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竜の女王  作者: M.D
2170年秋
141/688

10

 週末、僕たちは美姫さんが以前住んでいた穴倉の隠れ家にやってきた。


(あれー?エレナ様と美姫がまた帰ってきたのー?)

(ミーちゃん、ただいま。)

(おかえりなのー。)


  背中に葉っぱのような羽を持った妖精のミーちゃんが近寄ってくる。


(今日は何しに帰って来たのー?また樹を痛めつけるんだったら、あたしも手伝うのー。)

(ミーちゃんにはあの特訓が僕を痛めつけているように見えたのか。いや、実際そうだったような気もしてきた。)

(樹君、思考が悪いほうに向かってるよ。ミーちゃん、今日はちょっと探し物をしに来たの。)

(それだったら、あたしも手伝うのー。)

(探し物はすぐに見つかると思うから、ミーちゃんには美味しい料理を作ってもらいたな。)

(分かったのー。)

(それじゃ、樹君、父の部屋に行きましょう。)



 美姫さんのお父さんの部屋の壁は本棚で埋められている。


「いつ見ても凄い部屋だ。電子書籍があるのに物理的な本に拘るのは、古書を集めるのが美姫さんの父さんの趣味だったから、だったっけ?」

「そう。この中には希少ですごい高価な本もあるんだって。」

「骨董品と違って本は情報を運ぶ媒体としての役割しかしてないと思うと、僕は本自体に価値を見出せないな。」

「父は『本に書かれたメモが重要なんだ』と言っていたような記憶があるよ。」

「そういう意味だったら、一点物になって高価になるのも分かる気がするけど、僕には価値を判断できないからよく分からないし。」

「私も。」


(猫に小判、樹に希少な本、じゃのう。)

(エレナ様はどこからそんなことわざを覚えてくるんですか、、、)


「美姫さんのお父さんが使っていたサーバって、どこにあるんだろう?美姫さんは知ってるの?」

「ううん。父の部屋に入ったらすぐわかると思ったんだけれど、見た感じ、どこにも見当たらないね。」

「サーバはこの部屋にあるあるんだよね?」

「週末にずっとこの部屋にこもっていた時に、『何してたの?』って聞くと、『大学での研究の続き』って答えてくれたことがあったから、大学での研究を保存しているサーバはこの部屋にあると思うよ。」

「別の部屋にあって、無線で飛ばしているとかは、、、壁が分厚いから不可能か。」

「そうね。 机、椅子、本棚、ベッド、以上、みたいな部屋だから、すぐに見つかると思っていたんだけど、、、」

「すぐに見つからないとすると、小型サーバがどこかに隠されている可能性が高いから、まずは一番可能性のありそうな本棚を調べてみない?」

「つまり、サーバが百科事典とか分厚い本に偽装されている、ってことね。ちょっとワクワクしてきたよ。」

「美姫さんが息子のエ〇本を探す母親のような顔になっている。」

「何か言った?」

「何も。」

「そう。じゃぁ、探しましょう。」


 本棚の本を隈なく調べてみたが、何も見つからない。


「私の方は全部本物の本だったよ。樹君の方はどう?」

「こっちも同じ。おかしいなぁ?どこか見落としているところがないか、もう一度調べてみる。」

「分かった。私ももう一度調べてみるね。」


「どこかにあるはずなんだけどなぁ、、、」


 本棚の底部にある本を調べているときだった。


(樹君、ちょっと待ってほしいのですな。)

(グレンさん、どうかしましたか?)

(今、ほんのわずかですが、魔力が吸収されるような感じがしたのですな。もう一度先程のところをなぞってもらえませんかな?)

(了解。やってみます。)


 今度は魔力の変化に注意して本棚の底部をなぞる。


(本当だ。ここに指を触れると、わずかに魔力が吸収されます。グレンさん、流石ですね!)

(お役に立てて何よりですな。)


「美姫さん、ちょっと来て。怪しいところが見つかった。」

「本当?」


「サーバ自体が見つかったわけじゃないんだけど、ここに指を置くとわずかに魔力が吸収されることをグレンさんが見つけたんだ。何かの仕掛けがあるんだと思う。」

「本当だ。魔力が吸収されている。グレンさんについてきてもらって良かったね。」

「せっかく行くんだから1日だけでも特訓をしよう、とエレナ様が言い出した時には嫌な気分になったけど、それが正解だったなんて。」


(全てワレのおかげ、というわけじゃのう。)

(そう言うと思いました。)

(さすがはエレナ様。この事態を見越して俺とグレンを連れてこられたのですね。先見の明がある将を持てたことに俺は感動しています。先の第9次聖魔大戦においても――――)


 エレナ様を褒め称えるためにザグレドが突然出てくることに慣れっこになっていて、普通に無視である。


「魔力が吸収されるということは、ここに魔法の腕輪か何かが仕込まれている、ということね。」

「そういう事だと思う。多分、魔法の腕輪と同じように、何らかの命令を送ると仕掛けの鍵が外れてサーバを取り出せるようになっているんじゃないかな。」

「そうだとすると、どんな命令を送ればいいのか、が問題ね。」

「一難去ってまた一難か。命令規則は想像もできないけど、忘れないように覚えやすいものになっているはず。美姫さんは心当たりとかない?」

「うーん、、、分からない。でも、まずは適当に魔力を流してみない?何か分かるかもしれないし。」

「了解。やってみますか。」


 美姫さんと交互に魔力を流してみるが、変化はない。


「やっぱり闇雲にやってもダメね。」


(グレンさんは何か分かりませんでしたか?)

(そうですな。この魔力の吸収のされ方は特殊ですので、知っているような気がするのですな。しかし、樹君を介しているからか、ワシにはフィルタがかかったような魔力しか感じられないので、特定は難しいですな。)

(そうですか、、、)

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