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竜の女王  作者: M.D
2170年秋
134/688

03

「それでは東高際をはじめます。」


 生徒会長である諒太さんの宣言で東高際が始まった。


「東高際へようこそ。招待券はお持ちですか?」

「はい。」

「こちらが案内冊子になります。」

「ありがとう。」


 朝一の受付担当に選ばれたので、入場者の確認と案内冊子の配布を行う。


「遠見先生お久しぶりです。」

「お久しぶり。綺麗になったね。」


 受付を手伝ってくれている先生は化学の遠見一先生だ。


「遠見先生は相変わらずお世辞がうまいですね。」

「いや、お世辞なんかじゃないよ。あれは私の本心さ。」

「キャー!本当ですか。ありがとうございます。」

「久しぶりの学校だから、楽しんできてね。」

「はい。また人が少なくなったころにお話をしにきます。」


 遠見先生は卒業生に人気らしく、遠見先生の方に並んでいる人が多い気もするが、それもしばらくすると落ち着いた。


「ようやく入場者の数も減ったね。」

「はい。始まる前から並んでいる人がいるなんてびっくりしました。」

「東大附属は魔法科があるから普段は閉鎖的で、東高際は一般の人が学校内に入れる唯一の機会だから、卒業生なんかで昔を懐かしんで来るのを楽しみにしている人が多いのさ。」

「昔を懐かしんで来ている、というか遠見先生に会いに来ている、という人が多かった気がしますが。」

「まぁ、そのせいで毎年私は客寄せとして受付なんかをやらされているわけさ。」

「そういう事ですか。でも、招待券がないと入れないようにしているのに、受付が僕と先生の2人というのは不安全じゃないですかね?」

「森林君は知らないかもしれないが、陰から国防軍の一部隊が校門を見張ってるから、不審者が入ってきても彼らが対処してくれるのさ。だから、私みたいな普通科の教師が受付をしても大丈夫、というわけさ。」

「そうだったんですか。」


 あたりを伺うが誰もいないようだ。


「あまりキョロキョロしない方がいい。彼らのことは気にせず、私たちは受付だけをしておけばいいのさ。」

「はい。」



 それからちらほらやってくる入場者の受付を行っていると、美姫さんが歩いてくるのが見えた。


「樹君、調子はどう?」

「あれ?美姫さんどうしたの?」

「樹君がさぼってないか見に来たの。」

「ひどいな。遠見先生もいるし、さぼってなんかいないって。」

「森林君はちゃんと受付業務をしていたよ。」

「遠見先生がそう仰るなら信用できますね。」


「受付は大変?」

「最初は慣れてない上に人が多くて大変だったけど、入場者も減ったし、問題を起こすような人もいないから、今のところ大丈夫。」


「おはようございますの、御姉様。」

「美姫様、おはようございます。」


 そう言った舌の根の乾かぬ内に、問題児が現れた。


「華恋ちゃん、珠莉、おはよう。東高際に来てくれたのね。」

「はい。探さなくても御姉様に会えるなんて、私の普段の行いがよほど良いという事ですの。」

「たまたま、偶然だろ。」


 諒太さんが校舎の方から歩いてくる。


「諒太は私が御姉様とご一緒しようとするといつも現れますの。私を御姉様に取られるのがそんなに嫌ですの?」

「俺は親父から電話があって、華恋を案内するよう言われたから来ただけだ。美姫さんが華恋と見て回ることを了承してくれるならそれに越したことはない。」

「そんなに私といたくない、というわけですの?」

「東高際は去年俺と見て回っただろう?今年も同じような感じだし、美姫さんが案内してくれるなら、華恋も違う視点で東高際を楽しめていいんじゃないかと思ったんだが。」

「そ、そうですの、、、」

「華恋様、そんなにがっかりされなくても。」

「珠莉、あなたは勘違いをしていますの。去年は諒太に案内してもらったから、今年は御姉様と見て回りたい、と言っていたでしょう?諒太が案内してくれなくて残念とか、全然思ってないですの。」


(諒太さんが案内する気がないのを聞いて、明らかに残念そうだったけど。)

(華恋ちゃんは諒太さんのことが好きなのね。)

(諒太さんも華恋のことが嫌いなわけではなさそうだし、あの2人はうまくいきそうな気がする。)

(そうね。)


「美姫さん、華恋を案内してくれないか?」

「私は午後一から受付をしないといけないので、華恋ちゃんを案内するとしても中途半端になってしまいますが、それでよろしければ。」

「それでいいから、お願いできるかな。」

「分かりました。」


「華恋もそれでいいだろう?午後からは俺が案内してやるから。」

「分かりましたの。それでは、御姉様行きましょう。」


 華恋は美姫さんの手を引いて校舎の方へ向かおうとする。


「ちょっと待った。」

「なんですの?折角いいところでしたのに。」

「まずは受付を済ましてからにして。」

「そ、そんなこと分かっていますの。珠莉、招待券を2枚、この男に渡しますの。」

「はい。樹様、これでよろしいでしょうか。」

「ありがとう。はい、案内冊子。」

「ありがとうございます。」


「それでは、御姉様行きましょう。」

「どこから回ろうか?」

「そうですの、、、まずは、魔法科のメイド喫茶、というのに行ってみたいですの。」

「分かった。」


 行き先の決まった華恋、珠莉、美姫さんは校舎の中に入っていった。

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