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竜の女王  作者: M.D
幕間4
130/688

02

 諒太さんが決勝戦について話し始めた。


「美姫さんと樹君の1年生5班が失格になって、俺たちの2年生1班が決勝戦に進んだことは知っているだろう。」

「はい。」

「それで、百合子さんが怒り心頭だったんだよ。」

「私の話はいいから、早く決勝戦の話をしなさい。」

「前提条件を話しておかないと、これからの話の意味が分からないかもしれないじゃないですか。」

「分かったわ。続けなさい。」


「麗華さんも決勝戦の場に姿を見せなくて、大変だったんだ。」

「樹をあんな目に合わせたんだもの。麗華さんをぎったぎったにしてやろうと思ったのに残念だったわ。」

「それで百合子もやる気をなくしてしまって、決勝戦では手を抜きまくりだったのよ。」

「えっ!?あれで手を抜いていたんですか?」

「だって、美姫さんや麗華さんがいないんだから、張り合いがなくて気合が入らなかったんだもの。」

「いや、俺という好敵手がいたじゃないですか。」

「自分で好敵手って言う?それに所詮諒太だし、実力は分かっているから。」

「ひどい。俺だって強くなってるんですよ。」

「成長している、というのは認めるわ。でも、まだまだね。余裕で勝てたから、予行演習の意味がないくらい弱かったし。」

「しょぼーん。(´・ω・`)」


「それで、決勝戦はどんな感じだったんですか?」

「いや、なんかもう話したくなくなってきた。」

「そんなこと言ってないで、さぁ、話なさい。」

「分かりましたよ。」


「決勝戦の組み合わせは順当に3年生1班、2班、2年生1班だったんだけど、俺たちは麗華さんがいないから、交代要員の慎太郎を入れて戦ったんだ。」

「私たちはいつも通りの班員ね。」


「試合開始から陽菜さんが大暴れで、まずは俺たちの方に向かってきた。」

「まずは叩きやすいところから叩く。基本よね。」

「陽菜さんは慎太郎が放つ魔導刃をかいくぐりながら突進してきて、一撃で慎太郎の意識をとばしたんだ。」

「諒太の楯に隠れながら魔導刃を放てばいいのに、身をさらして魔導刃を連発するなんて私も舐められたのものだわ。」

「打ち合わせの時には俺の魔導盾越しに魔導刃を放つ手はずになっていたんですが、試合の雰囲気にのまれたんですかね。それに俺は慎太郎のところにも魔導楯を発動させましたから、慎太郎が陽菜さんに身をさらしていたわけではないですよ。」

「あんな豆腐みたいな魔導楯はないのと同じよ。」

「陽菜さんがやってくるのが早すぎて、十分な強度の魔導楯を形成することができなかったんですけど、豆腐とか言われると凹みます。」


「一撃で意識を奪うなんて、さすがに陽菜さんですね。聡とは違う。」

「でも、魔闘会って相手を峰うちにしないといけないから面倒よね。切って捨てることができたら楽なのに。」

「そんなことを言うから”脳筋”呼ばわりされるのよ。」

「百合子、うるさい。」


「その時、3年生2班はどうしてたんですか?」

「もちろん、百合子さんと瑠奈さんに襲い掛かっていたさ。」

「瑠奈に防がれる、って分かってて攻めてくるんだから。うちの瑠奈は諒太とは違うのよ、諒太とは。もうちょっと頭を使いなさいよ、って感じよね。」

「そんなに言わなくても。。。でも、雅之さんたちも陽菜さんが俺たちの方に向かったのを見て、百合子さんたちを倒す勝機と見たんじゃないですか。」

「雅之さんって、3年生2班の”大砲系”魔法使いですよね?」

「そうよ。雅之たちも模擬戦で1度も瑠奈の盾を全部破壊できたことがないのに、魔闘会の試合でいきなり私たちに魔法を当てられると思うのが間違っていたのよ。」


「瑠奈さんが発動する楯の数は多いですから、全部破壊するのは難しいでしょう。」

「もうちょっと楯に強度があったらいいんだけど、瑠奈は楯の強度を上げるよりは手数で勝負したいらしいから。」

「そうなのよ。でも、パリンッ!パリンッ!、ってすぐ壊れるのよね。」

「それでも楯の枚数を重ねて魔導砲を防いでしまうんですから、発想の転換というか、すごいですよ。」

「魔導弾も一発一発確実に対処してくれるんだけれど、壊れすぎなのよ。」

「でも、強度がない分だけ楯魔法を発動する速度が速いから、百合子の魔導砲が掠って楯が壊れても気にせずすぐに作り直してくれるわ。」

「それはさすがに瑠奈さんも怒っていいと思いますよ。」

「大丈夫。瑠奈はもうあきらめてくれてるから。」


「今までの話を聞くと、百合子さんは何もしてなかったように聞こえたんですか?」

「そんなわけないじゃない。陽菜の支援をしたり、瑠奈の負担を減らすために牽制したり、八面六臂の活躍だったわよ。」

「あれは支援と呼べるのですか?陽菜さんのことをまるで無視したように魔導砲を放っていたようにしか見えなかったんですが。」

「大丈夫。陽菜なら当たらないように避けてくれるから。」

「やっぱりそうですか。」


「百合子とは長い間一緒にやってきてるから、だいたいどこに魔導砲を放つか予想できるし、魔導砲を避けようとする相手は動きが読みやすいから助かっているわ。」

「ほら見なさい。」

「でも、もう少しだけ私のことを考えて魔導砲を放ってくれると嬉しいかな。」

「そうですよね。」

「何、その勝ち誇った顔は。早く話を続けないさい。」


「話を俺たちの方に戻すと、慎太郎の意識を奪った陽菜さんは好美に向かっていったから、俺も好美の方の魔導楯を強化したし、好美も拳闘型に戦い方を変えて陽菜さんを迎え撃ったんだ。」

「拳闘型ですか?」

「魔法使いの接近戦における戦闘型の一つね。”大砲系”魔法使いは拳に魔導力を集めて、ロケットパンチの要領で打ち出すのよ。好美は”大砲系”では珍しく接近戦の方が得意だから、私も一瞬防戦を強いられたりしたし、いい戦いだったんじゃないかしら。」

「雅之もここが勝負どころだと思ったのか、魔力倍化で魔導砲を放ってきたから、瑠奈の負担を軽減するために私もそっちの対処を強化しないといけなくて、陽菜の支援が後回しになってしまった、というのも大きいけどね。」


「百合子さんの支援も減っていたし、いい感じだったからあわよくば陽菜さんを倒そうと思った時に、陽菜さんが急加速して踏み込んできたんだ。好美はうまく陽菜さんの魔導剣をかわしたところまでは良かったんだが、百合子さんの魔導砲の直撃を受けて魔導壁まで吹っ飛ばされてしまったんだよ。」

「あれは好美がうまくかわしたんじゃなくて、百合子の魔導砲が飛んでくる先に避けるように魔導剣を振るったのよ。」

「そして、それを見越して魔導砲を放った私もすごいと思わない?」

「はいはい、すごいですね。」

「なに、その投げやりな称賛は。」

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