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竜の女王  作者: M.D
補講5
162/688

01

「今日は魔法陣について説明しよう。」

「はい。お願いします。」

「魔法陣って、やっぱり魔力を流し込むと魔法が発動するんでしょうか?」

「そのとおり。しかし、物語みたいに火がでたり、魔物を召喚できたりするわけではない。」

「やっぱり。いつもながら、現実は厳しいですね。」

「そんなものだよ。」


「さて、以前『特化型補助具は複雑な文様を彫ることによって、魔導力を変質させて様々な効果を付与する』と説明したが、魔法陣はその文様を平面に展開したものだ。」


 電子版に様々な魔法陣が映し出される。


「ということは、魔法陣は特化型補助具と同じような使われ方をするのでしょうか?」

「そのとおり。だが、魔法陣は特化型補助具というよりは魔法具に近い。」

「であれば、魔法陣の存在意義って何でしょうか?魔法具があれば魔法陣はいらないような気がします。」

「離れていても使えるとかですか?」

「いや、魔法の発動には魔力を必要とするから、魔法陣と言えども魔法使いが触れていないといけない。魔法を発動させられるだけの魔力を飛ばせるような特殊な魔法使いがいたら別だが。」

「そうですか、、、」


「魔法陣と魔法具の大きさの違いを考えてみるといいかもしれない。」

「・・・効果範囲でしょうか?」

「美姫さん、正解。例外もあるが、魔法具は身に着けて使うものだから影響を及ぼせる範囲は狭い。しかし、魔法陣であれば広範囲に魔導力を使用することができる。」

「なるほど。でも、魔法陣の利用方法が思い浮かびません。」


「魔法陣が最も多く使用されているのは野戦病院だ。」

「意外なところですね。」

「『治癒魔法は戦場ではとても役に立つ魔法』と話したことがあると思うが、治癒魔法を使える魔法使いは数えるほどしかいない。それに対して、治癒魔法陣は通常の2から4倍の速さでしか傷を治せないが、使える魔法使いの数は増えるから、とても役立つんだ。」

「そうか。治癒魔法を”使える”という程度の能力を有していなくても、魔法陣で補助してやれば治癒魔法を”使える”、ということですね。」

「そういうことだ。今日は樹君も冴えているな。」

「それ程でも。」


「さらに魔法陣の良いところは、複数人に対して治癒魔法が使用できることだ。治癒魔法を使える魔法使いの中でも複数人に対応できる魔法使いはほとんどいないんだ。それに対して魔法陣を使えば、治癒魔法を”使える”という程度の能力を有していなくても、複数人に対して治癒魔法が使用できる。」

「それを聞くと非常に有効な魔法陣だとわかりますね。」


「実は美姫さんと樹君が入院していた病室の床下にも治癒魔法陣が描かれているんだが、知っていたかな?」

「知りませんでした。」

「それであの病室の金額が高かったんですね。」


「魔法陣にも問題はあるんだ。魔法陣を大きくすれば効果範囲を広くすることは可能だが、魔力の使用量も増えていく。魔法陣の面積の増加に対して魔力の使用量の増加の方が大きいから、むやみに魔法陣を大きくすることもできないんだ。」

「いいことばかりじゃないんですね。」


「だが、解決策も編み出されている。どうしているか美姫さんと樹君は分かりますか?」

「魔法陣の文様を改良して魔力の使用量を最適化したとか?」

「それができたら最高なんだろうけど、実現できてはいないんだ。」


「魔力倍化でしょうか?」

「さすが美姫さん、正解です。魔力倍化と同じように、複数人で魔法陣に魔力を流すことができれば、1人当たりの魔力の使用量は少なくて済むため、巨大な魔法陣を運用することも可能になるんだ。」

「でも、魔力倍化って普通は双子の魔法使いに限定されているのではなかったでしょうか?」

「樹君はよく知っているね。しかし、それを可能にする装置を既に知っているはずだ。」


「複数人で魔法陣を使用する装置、、、って何だろう?美姫さんは分かる?」

「すぐには思いつかないけれど、先生が”装置”と言ったくらいだから、大きなものじゃないかな。」

「大きな装置か、、、」

「あっ、都市防衛装置!」


「そのとおり。都市防衛装置は汎用型補助具を使用することによって、複数人で魔法陣に魔力を流すことを可能にしていて、広範囲に”楯系”魔法を展開することをができているんだ。」

「すごいですね。」

「私もそう思う。前にも説明したとおり、汎用型補助具と特化型補助具を同時に使用することはできないが、特定の条件を満たせば汎用型補助具と魔法陣は同時に使用することができる。だから、魔法陣の適切な場所に汎用型補助具を配置することで、複数人で魔法陣に魔力を流すことができるようになるんだ。

 これはジャネットが発明したものではなく以前から知られていたことだし、複数の魔法陣を用いて巨大な魔法陣を形成する技術も知られていたんだ。ジャネットはそれらを組み合わせ都市防衛装置として広範囲に”楯系”魔法を展開することができるようにしたんだが、”楯系”魔法の魔法陣が存在しない状態から7年で開発をやり遂げたんだ。」

「本当にすごいですね。」

「汎用型補助具の配置や魔法陣の組み合わせ方も緻密に計算されていてとても美しいんだ。だから、都市防衛装置は一種の芸術作品だと私は思う。」

「『神は細部にやどる』って言うけれど、ジャネットさんの技術も神業ですね。」

「全くそのとおりだ。」



「最後は魔法陣の作り方だ。これは容易に想像がつくと思うが、”魔石”と”銀を主体とする金属”をインクに混ぜて魔力を流しながら文様を描くと魔法陣ができるんだ。」


 電子黒板にその様子が映し出される。


「魔法陣も職人が手作りしているんですか?」

「そう、補助具と同じなんだよ。だが、魔法陣は補助具ほど需要があるわけではないし、補助具と比べて作成が簡単だから、専門にしている職人はほとんどいないんだ。なので、魔法陣の大半は補助具職人が眼鏡に映し出される文様を指示どおりに描いたものなんだ。」

「映像の中の職人さんが眼鏡をかけているのにはそんな理由があったんですか。」

「たまにしか描かない魔法陣の複雑な文様なんか覚えてられないから、眼鏡に映し出されるとおりに描いていくんだよ。」

「それもそうですね。」

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