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竜の女王  作者: M.D
2170年秋
146/688

15

 サーバから取り外したディスクを渡してから3日後、美姫さんに貴文さんから電話がかかってきた。


「美姫ちゃん、今いいかな?」

「はい。ちょうど放課後になったところなので、大丈夫です。研究はうまくいったんですか?」

「話したいことはそのことなんだ。美姫ちゃんが持ってきてくれたディスクの中に、想像した通り圭一先生が得た手掛かりに関する情報が存在していたんだ。」

「それは良かったです。」

「ただ、その手掛かりを使っても上手くいかない部分もあって、圭一先生の考え方の解釈が間違っているのかもしれないから、美姫ちゃんにデータを見てもらおうと思って。」

「私が見て分かるようなものなんですか?」

「美姫ちゃんが見てもたぶん分からないと思うけど、圭一先生の考え方については美姫ちゃんの方が僕たちよりも詳しいだろう、ということになって、ヒントでも得られたら、という藁にもすがりたい気持ちなんだよ。」

「そういうことですか。」


「申し訳ないんだけど、今から研究室に来てくれないかな?」

「今からですか?」

「あぁ、ダメかな?」

「いえ、今日は特に用事もないので行くことはできます。」

「じゃぁ、お願いできるかな。」

「分かりました。」

「ありがとう!入門申請は済ませておくから、前と同じように研究室まで入ることができるはずだ。」


 電話を切った美姫さんが話しかけてきた。


「今の会話聞いてた?」

「エレナ様が実況生中継してくれたけど、今から研究室に行くの?」

「うん。父が残したデータを私が見ても何も分からないと思うんだけど。」

「同感。」

「それで、ディスクを渡しに行った時と同じように私1人で行くから、樹君にはエレナ様を通して話を聞いておいてほしいの。」

「それは構わないけど。」

「ありがとう。」

「美姫さんに何かあれば、グレンさんに協力してもらって助けに行くよ。まぁ、エレナ様がいるからそんなことにはならないと思うけど。」


(当り前じゃ。)



 美姫さんは貴文さんの研究室に出かけ、僕は自室のベッドに寝っ転がって美姫さんたちの会話を聞くことにした。


「美姫ちゃん、よく来てくれたね。早速だけど、データを見てくれないかな?」

「分かりました。」


「これなんだけど。どう?」

「『どう?』と言われましても、、、」

「ごめん、ごめん。まずは経緯を話すよ。」

「はい。」

「研究が行き詰っていた問題は2つあって、1つは美姫ちゃんが持ってきてくれたディスクに入っていた情報が手掛かりとなって解決できたんだけど、もう1つは上手くいかなかったんだ。」

「それが電話で言っていたことですか。」

「そう。圭一先生は時間がなかったのか、思いついたことをそのまま文章にしたみたいで、表現が少し分かりにくくなっているんだ。それでも何とか解読して、得られた情報をもとに試作品を作ってみたんだが、所望の性能が得られなくてね。」

「確かに、走り書きしたみたいな読みにくい文章ですね。」

「だろう?美姫ちゃんは圭一先生と一番長く一緒にいたから、僕たちよりも圭一先生の考えたことが分かるんじゃないかと思って来てもらったんだ。」

「そういう事ですか。」


「美姫ちゃんは圭一先生から研究について何か聞いていることがあれば、それが手掛かりになって、この文章の意味が分かるかもしれない、と思ったんだけど、どうかな?何か分からない?」

「素直に読むと、『”銃剣系”の魔石は”大砲系”の魔石と”楯系”の魔石が魔力のやり取りをするのを媒介できる』と書いてあるようですが、違うんですか?。」

「簡単に言うとそういう事だと僕たちも思ったんだけど、それが分かったところで、どうやって魔力のやり取りを媒介させるのか、という問題が浮かび上がってくるんだよ。」

「そうですね。」

「それに、これだけのことを記録するにしては回りくどい書き方になっているから、この文章には他に何か意味があるんじゃないか、と考えて僕たちなりに解釈して試作品を作ったんだが、上手くいかなかった、というのは話したとおり。美姫ちゃんは何か分からない?」

「うーん。すぐには分かりません。」

「そうか。今後どうしたらいいのか、、、」


(こやつの行っておる研究は魔力貯蔵具じゃったかのう?)

(はい、そうですが、エレナ様は何かご存じなんですか?)

(ワレは何も知らぬが、魔力貯蔵具が完成すればワレの目的を達成するのに役立つかもしれん、と考えたのじゃ。)

(つまり、魔力増幅具が見つかったとしても、一度使うと壊れてしまうから、私と樹君が魔力量が足りなければ無駄になるかもしれなかったところを、魔力貯蔵具を使えば足りない魔力量を補えうことができる、ということですね。)

(そういうことじゃ。美姫は理解が早くて助かるのう。)

(それなら、是が非でも父の文章を読み解いて貴文さんに魔力貯蔵具を完成させてもらわないといけないですね。)

(そうなんじゃが、、、美姫が研究を手伝って魔力貯蔵具を完成させる、というのはどうじゃ?)

(私が、ですか?)

(そうじゃ。ワレも協力するからすぐできるじゃろう。それに、グレンも魔石の研究をしておったそうじゃし、知恵を貸してくれるかもしれんのじゃ。そうなると、その器として樹も参加決定じゃのう。)

(分かりました。エレナ様のために頑張ります。)


「貴文さん、お願いがあるんですけど。」

「何?」

「私に研究のお手伝いをさせてもらえませんか?」

「美姫ちゃんが?そうしてくれるのは嬉しんだけど、急にどうしたの?」

「父のせいで貴文さんが困っているので、娘の私がお手伝いすることで少しでも力になれたら、と思ったんです。」

「そう。うーん、どうしようか、、、」

「ダメですか?」

「部外者に研究をさせることはできないんだけど、、、そうか、短期の研究生ということにすれば何とかなるかもしれない。書類は僕の方で用意するから、申請がとおったら連絡するよ。」

「ありがとうございます。」

「礼を言わないといけないのは僕の方だ。美姫ちゃんがいれば鬼に金棒だ。」

「そんなことないです。」


「もう一つお願いがあるんですが。」

「何?」

「樹君も一緒にお手伝いすることは可能ですか?」

「彼氏が必要なの?」

「樹君は私が気づいていないようなことをよく指摘してくれるので、今回も問題解決につながる指摘をしてくれると思うんです。」

「でもなぁ、、、」

「お願いします。」

「・・・分かった。研修生の申請をするのに1人も2人もそんなに手間は変わらないから、彼氏の分も申請しておくよ。」

「ありがとうございます。」

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