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竜の女王  作者: M.D
2170年秋
153/688

22

 その日も放課後になっていつものように研究室に向かっていると、途中で三成さんを見つけた。


「三成さん、お疲れ様です。」

「2人ともお疲れ様。美姫さんに頼まれていた論文を調べておいたよ。」

「ありがとうございます。結果はどうでしたか?」

「美姫さんの推測が当たっていた、ってところかな。」

「それは良かったです。」


「・・・あれ?」


 研究室の扉の前で三成さんが立ち止まる。


「どうしたんですか?」

「無線鍵の調子が悪くてね。扉が開かないみたいなんだ。」

「昨日もそんな事言ってませんでした?」

「あの後、訪さんに見てもらったんだけど、故障してないそうなんだ。」

「壊れかけてるんですかね?」

「そうかもしれないな。稀に寿命が短い無線鍵があるらしいから、運悪く外れを引いてしまったんだろう。」

「とりあえず僕の無線鍵で扉を開けます。」

「すまない。」


 研究室に入って、三成さんから調査結果を聞く。


「・・・今日の調査結果は以上だ。」

「やはり、実験が失敗したのは魔力の収束が甘かったのが原因と考えて良さそうですね。前回も計算上は仕様を満たせていたんですが、検証できていないことがあったのかもしれません。」

「全てを見通すことはできないし、前回は新しい理論で製作した初めての魔力貯蔵具で知見の蓄積もなかったから、成功する確率の方が低かったのは皆が認めるところだよ。それに、実験結果を分析して原因と思われる要因を突き止められたんだから、次は成功するよ。」

「ありがとうございます。」


(エレナ様とグレンさんは実験が失敗したのは魔力の収束率が原因と判断して良いと思われますか?)

(それでいいのではないかのう。)

(ワシも同意見ですな。)

(お二人とも、いつもと違って歯切れが悪いですね。何か別の原因でもあるのでしょうか?)

(そんなことはないのじゃ。)

(他の原因もないと思いますな。)

(そうですか。それではこのまま進めます。)


「それでは、主に魔力の収束率を改善する、という方針で良いでしょうか?」

「それでいいと思うけど、そのためには魔力貯蔵具が実用に耐えられないくらい大きくなってしまうのが問題だな。」

「もう時間もないので、今回は魔力貯蔵具が大きくなるのは致し方ないと諦めないといけないですね。」

「次は失敗するわけにないかないし、仕方ないか。」

「実用化するために魔力貯蔵具を小さくする方法については実験が成功した後に考えたほうが良いと思います。」

「そうだな。」


「で、これからはどう進めようか?」

「今日は私も資料室に行って、良い方法がないか探そうと思います。見つからなければ今ある結果をもとに魔力貯蔵具の製作を始めます。」

「分かった。前回と同じように主な部分の作成は2人にお願いするとして、検証作業と魔力貯蔵具の外部製作は僕たちで行うよ。」

「お願いします。」


「今後の方針が決まったところで、これから訪さんのところに行って無線鍵を見てもらうことにするけど、2人はどうする?」

「僕も資料室に行くつもりです。」

「それじゃ、3人で事務局に寄ってから一緒に行きませんか?」

「分かった。そうしよう。」



 3人で事務局まで向かう。


「訪さんいますか?」

「あら、石田君どうしたの?」

「無線鍵の調子が悪くなったみたいで、扉が開かなくなってしまったので調べてもらえませんか?」

「またなの?」

「すみません。」

「分かったわ。無線鍵を貸して。」

「はい。」


 三成さんが訪さんに無線鍵を渡すと、訪さんは奥の装置で検査をしに行った。


(ほう。)

(エレナ様、どうされましたか?)

(いや、何でもないのじゃ。)

(そうですか。)


「三成さんは訪さんがどんな検査をしているのか分かりますか?」

「詳しくは分からないけど、たぶん電波強度を測ったり、内部の演算装置が故障していないか調べたりしてるんじゃないかな。」

「こんなに小さいのに中に演算装置が入っているんですか。」

「この無線鍵は最新型だからね。ひと昔前の情報端末に負けないくらい強力な演算装置が入っているらしいんだ。」


 訪さんが戻ってくる。


「何も問題ないみたいだけど?」

「そうですか。おかしいなぁ?」

「壊れかけているのかもしれないわね。交換したほうがいいと思うから、申請をしておいて。申請の仕方は知ってるわよね?」

「はい、知ってます。ありがとうございました。」


 事務局を出て、資料室に向かおうとした時だった。


 ビー―!ビー―!ビー―!


 突然、警報が鳴り始めた。

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