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竜の女王  作者: M.D
2170年秋
150/688

19

 次の日から放課後になると研究室に通う日々が始まった。


(まずは手分けして魔力結合理論について最新情報の収集から始めねばなりませんな。)

(そうじゃのう。ワレらとて、情報がなければ何もできんからのう。)

(では、エレナ様と美姫さんは水準3の資料室で、ワシと樹君は水準2の資料室で情報を集めましょう。)

(グレンさんは水準3の資料や論文を見たかったのではないんですか?)

(ワシは樹君を介してエレナ様や美姫さんと情報を共有できるので、どちらが水準3の資料室にいようと変わらんのですな。美姫さんの方が樹君よりも優れていると認識されているようなので、美姫さんに水準3の資料室に行ってもらった方が良いと考えたのですな。)

(成程。分かりました。)


(樹君、ワシらは水準2の資料室に行きましょう。)

(了解。)


 水準2の資料室に入り、情報端末で資料を閲覧する。


(おぉ、素晴らしいですな。水準1の資料では原理が不明確で分からなかった魔法技術の説明が詳細に載っておりますな。)

(・・・。)

(ほうほう、なるほど、そう言うことですかな。)

(・・・。)


 グレンさんがかなりの速度で資料を読み込んでいく。


(そんなに速く資料を読んだら、怪しまれないですかね?)

(流し読みをしている風を装っておりますから、大丈夫だと思われますな。)

(だといいのですが。)



 ――――1週間後。


「ふわぁあぁぁ。」


 研究室に通う道の途中で、盛大なあくびが出た。


「樹君、寝不足?」

「ここ2、3日頭が痛いし、凄く眠いんだ。難しい内容を詰め込みすぎたかな。美姫さんはそんなことない?」

「私もいつもよりは少し眠い気がするけど、大丈夫よ。」

「情報収集が負担になっているのは僕だけか、、、」


(樹君、それはワシらのせいかもしれませんな。)

(どうせグレンさんたち、というかエレナ様のせいでしょう。)

(何を言っておるのじゃ。美姫に負担をかけるのはよくないから、ずっと樹の演算領域を使って魔力結合理論について議論しておっただけじゃ。)

(ずっと、って夜もですか?)

(そうじゃ。)

(そうじゃ、じゃないです。僕が頭が痛い上に眠いのはそのせいで脳を休ませられてないからじゃないですか、、、)

(そうです。エレナ様、樹君のことも労わってあげて下さい。)

(美姫がそう言うのであれば善処しようかのう。)

(絶対しないくせに。)

(樹、何か言ったかのう?)

(いえ、何も。)


(しかし、樹のおかげでおおよそ魔力結合理論は理解できたのじゃから、良しとするのじゃ。)

(エレナ様は素晴らしいですな。ワシ1人だと10年かかってもこの結論には到達できませんでしたな。エレナ様と議論できたことに感激しております。)

(さすがはエレナ様。先の第9次聖魔大戦においても理解の速さによって魔族が用いる戦術の穴を見抜き、俺たちは何度も助けられました――――)


 ザグレドがエレナ様を褒め称えるだけのためにまたしても出てくる。しつこい。もう出てこなくていい。


(このくらいワレにとっては容易いことじゃが、理解が早まったのはグレンの基礎知識あってのものじゃ。)

(お役に立てて何よりですな。)

(後は魔力貯蔵具とやらを作るために魔力結合理論を応用するだけじゃのう。)

(そのためには膨大な計算が必要ですが、時間もないので計算時間の捻出が問題ですな。)

(それでじゃ、樹、3日ほど学校を休むのじゃ。)


 は?


(エレナ様の言っている意味が分かりません。)

(ワレの意図が分からんとは情けないのう。魔力貯蔵具を作るための計算に樹の演算領域をすべて使うと、その間眠ったような状態になるから動けんじゃろう。じゃから学校を休め、と言っておるのじゃ。)

(そんな、ひどくないですか?)

(そうは思わんがのう。)


(エレナ様、私の演算領域も使うことで計算時間を短縮できませんか?)

(いや、美姫の演算領域も日常生活に支障のない程度に使わせてもらうのじゃ。それに、美姫と樹がそろって3日間も休むと不自然じゃし、研究も進んでおらんように見えるじゃろう。)

(そうですけど、、、)

(土日を含め、樹が3日学校を休めは5日間全力で計算することができるのじゃ。それで基本となる計算結果は出るじゃろうから、上手くいけば微修正にはそんなに演算領域を必要とせんじゃろう。)


(樹君には申し訳ないが、エレナ様の提案を受け入れてもらえないでしょうか?)

(グレンさんまで、、、)

(エレナ様はあれで樹君のことも気にかけておられるのですな。エレナ様であれば強制的に樹君の演算領域をすべて使うこともできるにも関わらず、事情を説明されたこともそれを証明していますしな。)

(そうですけど、、、まぁ、3日程度であれば授業の挽回も可能かもしれもません。)

(それでは、お願いできますかな?)

(僕が負担することで丸く収まるなら、今回は引き受けます。)

(恩に切りますな。)

(いえ、いつもグレンさんには助けてもらっているので、少しは恩返しもしておかないといけないですし。)

(ワシらはエレナ様の計算の邪魔になるので、ザグレド(猫)の中に退避することにしますな。それと、5日間眠っている間はピアリスに樹君のお世話してもらえるよう頼んでおきましょう。)

(私も後で樹君に授業内容を教えられるようにしておくね。)


 結局、僕は風邪を引いたという名目で、3日間学校を休んだ。

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