表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の女王  作者: M.D
2170年秋
156/688

25

 ――――15分後。


 こちらに駆けてくる足音が聞こえる。


「あれ?美姫ちゃん?」

「ん?旬果お姉ちゃん?どうしてここに?」

「それは私の台詞。美姫ちゃんこそどうしてここに?」


 軍服を着た旬果さんがこちらに近づいてきた。


「無駄口をたたいておらんと、現場の確保と調査に早く向かわんか!」

「承知しました。」


 去っていく旬果さんと入れ違いに、将校がこちらに歩いてくる。


「私は魔法軍情報戦略隊隊長 一条豊少佐です。お初にお目にかかります。龍野美姫さんですね?」

「はい。」

「ここの安全は我々が確保しましたので、もう安心です。」

「ありがとうございます。」

「お怪我はありませんか?」

「大丈夫です。」

「それは良かった。で、この者たちは?」


 豊少佐が倒れている襲撃者たちに目を向ける。


「突然襲われたので、何も分かりません。」

「そうですか。おい、この者たちを拘束して連れていけ。」

「承知しました。」


 豊少佐の命令を受け、襲撃者たちが連行されていくと同時に警報が止まった。


「さて、現状について私の方から簡単に説明しておきましょう。先程、資料室で何らかの事件が起きたことから、我々のところにも警報が鳴り、こちらに急行してきた次第です。まさか連行を行うという事態が発生するとは思わず、ここに残っているのは私1人になってしまいましたが、周囲は我々の部隊の者が警備を行っていますので、ご安心を。

 また、現在は事件の初期調査中であり、皆さまには申し訳ないが、初期調査結果が出るまではここにいて頂き、その後、国防軍の施設で事情聴取をさせて頂くことになりますが、よろしいだろうか?」

「え、えぇ、それで構いません。」

「では、しばしお待ち頂きたく。」


 僕たちを代表して訪さんが答えたあとは、誰も何も話そうとはしなかった。



「あの者たちは美姫さんが?」


 豊少佐が沈黙を破って美姫さんに問いかける。


「いえ、樹君が。」

「ほう。君が森林樹君か。君もやるようだな。」

「いえ、そんなことは。」

「銃を向けられても怯むことなく立ち向かい、さらに1人の犠牲者も出さないとは、実戦経験があるものであってもなかなかできることではない。」

「身体強化ができる魔法使いであれば、できると思います。」

「しかし、”全身の”身体強化を使えねばならない。高校1年生である君が”全身の”身体強化を使えること自体が驚きなんだよ。」

「それについては、美姫さんという良い教師がいたお陰です。」

「ほう。美姫さんも”全身の”身体強化を使えるのか。さすがは、圭一先生の娘さんというところだね。2人の魔闘会での活躍は目を見張るものだったから、それも当然か。しかし、樹君が魔闘会で発動させた魔導楯、あれは魔力の暴走なんかではないんだろう?」

「無我夢中でその時のことは覚えていないので、よく分かりません。火事場のクソ力だったのかもしれません。」

「まぁ、今はそういうことにしておこう。」


(あれだけ派手にやってしまったら、やっぱり隠し通せるようなものじゃなかったか。)

(そうね。あの時は私たちが無事に生き残ることで精一杯だったから、仕方ないんじゃない?)

(怪しまれるくらいで良かったと思うしかないか。)



――――10分後。


 旬果さんが戻ってきた。


「初期調査結果が出ましたのでご報告致します。」

「うむ。結果を聞こう。」

「警報の原因は水準3の資料室における主装置への不正侵入が原因と思われますが、OSの1つに改変を受けた痕跡を発見しましたので、まず間違いないかと。」

「やはり、か。続けてくれ。」

「はい。不正侵入方法についてですが、主装置につながる配線に異常が見られないことと、抜き差しされた履歴が残っていないことから、何らかの方法で不正侵入を受けたものと推定されます。」

「不正侵入ソフトを使われたか。」

「今のところ、不正侵入の方法が分からないため、詳細は不明です。」


「監視カメラの方はどうだった?」

「はい。監視カメラの映像を確認したところ、本日、水準3の資料室への出入りをしたのはそこにいる石田三成1人です。」

「僕は不正侵入なんてやってない!」

「まぁ、待て。誰も君が犯人だとは言っていない。ただ、本日、水準3の資料室への出入りをしたのは君だけだ、という事実を言っただけだ。」

「それでも――――」

「まだ初期調査の段階だ。監視カメラの映像だけで君を逮捕することはないし、君が犯人でないという証拠がこれから見つかるかもしれないから、あまり騒がない方がいい。」

「分かりました。」


(三成さんが犯人だったなんて信じられない。)

(私も。そんなことをするような人には見えなかったのに。それに、三成さんが不正侵入をする動機が分からない。)


(三成が犯人ではないじゃろう。)

(エレナ様は他に犯人がいるとお考えですか?)

(そうじゃ。真犯人も分かっておるのじゃ。)

(本当ですか!?)

(誰ですか?)

(それを美姫にこれから皆に伝えてもらおうと考えておるのじゃ。)

(今、私がですか?)

(そうじゃ。美姫はワレが考えた台詞を言うだけでよいのじゃ。それに、証拠が残っておる今でないといかんからのう。)

(分かりました。それで三成さんの無実が証明されるのであれば。)

(楽しくなってきたのじゃ!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ