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竜の女王  作者: M.D
幕間5
165/688

02

「行ってしまったわね。」

「そうですね。」


 百合子さんの乗った飛行機が見えなくなるまで展望台で見送った。


「この後はどうする?2人は昼食はまだ?」

「はい。百合子さんを見送った後に食べようと思っていたので。陽菜さんは?」

「私も。それじゃ、どこかで食べて帰る?おごってはあげられないけれど。」

「はい。でも、どこにしましょうか?」

「そうね、、、、」


 3人でどこで昼食にするか迷っていると、


「美姫ちゃん!」

「旬果お姉ちゃん!?」


 僕たちを見つけた旬果さんが駆け寄って来た。


「どうしてここに?」

「豊少佐がヒューストンでの会議に出席するから、空港まで車で送ってきたついでに見学をしていたの。美姫ちゃんは?」

「私たちも百合子さんがヒューストン大学に留学するから、見送りに来たの。」

「そう。東大で久しぶりに会ったばかりなのに、今日も会えるなんて奇遇ね。」

「私はもっと旬果お姉ちゃんと話がしたかったから、すぐに会えて嬉しい。」

「私もよ。」


「美姫さん、そちらはどなた?」


 陽菜さんが2人の会話の合間を見つけて質問する。


「旬果お姉ちゃんは、私のお姉ちゃんです。」

「いや、それじゃ説明になっていないでしょ。」


(旬果さんの言うとおり。美姫さんは旬果さんのことになると、途端に子供っぽくなるから。)

(えー、そんなことないよ。)


「小官は魔法軍情報戦略隊第一小隊所属 小野旬果少尉です。あなたは?」

「東大附属高校3年生渡辺陽菜です。来年からはロンドン大学に留学し、魔法軍ロンドン駐在予備武官となりますので、ロンドンにお越しになる際には声を掛けて頂ければ幸いです。」

「私みたいな若輩者がロンドンまで行くような用事があることはないと思うけど、そうなった時にはよろしくね。」

「はい。」

「渡辺家、ということは留学先はロンドン大学の”銃剣系”剣型専門学科ね。あそこは競争倍率が高いと聞いているから、陽菜さんは優秀なんでしょうね。」

「いえ、そんなことはありません。ロンドン大学に入学して、落ちこぼれないか少し不安に思っているくらいです。」

「陽菜さんなら大丈夫ですよ。」

「美姫ちゃんがそう言うなら、大丈夫だと私も思うわ。」


「ところで、3人はお昼はまだ?」

「うん。旬果お姉ちゃんは?」

「私もまだだから、一緒にどう?おごるわよ。」

「やった。どこにする?」

「そうね、、、チキンオムライスが美味しい店にしましょうか。それでいい?」

「うん。」

「僕も賛成です。」

「ご馳走になります。」

「それじゃ、車で行くからついてきて。」


 旬果さんについて駐車場まで行く道すがら、


「おごってくれるとは、やはり社会人はお金を持っているな。」


 と陽菜さんが呟いたのを聞いてしまった。



「旬果お姉ちゃんは休日はどんなことをしているの?」

「最近は忙しくてまともな休日なんてなかった、かな?家ではただひたすら寝て過ごすだけだったし。」

「えー!?旬果お姉ちゃんがそんなことを言うなんて信じられない。」

「私も社会人になって変わったのよ。」


 店に向かう車内では美姫さんと旬果さんが前に座り、楽しく話をしている。


「陽菜さんの出発は明後日でしたっけ?」

「そうよ。もう準備はできているし、後は出発を待つだけね。」


 陽菜さんと後部座席で話をする。

「聡が『姉貴が留学の準備をちゃんとしているか心配だ』と言っていたのですが、準備できているのなら心配ないですね。」

「そうなのよ。持っていける量には限りがあるのに、これも必要じゃないか、あれも必要じゃないか、って言ってくるから鬱陶しいのよ。そんなに持っていけない、って言っても聞いてないみたいだし。」

「そうだったんですか。聡の言い分を聞いて、陽菜さんは準備とかそういうのが苦手なんだと思ってしまってました。」

「どちらかというと聡の方がそうね。ちょっと甘やかしすぎたかもしれないから、私がいなくなっても大丈夫なのか、私の方が心配よ。」

「大丈夫じゃないですか。何かあれば僕たちも補助しますし。」

「ありがとう。樹君がそう言ってくれると心強いわ。」


 会話が途切れたところで、先程の陽菜さんの自己紹介で気になったことを聞いてみる。


「陽菜さんはロンドン大学に留学するのに、魔法軍ロンドン駐在予備武官にもなるんですか?」

「あれ?樹君は魔法使いは高校を卒業したら4年間は強制的に国防軍に徴兵されるって知らなかったの?」

「いえ、高校を卒業したら国防軍に入隊しないといけない、とは聞いていましたが、海外の大学に留学するときも同じだとは知りませんでした。」

「そう言えば、留学生なんて年に1人いるかいないかくらいだから、国防軍への入隊については当人に直接説明する、って言ってたのを思い出したわ。ごめんね。」

「いえ、知らないのが普通で良かったです。」

「海外の大学に留学しても強制的に国防軍に徴兵されることに変わりはないわ。国防軍の中でも魔法軍は情報交換を密にするために主要な都市国家には独自の駐在事務所をもっていて、留学をする際にはそこの予備武官になることになっているのよ。」


「予備武官ですか?」

「武官と言っても、予備が付いていることで分かると思うけど、肩書だけがあるだけで実際には何もしないわ。大学に進学すれば予備役となって、4年間の徴兵を実質的に免除されるのは、海外に留学するときも同じなのよ。」

「そうだったんですか。」

「法律で徴兵しないといけないことになっているから私も来年には魔法軍の所属にはなるけれど、悪魔が襲来してくるくらいの事件がなければ、軍務につくことはないわ。魔法軍との関わりは、週に一回駐在事務所に顔を出すことくらいよ。」

「そこは東大に進学するときとは違いますね。」

「そうね。東大魔法学科は魔法軍の研究施設みたいなものだから行動の把握は容易だけど、留学先だとそうはいかないから。国防軍に入隊する形になって、わずかだけれど給金がでるから、週に一回駐在事務所に顔を出すのも給料の内よ。」

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