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竜の女王  作者: M.D
幕間1
14/688

01

「樹君は明日の午前に時間ある?」


 夕食を一緒に食べているときに、美姫さんが突然明日の予定を聞いてきた。


「明日も補講は午後からだから、午前中は足りないものを買いに行こうかと思っているけど、どうして?」

「亜紀様から『情報端末を持っていないのは不便だろうから買ってきたら?』と純一先生経由で連絡があったの。それで明日の午前に買いに行こうかと思っているんだけど、ついてきてくれるとうれしいな。」

「そう言えば、美姫さんって端末持ってないんだっけ。僕も駅前に行くし、明日の午前は美姫さんに付き合うよ。」

「ありがとう!私ひとりだとどんな端末を買ったらいいか分からなかったから、助かる。」



 次の日に寮の玄関で待っていると美姫さんが出てきた。


「おはよう。少し遅かった?」

「おはよう。僕が少し早く来ただけで、遅れてはいないから大丈夫。」


(樹は美姫と一緒に買い物に行くのが楽しみすぎて、早く出てきてしまったのじゃのう。)

(僕が遅れて美姫さんを待たせてはいけないと思ったからです。)

(ということは美姫とのお出かけは楽しみではない、ということじゃな?)

(そんなことは一言も言っていませんが。)

(青春じゃのう。甘酸っぱいのう。)

(茶化さないで下さい、エレナ様。)


「美姫さん、今日はかわいい服装だね。」

「ありがと。今まで心臓が弱くて家の中にばかりいたから、こうやっておしゃれして外に出るのが夢だったの。」

「夢がかなってよかったね。」

「これも樹君のおかげ。ありがとう。」


(樹、あまり美姫のことをエロい目で見るでないのじゃ。美姫が汚されるのじゃ。)

(そんな目で見ていません!)

(さっき美姫の体をなめるように見ていたではないかのう?)

(かわいい服装だな、と思っただけです。エレナ様が穢れているからそんな風に感じるんじゃないですか。)

(なにを!)

(私は樹君にだったらそんな風に見られてもいいですけど。)


 えっ!?


(ワレのかわいい美姫が。。。)


 放心しているエレナ様は放っておいて、情報端末を扱っている店がありそうな学校近くの駅前に向かう。


「都市国家東京に来て3日程だけど、まだ地下に街があるのにはなれないな。」

「そう?私はこれが普通だから逆に地上に街がある方が違和感があるかな。」

「人工光合成のために太陽光を受けないといけないから、都市国家東京の地上部には人工光合成工場以外の建物がほとんどないと聞いていて、実際に目の当たりにしたときにはびっくりしたんだけど、美姫さんにとってはこれが普通なのか。」

「そうなの。悪魔が襲ってきたときには地下に長い間留まらないといけないから、食料の生産が一番重要なんだって。だからできるだけ太陽光を有効活用するために、地上部には人工光合成工場以外の建物は少ないのよ。」


「そういう理由で地下に街を作った、っていうのは学校で習ったけど、東京シールドの外では普通に地上で暮らしてたから地下街みたいな感じかと思っていたんだけど、全然規模が違うんだね。」

「私は地下街っていうのがどういうものか知らないけれど、ここは閉塞感を与えないように大きく作られているらしいよ。」

「それに、地下なのに風があるのは、人間が呼吸で出した二酸化炭素を地上の人口光合成工場に送って、逆に人口光合成工場で生み出された酸素を地下に送るためだ、っていうのもよく考えられていると思う。」

「そうね。作られた風だけれど気持ちいいしね。」

「揺らぎをつかって風量を制御しているとか――――」


 そう言いかけたところで、少し強めの風が吹いた。


「キャッ!」

「・・・。」


「見た?」

「何のこと?」

「白いのが見えたでしょ?」

「えっ?白くはなかったけど。」

「やっぱり見たんじゃない。」

「一瞬だったからよく見えなかった。ちらっとピンク色のが見えただけで。。。」

「でも見た。」

「見えました。。。」

「いいよ。樹君には今日付き合ってもらってるし。それに減るものでもないしね。」


(それは見られた側が言う台詞ではないし、エレナ様が何も言わないのは不気味だな。)


 とか思いながら駅前に向かった。



「いろんな端末があるのね。」


 店に入ってから美姫さんは、情報端末の説明を読んだり、外観を見比べたりしている。


「どれがいいと思う?」

「機能としてはどれを選んでもあまり変わらないから、美姫さんが使いたいと思う端末を選べばいいんじゃないかな。皆がよく使っているのはあの端末だけど、ちょっと高いのが難点。」

「樹君のはどれ?」

「僕のはこれ。できるだけ充電したくないけど重いのも嫌だったから、機能は少なくいけれど消費電力が少なくて長時間使えるのにしたんだ。」

「そうなんだ。どの色?」

「白色。」


「うーん、どれも同じように見えるし、樹君のと同じ端末でいいや。」

「もうちょっとほかの端末も見てみたら?僕のは去年買ったやつだから、最新版が出ていると思うけど。」

「いいの。型落ちで安くなっているし、同じ端末を使っていたら分からないことがあっても樹君に聞けるじゃない?」

「まぁ、確かに最新版といっても目新しい機能が追加されているわけではなさそうだし、あまり変わらないかも。」

「それじゃ、これを買うことにするね。」


 美姫さんは展示されている情報端末と一緒に置かれているカードを取って、レジに向かった。そのカードと個人カードをレジに入れ、暗証番号を入力すると購入した情報端末が出てきた。


「個人カードを持ち歩くのは落としたときのことを考えると怖いし、毎回個人カードをレジに入れて暗証番号を入力するのが面倒だったのだけれど、これからは端末をかざすだけでよくなって便利なるから嬉しい。」

「端末にログインするためのアカウントには個人カードの番号が紐づけされていて、暗証番号の入力の代わりに生体認証だから安全性も高いし。」

「やっとこれで普通の学生に一歩近づいた感じがするよ。樹君、後で端末の設定の仕方を教えてね。」

「了解。」

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