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竜の女王  作者: M.D
補講1
13/688

05

「今日は魔法実技について補講を行いましょう。」

「「よろしくお願います。」」


「まずは自分の魔力を感じる鍛錬から。美姫さん、今までどのように行っていたのかやって見せてくれるかい?」

「はい。こうやって両手の手のひらを合わせて、両足の足裏も合わせて、魔力を循環させるように流して鍛錬していました。」


 実際に美姫さんがやって見せた。


「魔力循環だね。それは龍野教授からやり方を教えてもらったのかい?」

「はい。」

「魔力を流す方向はどうしていますか?」

「父には『両手と両足で魔力を流す方向を変えなさい』と言われたので、そうしています。」

「両手両足で、さらに互いに逆方向の魔力循環を行えるとは、さすが美姫さんですね。龍野教授は他に何か言ってなかった?」

「そうですね、、、『魔力が外に出て行かないようにしなさい』と言われました。魔力が外に出て行かないように気をつけて魔力を循環させていると、徐々に循環する魔力が増えて行って、魔力の制御が大変です。」


「魔力制御まで出来ているのであれば、魔力循環について私が教えることは何もないな。その鍛錬は少しでもいいから毎日欠かさずに行うように。」

「はい。父にもそのように言われました。」

「魔力循環以外に龍野教授から教わったことはあるかい?」

「魔力を限りなく小さく抑える方法や体から出ていく魔力を留める方法を教えてもらいました。体から出ていく魔力を留めることができるようになるまですごく時間がかかったような気がします。」

「魔力隠蔽までできているとは、予想はしてたけれど、美姫さんには魔法実技の補講は必要ないな。もしよければ樹君の鍛錬に付き合ってあげてくれないかな?」

「やります!」


「ありがとう。樹君もこんなおっさんと手を合わせるよりも、美姫さんとの方が嬉しいだろうし。」

「どういうことですか?」

「やってみれば分かるよ。樹君、美姫さん、向き合ってお互いの手のひらを合わせて。」

「「はい。」」


 言われたとおりに美姫さんと手のひらを合わせる。


(美姫さんの手、やわらかい。)

(いやらしい想像をするでないのじゃ。美姫が穢れるのじゃ。)

(ただ感想を思っただけじゃないですか。)

(いや、さっきは美姫の手の感触を存分に感じて、その先を想像しておったのじゃ。)

(そんなことありません。)

(樹君だったら私はいいですよ。)

(なんと。あんなうぶだった美姫がそんなことを言うようになるとはのう。ワレ、ちょっとさみしいのじゃ。)


「美姫さん、見つめあっているのはいいのだが、そろそろ樹君に魔力を流してくれないか?」

「あ、はい、すみません。樹君、いくよ。」


 優しく温かい何かが腕から腕へ流れていくのが感じられる。


「どうだい?樹君、何か感じたかい?」

「はい。温かい何かが流れているのを感じました。」

「それが魔力だ。次は、自分の手のひらを合わせて、今感じた流れが再現できるか試してみて。」

「はい。」


 手のひらを合わせて美姫さんから流れてきた温かい感じを再現しようとしてみるがうまくいかない。


(そうじゃろうのう。)

(どういうことですか?)

(樹は普通の人間なのじゃから、そもそも精神エネルギーの絶対量が少ないのじゃ。それに精神エネルギーの扱いも稚拙じゃから、精神エネルギーを循環させられたとしてもほんの僅かじゃろうし、それを感じられなければできたとは思えんじゃろうからのう。)

(分かったような分からないような。)

(それにできなくて当り前じゃ。樹には素質がないのじゃからのう。)

(そう言われると凹みます。)


(そうですよ。エレナ様、何とかなりませんか?)

(すぐには無理じゃが、樹とワレは魂の絆を結んでおるから、樹に精神エネルギーを流し込んで神経系を精神エネルギーが流れるのに慣れさせれば、何とかなるやもしれんのう。)

(その方法に何やら嫌な予感がするのですが。。。)

(心配することはないのじゃ。)

(エレナ様の顔が見られるなら、今絶対悪い笑顔になっているはず。)

(そんなことはないのじゃ。)


 何度やっても何も感じられなかった。


「うまくいきません。」

「やはり、樹君は魔力が少ないから、微小な魔力を感じるところから始めたほうがいいかもしれないな。」

「美姫さん、次は魔力を極力抑えた状態から、徐々に魔力を増やしていくことはできるかい?」

「はい。できると思います。」

「それじゃ、樹君、美姫さん、また向き合ってお互いの手のひらを合わせて。」

「「はい。」」


「最初は魔力隠蔽の時と同じ状態から徐々に魔力を増やしていこう。」

「はい。」


「どう?樹君感じる?」

「うーん。何も感じない。」

「じゃぁ、もうちょっと増やしてみるね。」


 結局美姫さんの魔力を感じられたのは、最初に流してもらったくらいからだった。


「樹君は魔力を感じることも苦手のようだね。」

「はい。。。」

「そんなに落ち込まない。樹君は魔法使いの家系出身じゃないんだから、このくらいは想定内だ。明日から少しずつ小さな魔力を感じられるように訓練をしよう。魔力循環の鍛錬は微小な魔力が感じられるようになってからだね。」

「私も手伝います。」

「美姫さん、ありがとう。」



 その後、毎日美姫さんに魔力を流してもらったおかげか、入学式の直前には魔力循環の鍛錬に移れるようになっていた。


(それはワレのおかげでもあるがのう。)

(あれはエレナ様が僕をいじめて楽しんでいただけじゃないですか。)

(そんなことはないのじゃ。効率の良い方法を考えたら、あの方法に行きついただけなのじゃ。)

(毎日気絶させられる身にもなって下さい。)

(気絶する程度に神経系を痛めつける精神エネルギーを流し込むと、神経系の破壊と修復の効率がよいのじゃから、そうする他なかろう。これも樹のためじゃ。)


(もっといい方法とかあるでしょうに。)

(そうじゃのう。あるにはあるが、失敗する可能性が高いからおすすめはせんのう。)

(どんな方法ですか?)

(今はそれを理解するための知識が足らんし、言っても分からんじゃろうから、いずれ機会が来れば教えてやるのじゃ。)

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