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――――2週間後。
「美姫ちゃん準備はいいかな?」
「大丈夫です。」
「それでは第144回魔力貯蔵実験を始めます。美姫ちゃん、魔力貯蔵具に魔力を貯めてみてくれ。」
「はい。」
前回と違うのは美姫さんが腕につけている魔力貯蔵具がバレーボール大、というところだ。
「次は魔力貯蔵具に貯めた魔力の放出だ。」
「いきます。」
バンッ!
美姫さんが巨大な魔力弾を放つ。
(どうだった?)
(魔力貯蔵具から魔力が供給されているような感じを受けたよ。)
(でも、前回と同じように、魔力貯蔵具を調べてみないと魔石がもともと保有していた魔力が供給されたのかどうか分からない、か。)
(そうね。でも、前回とは魔力が供給されたときの感覚が違ったから、成功しているかも。)
(本当?美姫さんがそう言うならきっと成功しているはず。)
(だといいんだけど。)
「さぁ、これで魔石が魔力貯蔵具の中に残っていれば成功だ。三成、美姫ちゃんから魔力貯蔵具を受け取って、分析装置に入れてみてくれ。」
「分かりました。が、魔力貯蔵具の中の主要部を取り外すと、もう一度組み上げて調整するのに時間がかかりますが良いですか?」
「そうだな、、、、」
「私にも試させてもらってもいいですか?」
修士課程2年生の西城千佳が提案するが、
「千佳は”大砲系”だから、”銃剣系”用の魔力貯蔵具は使えないだろう。」
「そうでした。残念。」
と、却下されていた。
「試すのであれば、、、夏帆はどうだ?」
貴文さんが修士課程1年生の小泉夏帆に問いかける。
「私でよければ、やらせて下さい。」
「よし。それじゃ、美姫ちゃんと変わってくれ。」
「はい。」
夏帆さんが実験室に入って、魔力貯蔵具を腕につける。
「重い!さすがにバレーボール大だと支持棒がないと魔力貯蔵具を支えられないわね。」
「そうですね。今回は魔力の収束率を改善するための時間がなかったので、魔力貯蔵具が大きくなるのは致し方ないと諦めましたから、支持棒が必要なのは仕方ないです。」
「そうね。実験が成功していれば、実用化するために魔力貯蔵具を小さくする方法については私たちが検討するわ。」
「お願いします。」
美姫さんが実験室の外に出て、実験が始まる。
「夏帆、準備はいいか?」
「大丈夫です。」
「それでは第145回魔力貯蔵実験を始めます。夏帆、魔力貯蔵具に魔力を貯めてみてくれ。」
「はい。」
夏帆さんが魔力貯蔵具に魔力を貯める。
「次は魔力貯蔵具に貯めた魔力の放出だ。」
「いきます。」
バンッ!
夏帆さんが巨大な魔導刃を放つ。
「すごい。こんなに大きな魔導刃を撃てたのは初めてです。」
「夏帆、本当か?」
「はい。美姫さんが一度使ったにも関わらず魔力貯蔵具からの魔力の供給も感じましたから、この実験は成功ですよ!」
夏帆さんが興奮気味に語る。
「しかし、魔石が魔力貯蔵具の中に残っていなければ成功とはいえない。三成、夏帆から魔力貯蔵具を受け取って、分析装置に入れてみてくれ。」
「分かりました。」
三成さんは魔力貯蔵具を分解して主要部を取り外し、分析装置で分析を始めた。
「・・・。」
「どうだ?」
「ちょっと待って下さい。・・・・成功です!魔石が残っています!」
「成功だーーーー!」
「よっっしゃぁぁぁぁ!」
「やったーーーー!」
皆がそれぞれ感情を爆発させた。
「美姫さん、成功だ。おめでとう。」
「ありがとう。」
(でも、エレナ様とグレンさんの指示に従っただけだから、私は何もしていないのと同じよ。)
(ワシもエレナ様の質問に答えるだけで、ほとんど何もしていないのと変わりませんな。なので、魔力結合理論を応用して魔力貯蔵具を作成する方法はエレナ様が単独で考案されたようなものですな。)
(そんなことはないのじゃ。前にも言ったが、このくらいワレにとっては容易いことじゃが、理解が早まったのは、グレンの基礎知識あってのものじゃ。)
(お役に立てて何よりですな。)
(でも、本当に成功してよかった。)
(うん。これで、天界に帰るというエレナ様の目的に一歩近づいたね。)
(次は、来年の東京での魔闘会予選で優勝して、ヒューストンに行くのが目標か。)
(そうね。ヒューストン大学の資料庫に保管してある魔力を放出する魔法の腕輪と今回作成した魔力貯蔵具があれば、エレナ様が天界に帰るための精神エネルギーを供給できると思うの。)
(希望が見えてきた。)
(うん。これも樹君がいてくれたお陰よ。)
(青春じゃのう。甘酸っぱいのう。)




