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竜の女王  作者: M.D
幕間4
129/688

01

「魔闘会本選に向けて私たちの壮行会を行うから来なさい。」


 百合子さんからそう言われて、僕と美姫さんはファミレスに来ていた。


「こんにちは。」

「こんにちは。樹、よく来てくれたわね。さぁ、座って。」


 百合子さんが隣の席を叩いて着席を促す。


「どうして樹君が百合子さんの隣なんですか?」

「私が樹に隣に座ってもらいたいから。」

「そんなのダメです。」

「美姫さん、今日は来てもらったのに悪いんだけど、百合子の言動も大目に見てあげて。」

「陽菜さんまでそんなことを。」

「そういう事だから、早く座って。」


 百合子さんの言うとおりの席に座って、美姫さんを見ると僕を睨んでいた。


(そんなに睨まないで。)

(樹君がもっとしっかりしていれば。はぁ、何故いつもこうなるのかしら。。。)


「今日は4人なんですか?」

「あとは諒太だけなんだけど、珍しく遅いわね。」


 そんなことを言っていると、諒太さんがファミレスに入ってきた。


「すみません。少し遅れました。」

「気にしなくていいわよ。そのかわり、今日は諒太のおごりでいいから。」

「嫌ですよ。後輩にたからないで下さい。」

「ケチね。お金持ちのくせに。」

「普通の家より少し多いだけでお金持ちというわけではないです、って何回も言っているんですが、いつになったら分かってくれるんですか。」

「百合子もそれくらい分かっていると思うし、諒太も気にしないで。」

「陽菜さんの言うとおりなんですが、、、樹は俺の気持ちを分かってくれるよな?」

「痛いほどに。」

「あぁ、この気持ちを共有できる後輩がいる、というのは素晴らしい。」



「ご注文の品をお持ちしました。」


 僕たちが来る前に注文してあったと思われる軽食をロボットが運んでくる。


「適当に頼んでおいたけど、欲しいものがあれば追加で注文して。」

「はい。」


「それじゃ、魔闘会本選での私たちの勝利を祈念して、乾杯!」

「「乾杯!」」


 未成年なのでアルコール抜きの飲み物で乾杯。


「どうして俺も呼ばれたんですか?」

「樹は決勝戦を見に来れなかったでしょ。それに、私たちを鼓舞する意味で、諒太には決勝戦での私たちの勇姿を語ってもらおうと思って。」

「貴重な休日だったのに 、そんな理由で呼び出したんですか。」

「大事なことだから。」


「そうですか。それはいいとして、どうしてこの人選なんですか?壮行会にしては、魔闘会本選にいく班員は百合子さんと陽菜さんしかいませんが。」

「私が気兼ねなく話ができるようによ。折角の壮行会なんだから、気兼ねせず楽しみたいじゃない。」

「それでこのファミレスですか。座席が個室みたいになっているから、百合子さんが騒いだところで分からないですものね。」


「それにしても、百合子さんは陽菜さん以外の班員にはまだ素顔を見せていなかったんですか?」

「そうなの。まだあの2人には百合子が残念な性格をしている、って正式にはバレてないのよ。あれだけ長い間一緒にいて、バレてないなんて不思議よね。瑠奈は気が付いているような気配だけれど。」

「百合子さんの演技が上手いのか、他の2人が鈍感すぎるのか。」

「陽菜が戦闘狂だってことはバレてるんだけどね。」

「戦闘狂だなんてひどいこと言わないで。」


「そういうことか。」

「樹君、どうしたの?妙に納得したような顔をして。」

「いや、聡が陽菜さんのことを”脳筋”って言ってたんだけど、普段話をしていても全然そんな感じを受けなかったから、どうしてなんだろうと思っていたんだ。」

「聡君、そんなこと言ってたんだ。」

「百合子さんの発言を聞いて思ったんだけど、多分、陽菜さんはスイッチが入ると性格が変わるタイプなんじゃないかな。聡はいつも陽菜さんにしごかれていて、スイッチが入った陽菜さんを見ている時間の方が長いから、そう言ったんだと思う。」


「ほう、聡は私のことを”脳筋”と言っているのか。家に帰ったらシバく。」

「僕が言った、ってことは内密でお願いします。」

「樹君からはいいことを聞かせてもらったので、誰から聞いたかは言わないでおくわ。」

「フォローにならいかもしれませんが、聡は『姉貴の実力ならロンドン大学にも合格できるんじゃないかと思っているんだ』とも言って、と陽菜さんの実力を認めてましたよ。」

「あのシスコン野郎め。」


 そう言いながら、陽菜さんは少しだけ嬉しそうだった。


「陽菜さんはロンドン大学を目指しているんですか?」

「そうなの。美姫さんは知らなかった?」

「はい。」


「だから、今回の魔闘会本選は陽菜にとって重要な意味があるのよ。」

「魔闘会本選が実力試験みたいなもの、ってことですか?」

「そうよ。だいたいどこの大学も、都市外からの留学生を受け入れる際には、ある程度以上の実力を求めるものなの。それが戦闘力である場合には、魔闘会本選は留学生の実力を見極める絶好の機会、というわけ。」

「特に私の目指しているロンドン大学の”銃剣系”剣型の専門学科は世界中から希望者が集まるから、競争倍率が高いのよ。」

「そう言えば、今年の魔闘会本選はロンドンでしたね。」

「そうなの。私の実力を見てもらうには最高の舞台だから、勝つにしろ負けるにしろ自分の実力を出し切って訴えかけるつもりよ。」

「陽菜さんなら大丈夫ですよ。決勝戦で対戦した俺が言うんだから間違いありません。」

「諒太の言うとおり、陽菜が普通どおりに戦えれば私も大丈夫だと思っているわ。それに、私は魔闘会本選で頑張る必要はないから、他の2人の思惑はどうあれ陽菜の支援に徹するつもりよ。」

「百合子、ありがとう。」


「決勝戦の戦い方って、もしかして魔闘会本選の予行演習みたいなものでした?」

「そうよ。」

「あの試合では百合子さんはいつもの爆発的な感じがしなかったのですが、やっぱりそうでしたか。」

「じゃあ、諒太に決勝戦での私たちの勇姿を語ってもらいましょうか?」

「分かりました。」

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