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竜の女王  作者: M.D
2170年秋
145/688

14

 地下から戻るとすぐにノートを調べることになった。


「だいぶ燃えてしまってるから、文章がとびとびで読み辛い。」

「それでも樹君のお陰で、父が悪魔を隠していた理由を探る手掛かりになるノートを手に入れられたんだから感謝している。」


「あっ!」


 ノートをめくろうとすると、端が欠けてしまった。


「かなりもろくなっているみたいだ。」

「もっと優しくめくらないと。これ以上欠けてしまったら内容を読み取れなくなるよ。」

「了解。」


 慎重にめくりながら読み進める。


 ・・・・


「悪魔と人間が融合するときの主人格の主導権争いについて、悪魔から聞き取った内容が書いてあるようね。」

「読み取れた内容はグレンさんに聞いた内容とほぼ同じだから、悪魔は美姫さんお父さんに嘘を教えたわけではなさそうだ。」

「どうして父は悪魔と人間との融合について悪魔から聞いたのかな?もしかして、悪魔と融合するつもりだった、とか?」

「それはどうなんだろう?ここに書かれているのは、悪魔から引き出した情報の一部かもしれないし。」

「そうね。少ない情報から判断するのは良くないね。でも、父が悪魔が持つ知識に興味を持っていて、悪魔から情報を聞き出していたことが分かって良かった。」


「問題は、どうして美姫さんお父さんがここに悪魔を隠してまで悪魔が持つ知識を手に入れる必要があったのか、ということだ。」

「そうね。グレンさんの言うとおり、悪魔を研究する公的な機関があるのに、そこに引き渡さずに悪魔から情報を聞き出していたんだから、後ろめたいことがあったのかもしれないね。」

「美姫さんお父さんにも後ろめたいことがあったのか。」

「前にも言ったけれど、父は聖人君子ってわけじゃないし。そう思えば、母が亡くなってから父の言動に影が差すようになった気がするから、悪魔から聞きたかったことって、母に関することかもしれない。」

「今の状態だと手掛かりが少なすぎて、そうとは言い切れないから、もっと手掛かりを集めないと分からないな。でも、どうしたものか。」

「父の部屋に本がたくさんあったから、それを調べれば何か分かるかもしれないよ。」

「同意。まずは美姫さんのお父さんの部屋にある本を調べるところから始めますか。」


(その前に、夕食にするのー。)


 ミーちゃんが鍋をもって飛んできた。


(ミーちゃん、お鍋作ってくれたの?)

(はい、なのー。美姫、このお鍋好きだったから―。)

(ありがとう。樹君、まずは夕食にしましょう。ミーちゃんが作った鍋料理はすごく美味しいのよ。)

(そうなんだ。ミーちゃんが作った料理を食べるのは初めてだから、楽しみだ。)


(この前もずっと作ってあげてたのー。)

(いや、あれは料理と呼べるのか、、、)

(ちゃんと栄養バランスも考えてたのー。)

(でも、流動食だっだし。)

(仕方ないじゃない。樹君は特訓で疲れすぎていて食事をとる体力が残ってなかったんだから、ミーちゃんが特別に作ってくれたんだよ。)

(そーなのー。感謝するのー。)

(それはありがたいことだったんだけど、味わうことなく流し込まれるだけだったから。)

(私も樹君に流動食を流し込むのは心苦しかったけど、そうしないと樹君は食事を取れない状態だったの。)

(美姫さんにそこまでしてもらって、迷惑をかけてゴメン。)

(いいのよ。樹君は私の特訓に付き合ってくれてたんだから。)

(情けは人の為ならず、ってやつ?)

(そういうこと。)


(しかし、あの特訓の日々はつらかったなぁ。)

(樹君、遠い目をしてるよ。)

(だって、特訓が終わった後の食事は流動食だし、神経系を鍛えるとか言って、すぐにエレナ様に気絶させられて気が付いたら朝になっていてまた特訓が始まる、という毎日だったから。)

(私もそんな毎日は嫌かな。)


(また来年も鍛えてやるから期待しておるのじゃ。)

(エレナ様、やっぱり来年もやるんですね。)

(当然じゃ。樹は弱っちぃんじゃから、すこしでも鍛えて強くなってもらわんといかんからのう。)

(それはそうなんですけど、もう少し手加減してくれてもよくないですか?)

(人間というものは限界まで鍛えんと急成長は望めんからのう。ワレも樹のためを思って、心を鬼にして鍛えてやっておるのじゃ。)

(エレナ様は神様なんだから、心が鬼にはならないでしょう。)

(ものの例えじゃ。樹は屁理屈ばかりいいおるのう。)


(そんなこと言ってないで、早く食べるのー。)

(そうね。ミーちゃんの言うように、冷めなうちに早く食べましょう。)

(同意。)


 机の上を片付けて、食事の準備をする。


「「いただきます。」」


「出汁がきいてて、おいしい。」

「でしょ。ミーちゃんが作る料理はどれも美味しいんだけど、私はこのお鍋が一番好きなの。」

「美姫さんが言うのも分かる。こんなおいしい鍋料理を食べるのは初めてだ。」


(えっへん、なのー。)

(ミーちゃん、ありがとう。)

(どういたしましてなのー。)


 あっという間にお鍋は空になった。


「美味しかった。もう満腹。」

「私も。このお鍋だったら毎日でも食べられると思うけど、食べ過ぎてしまって太っちゃったら困るから自制が必要ね。」

「美姫さんは今の均整のとれた体つきもいいけど、ちょっと太って豊満というのも――――」


(美姫をいやらしい目で見るのはダメなのー。一発いっとくー?)

(いや、雷撃は勘弁して下さい。)


 夕食後とその次の日も美姫さんのお父さんの部屋にある本を調べてみたが、手掛かりになりそうな本はなかった。

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