定を優先すればいいだけのことですの。」

「はぁ、、、華恋らしい考え方だな。珠莉も前から決まっていたんだったら早く言ってくれ。俺にも予定というものがあるんだ。」

「申し訳ありません。華恋様が自分でお伝えする、と仰っておられたので。ですが、時間切れということで、僭越ながら私の方からお伝えさせて頂きました。」

「そうだったのか。」


 諒太さんは呆れ顔だ。


「美姫さんにも事前に話しておいた方が良かったんじゃないのか?」

「御姉様の情報端末の番号を知らなかったから、今日までお伝え出来なかったのですの。」

「それなら尚更、俺から美姫さんに連絡できるよう、俺に早く言っておくべきだったんじゃないか?」

「私から伝えたかった、と言っていますの。」

「面倒くさい奴だな。」

「諒太にそんな事言われたくありませんの。」


「御姉様、どうでしょうか?」

「場所はどこなの?」

「富士山の麓ですの。金曜日の夕方に車でこちらを出発し、2泊して日曜日に戻ってくる予定でいますの。もちろん、費用はこちら持ちですから、御姉様に負担をかけるようなことは致しませんの。」

「そこまでしてもらうのは申し訳ない気がするけど。」

「いえ、私からお誘いしていますので、このくらいは当然ですの。」


「その儀式って見学させてもらえるようなものなの?」

「儀式自体は見学できませんが、鬼が封印してある祠はこの儀式前の2日間しか中を見れないそうなのですの。御姉様は鬼を見たことがありますか?」

「写真でしか見たことはないよ。」

「私も本物を見たことがなく、折角の機会ですので御姉様もお誘いしようと思いましたの。」


(樹は鬼を見たことがある?)

(高校に入るまでは平凡な学生だったんだし、鬼が現実にいるなんてことすら知らなかったから見たこともない。)

(そうよね。)


「樹も一緒にいいかな?」

「嫌ですの。どうしてそんなどこの馬の骨とも分からないような輩を招かないといけないのですの?」

「じゃぁ、私も行かないことにする。」

「えっ!?どうしてですの?」

「華恋ちゃんには分からなくてもいいよ。それに、樹のことを酷く言うのはやめてくれる?」


 美姫は苛立たしげだ。


「そうだぞ。樹は華恋の先輩なんだから、その言い方はないだろう。」

「諒太まで何を言いますの?」

「華恋、もう少し人付き合いというものを学べ、と何度も言ってるだろう?誰しもが華恋のことを桐生家当主の姪、という見方をして、尊大な態度を許容してくれるわけじゃないんだから。」

「諒太に言われなくとも、そんなこと分かってますの。」

「どうだかな。」

「・・・分かりましたの。樹も来ることを許可しますの。」


(嫌々誘われても嬉しくないし、正直行きたくない。)

(そうね。華恋ちゃんも、そこまで樹を邪険にしなくてもいいのに。)


「そこまで嫌われているんだったら行かなくてもいいかな。」


 僕の言葉を聞いた華恋が驚いた表情を見せた。


「わ、わたしが許可したというのに断るなんて無礼ですの。」

「華恋、さっき俺が言ったことを聞いていたか?」


 諒太さんはまたしても呆れた顔をしている。


「私から補足させて頂きますと、華恋様は樹様に悪意をもって言われているわけではありません。華恋様のことを利用しようと狙っている方々が多くおられるため、自衛意識が高まっており、あのような発言につながってしまったのです。」

「そうそう。華恋も本家筋の人間だから少し自意識過剰になってるんだよ。樹のことをもっと知れば、危険はないことが分かるはずなんだ。俺の顔に免じて、今回は許してやってくれ。」

「2人がそう言うのであれば、参加させてもらいます。」

「樹、分かってくれたか。」

「私からも感謝を。」


「それでは、御姉様も来て頂けますか?」

「樹が一緒なんだったら、参加させてもらうよ。」

「良かったですの。では、金曜日の夕方に車で迎えに行きますから待っていて下さい。」

「分かった。」

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