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竜の女王  作者: M.D
2170年秋
133/688

02

「今日は遅くまで残るんでしょ。軽食を作ってあるから、食べて。」


 百合子さんと紫さんが持ってきた大きな盆の上にはサンドイッチなど、一口で食べれるようなものが並べてあった。


「これ百合子さんが作ったんですか?」

「そうよ。晴海さんから寮の台所を借りて作ったの。時間がなかったから、たいしたものは作れなかったけれど。」

「否定。どれも美味しそうです。」

「ありがとう。」


 紫さんもどれを食べようか見定めているようだ。


「去年は他の生徒と一緒に臨時営業している食堂を利用しましたが、今年は百合子さんの手料理を食べれるなんて、ちょっとした贅沢ですね。」

「紫たちの分はついでに作っただけ。品数の多いやつは樹専用だから、分かるようにしてあるけれど、食べちゃダメよ。」

「料理の並び方が不自然なのはそんな意味があったんですね。でも、私たちの分を作ってくれただけで有難いので、文句はありません。」

「さぁ、皆座って。樹はここよ。」


 場所を指定されて座ると、隣に百合子さんが座ってきた。


「当然のように樹君の隣に座るんですね。」

「そう言う美姫さんも樹の隣に座ってるじゃない。」

「ダメなんですか?」

「ダメとは言ってないわよ。席順が決まっているわけじゃないんだから、誰がどこに座ろうと自由だと言っているの。そんなこと言ってないで、早く食べましょう。」

「分かりました。」


「いただきます。」

「「「「「いただきます。」」」」」


「樹は私が食べさせてあげるわ。はい、あーん。」


 百合子さんの仕草を見て、美姫さんが睨んできた。


「いえ、自分で食べれますので。」

「じゃぁ、最初の一口だけでいいから。あーん。」


(百合子さんが作ってくれたんだから、一口だけだったらいいよ。)

(了解。)


 美姫さんからの許可も出たので、百合子さんからサンドイッチを食べさせてもらう。


「どう?」

「美味しいです。パンがふわとろで玉子との相性が抜群ですね。」

「ありがとう。食べたいものがあったらいつでも言って。腕を振るうから。」


 他の皆も「おいしい。」を連発している。


「百合子さんはいいお嫁さんになると思う。」

「ヒロポンはいいこと言うわね。樹専用品の中から特別にプリンをあげるわ。中身は市販品で、飾りつけをしただけだけど。」

「ありがとうございます。」


「こんなおいしい料理を作れるなんて、私も百合子さんをお嫁さんにもらいたいくらいです。」

「却下。私はレズじゃないし、樹のお嫁さんになるから。」

「紫はプリンをもらい損ねたな。2番煎じじゃダメなんだよ。」

「諒太、うるさい。」


 美姫さんは黙々と食べている。


(悔しいけど、百合子さんの料理はおいしい。私も頑張らないと。)

(そんなに張り合わなくてもいいんじゃないかな。)

(百合子さんに負けるなんて嫌なの。見てよ、あの勝ち誇った顔を。)


 百合子さんの方を見ると満足そうな顔をしていた。


(勝ち誇った顔には見えないけど。)

(樹君が百合子さんの方を向くまでは、私の方を見てドヤ顔をしていたのよ。前もそうだったけど、あの女は変わり身が早いから、樹君も騙されないように気を付けてね。)

(了解。)



「ごちそうさまでした。」


 軽食を食べ終わって、今は片付け中だ。


「この後って何をするんですか?」

「もうどこも買出しに行くようなことないと思うから予算の執行もないだろうし、基本的には見回りだな。いつものように揉め事があれば生徒会で仲裁を行う。」

「それと、隠れて学校内に残ろうとする生徒が毎年数人いるから、門限近くの見回りは念を入れてやる必要があるわ。」

「去年もいたな。東高際前日に学校に居残りしないといけないなんて、紫みたいに計画性がない奴らだ。」

「直前にならないとやる気が出ない人もいるのよ。というか、諒太、私に喧嘩売ってる?」

「そんなことはない。事実を言ったまでだ。」

「それが喧嘩売ってるっていうのよ。もういいわ。諒太が一言多いのはいつものことだから。」


「諒太さんと紫さんって、どちらも一言多いから、似た者同士なのかもしれない。」

「そうね。類は友を呼ぶ、って言うし。樹君も一言多いから、2人に引き寄せられたのかも。」

「否定。そんなことないと思う。」


「私と諒太が似た者同士なんて心外だわ。」

「それは俺の台詞だ。」


 僕たちの会話を聞いて、諒太さんと紫さんが反応した。


「さっきもそうですけど、諒太さんと紫さんの会話って夫婦漫才みたいですね。」

「樹、どこをどう聞いたら、そう言う発言になるんだ?」

「そうよ。諒太と夫婦とか言われると寒気がするわ。」


「そういう割に嫌な顔をしていない。」

「ヒロポンまで何を言い出すのよ。」

「困るなぁ。紫がどれだけ俺のことを好きであっても、俺は桐生家外家筋の人間だから、魔法使いじゃない紫とは結婚できないぞ。」

「むきーっ!何回その台詞を言ったら気が済むのよ。今日という今日は許さないから。」


 紫さんが勘弁ならんと詰め寄るが、諒太さんはするりと身をかわす。


「さて、片付けも終わったし、樹、見回りに行こうか。」

「はい。」

「こら、逃げるな!」


 学校内の見回りをして、門限近くにカーテンの裏に隠れていた生徒を見つけたりしたが、特に問題になるようなことはなかった。

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